2018年4月14日、円山公園で開催された「まるやま野生動物カフェ」に、CoSTEPスタッフの池田貴子(特任助教)がゲストとして登壇しました。
(ゲストの池田貴子/CoSTEP特任助教)
まるやま野生動物カフェは、身近な野生動物と人との関わり方を考えるサイエンスカフェです。円山リスの会、円山公園指定管理者(公財)札幌市公園緑化協会、NPO法人EnVision環境保全事務所の共催で企画されています。第9回の今回は「キタキツネ」がテーマ。都市に生息するキツネの生態や、キツネからヒトに感染する寄生虫「エキノコックス」について、約40名の来場者と気軽に語り合う会となりました。
(会場の円山公園パークセンター)
(左:聞き手の長谷川理さん/NPO法人EnVision )
前半は、そもそもキツネとはどういう動物なのか?という、形態や生態の話。後半は都市に棲むキツネの行動と、キツネから人に感染する寄生虫「エキノコックス」の話です。
(北海道に生息する中型哺乳類3種の頭骨と毛皮。左から、アライグマ、アカギツネ、エゾタヌキ)
(キツネの毛皮は他と比べて柔らかく、なるほど毛皮むき)
(手前はエキノコックス成虫の拡大模型)
エキノコックスは、ヒトに感染すると肝硬変のような症状を引き起こすやっかいな寄生虫です。かつて、キツネを駆除することで感染の増加を食い止めようとした時代がありましたが、効果はありませんでした。エキノコックスは、主に感染したキツネの糞からヒトに感染します。そこでキツネに駆虫薬(虫下し)を混ぜた餌を与え、キツネの糞に混入する虫卵を大きく減らすことで、ヒトに感染するリスクを下げるという方法が、北海道大学やチューリッヒ大学の長年の研究によって開発され、現在では世界の主流のエキノコックス対策となっています。
(会場からの質問や意見も多く、活発な交流が行なわれました)
エサに混ぜる駆虫薬がキツネの健康を悪化させることはありません。人とキツネの関係性を壊すことなくエキノコックス感染を予防できる最善の方法として、現在、北海道大学構内や円山動物園内でも定期的に実施されています。ですが、残念ながらこの方法は一般にはあまり知られていません。人と野生動物の距離が急速に縮まる昨今、両者のほどよい距離感について考える活動に、今後も貢献していきたいと思います。