実践+発信

新しい世界に出会うための選択

2019.3.29

私は、学部時代のほとんどを山登り(ワンダーフォーゲル部)に費やし、大学院に入ってからは岩石学の研究に没頭していました。学部入学当初は、総合大学という利を生かして、様々な学問の世界を見てみたいと思っていたものの、山のことと、岩石のことくらいしかマトモに取り組まず、気がついたら6年の月日が経過していました。幸い(?)なことに私は博士後期課程への進学が決まっていたので、少しは時間的余裕がありそうなD1の間に、どこか新しい世界に知り合いたいと漠然と考えるようになりました。

では、どうやったら新しい世界と知り合うことができるのでしょうか。CoSTEPとは科学技術コミュニケーター養成プログラムです。「科学技術コミュニケーションとは何か?」と問われると、その回答は受講生ですら人それぞれのようです。受講前の私の浅はかな考えからは、前半の科学技術については理系的な印象を、コミュニケーションについては文系的な印象を受けました。講義の内容などをみてみると、オムニバス形式で様々なテーマの講義があり、多様な世界を垣間見れそうだと確信しました。

さて、実際に受講してみると、講義も演習も内容は多岐にわたり、予想通りに面白いものもあれば、はっきり言ってその時の私には詰まらなく感じたものも少なからずありました。世の中、そんなものです。しかし、新しい世界への扉が開く瞬間、言い換えれば知的好奇心を刺激される瞬間は予期せぬ時に訪れます。私の場合それは、映像によるコミュニケーションの可能性を知り、それを実際に実践することでした。

そういう出会いさえあれば後は簡単、講義や演習のみならず、自ら関連する本を読んだり、調べ物をしたりして、新しく出会った世界のことを学びに行くことができます。私はCoSTEPに所属していた1年間で、「科学技術コミュニケーション」をキーワードとして広がる新しい世界に出会い、その中のいくつかに興味を抱くことができました。これは大変幸せなことです。

自分の中にある既存の知識だけを頼りに、「最も合理的と思われる選択」をしていただけでは新しい世界に出会える可能性は必然的に低くなってしまいます。そうしないためには、多少無駄なことが予想されたとしても、未知の分野へ、最初は耳学問でも良いから飛び込む必要があるように感じます。受講を終えた今思うのは、CoSTEPとはそのために最適な場であったということです。何故ならば、多様な世界を垣間見ることができる講義と演習の場、そしてそこで学んだことを実際に実践する場が用意されているからです。皆さんも新しい世界を覗くためにCoSTEPという選択をしてみてはいかがでしょうか。

 
谷内 元

CoSTEP 14期・本科修了

北海道大学理学院自然史科学専攻地球惑星システム科学講座 博士後期課程1年