実践+発信

97サイエンスカフェ札幌「見えるものを見るAI 見たいものを見る人間機械に「正しく」学習させるには〜」を開催しました

2017.10.23

才川純一朗(2017年度 本科/学生)

2017年10月1日(日)、第97回サイエンス・カフェ札幌「見えるものを見るAI 見たいものを見る人間~機械に「正しく」学習させるには〜」を、紀伊国屋書店札幌本店1Fインナーガーデンにて開催しました。今回のゲストは情報科学研究科 准教授の瀧川一学さんです。

(ゲストの瀧川さん。機械学習の研究をされています。)

今回のカフェは、対話の場の創造実習の受講生(木下、才川、玉置、長倉、中角)が中心となって企画・運営を行いました。

(いよいよカフェが始まります。司会は中角さんです。)

テーマに関する参加者への質問から、カフェは始まりました。AI(人工知能)や機械学習について皆さんが知っているか、YES/NOカードで聞いてみると、多くの方がYESを挙げています。瀧川さんが研究を始めた頃は、「機械学習」という言葉を知っている人はほとんどいなかったそう。参加者の関心の高さに、瀧川さんも驚いていました。

(今回のカフェではこのようなYES/NOカードを用いて、参加者の声を聞きました)

機械学習ってなに?

第1部は、AIを支える重要な技術、機械学習についてのお話です。

機械学習とは、大量の入出力の見本(データ)からコンピュータプログラムを自動的に作る技術です。現在では、さまざまな先端情報技術の基盤となっています。

瀧川さんは、画像認識や自動翻訳などを例にして機械学習の仕組みについて説明していきます。「機械がデータから学習する」とは、見本となるデータをもとに結果を予測することができるようになることです。

しかし機械学習にできるのは、相関を見つけることだけ。海の事故者数とアイスの売り上げの関係を例に、因果と相関の違いについても解説していただきました。

(玉置さん(右)と瀧川さんのトークでカフェは進行しました)

データの偏り(バイアス)、人間の先入観(バイアス)

機械学習には見本にするデータが必要です。第2部は、このデータの扱い方について取り上げました。

機械学習の予測は、集めたデータの偏りをそのまま反映させてしまいます。つまり「見えるものを見る」のです。聞き手の玉置さんは、試験勉強でヤマをはって臨んだ結果、その範囲が出ずに失敗する例に納得していました。データが偏っていると、予測の正確さが下がります。

一方、人間も何らかの先入観を持って情報を受け取っています。瀧川さん自身、お子さんが生まれて初めて子育てをめぐる問題に関心を持ったそうです。やはり人間は意識せずとも、見たいものを見てしまうのでしょう。

瀧川さんは、こういったAIと人間の特徴を理解して、機械学習は集合知(様々な考えが集まったもの)・セカンドオピニオン(第二の立場からの意見)として取り入れていくことが良いのではないかとお話しされていました。

(休憩中にはいろいろな質問例を表示して、質問しやすいように工夫しました)

対話コーナー

第3部は対話コーナーです。データの選び方やディープラーニングについてなど、多くの質問が寄せられました。

「AIの能力が人間を超えることはあるのでしょうか?」という質問がありました。多くの方が気になっているであろう、この質問。瀧川さんは、知識量の面ではすでに超えているのではないかと言います。しかし一方で、人間にしかできないことも多くあり、人間とAIで得手不得手が全く違うということだと答えていました。

(質問に答える瀧川さん)

(対話コーナーの進行は長倉さんです)

また、印象的だったのが「瀧川先生の考える研究のゴールは何ですか?」という質問です。

瀧川さんは現在、がん細胞に効果がある物質を予測するために使う機械学習の研究に取り組まれています。

生物学や薬学などの研究では、試行錯誤を繰り返したまたま当たったところが成功する、といったことが往々にしてあります。しかし、うまくデータを集めAIを使って予測すれば、より効率的に研究が進みます。つまり、深夜まで実験を繰り返したのに徒労に終わる、ということもなくなるかもしれません。まさかAIで今までの研究のスタイルが変わるとは思いもしなかったので驚きです。AIを使うことでいろんな人がもっと生産的になれたらいい、という瀧川さんのゴールに強い思いを感じました。

瀧川さんの機械学習の研究に共感を覚えた方は、「寄附で応援! 北大の研究」で研究の支援をしてみませんか。

(質問カードをモニターに映す取り組みも行いました)

サイエンス・カフェ札幌を終えて

最近、様々なメディアでAIの話題を目にします。また、今回のカフェに多くの方が参加されたことからも、AIに対する社会の関心の高さを感じます。

自分は今まで、AIと聞くと「人間の仕事を奪う」といった、怖いイメージを持っていました。しかし、AIにも得意なところ、苦手なところがあると知って、少し親近感が湧いたような気がします。人間とAIが、お互いをうまく補い合っていけば、より良い社会につながるのではないかと考えました。これからも、人間とAIとの関わり方について考え、注目していきたいと思います。

 
対話の場の創造実習:木下紀子、才川純一朗、玉置雄大、長倉美琴、中角直毅