実践+発信

オトナ学びの羅針盤(コンパス)、CoSTEP。

2013.4.1

今思い返せば、僕がCoSTEPで学ぼうと思ったキッカケは18年前に遡る。小さい頃から学習マンガで「お天気」に興味を持っていた僕は、高校三年生、17歳の時に気象予報士の資格を取得した。いろいろなご縁もあって、当時のニュースステーション(現:報道ステーション)に出演し、初めて生放送で視聴者に天気予報を伝えるという貴重な経験をした。憧れのキャスターだった久米宏さんとお話ができてウキウキで自宅に戻ったが、録画した放送を見た僕はがっかりしてしまった。

――そう、そこに映っていた僕の天気予報と解説は、まるで気象予報士試験の答えを、そのまま口述しているようなモノだったのだ。憧れの久米宏さんに一生懸命解説をしているのだが、あまり納得はいっていない様子。その時痛感したのは、知識を「身につける」ことと、それを「人に伝える」ことは、全く違うことであり、それぞれ別の視点を持たなければいけないということだった。

筑波大学では引き続き気象学を学びながら、在学中にアカペラボーカルグループ「RAGFAIR」として歌手デビュー。気象予報士と歌手という二足の草鞋を履くこととなった。

メインの活動は歌手なれど、テレビやラジオ、雑誌などで「お天気」の解説をしたり、サイエンスカフェのモデレーターを務めたりもした。高校生の時の反省を踏まえ、「伝わる」「伝える」はもちろん、どのようにすれば興味を持ってもらえ、さらにそれを生かしてもらえるのか。

気象予報士の先輩の技を参考にしながらだったが、見よう見まねが精一杯であったし、同じような悩みを持つ仲間もそんな居ないのが歯がゆくもあった。そんな中、 科学技術コミュニケーションという言葉とCoSTEPの事を知る。気象予報士・防災士としても、科学技術コミュニケーションのスキルは非常に重要だと感じていたし、今までは手探りでやってきた事が体系的に学べる、これと無いチャンスだと思い、すぐに受講を決意した。そしてサイエンスイベントにかんする演習がある選科Aを受験し、合格。

スクーリングの必修は夏の一回だったが、スケジュールが合い、北大で行われた開講式にも参加。実際、この段階でクラスメイトや先生方と顔を合わせる事ができたのは、その後の学習の進め方にとてもいい影響があったことも余談だが付け加えよう。実際学んでみての感想は、ハードスキルとソフトスキルがバランス良く学ぶことができるプログラムだということだ。

eラーニングで受講した全27コマの授業は、科学コミュニケーションに必要な知識や気づきを、それもさまざまな視点で提供してくれた。それも、この分野以外にも応用できることが多数あり、限られた時間であったが非常に示唆に富んでいたと感じた。

夏のサイエンスイベント演習は、本当に中味の濃いモノだった。出会ったばかりの仲間で、プロジェクトをわずか二泊三日で完遂させる、一見すると無理難題のようなプログラム。年齢もバックグラウンドも違うメンバーが、さまざまな壁や意見の食い違いがありながらも、一つの目標に向けて力を合わせ、サイエンスイベントを作ってゆく経験は、とてもエキサイティングだったし、実戦型の良い訓練だったと思う。そして、オプションで行われる 選科Z(と名付けさせて頂きました)つまり、その後の飲み会も楽しかったことを付け加えておこう。

もちろん、修了証をもらったからといって、これで勉強が終わったわけではない。これからも、このCoSTEPでの経験、そして繋がりは、今後の学びの羅針盤(コンパス)になってくれてゆくであろう。

奥村政佳
アカペラボーカルグループ RAGFAIR, 株式会社リバネス CFA, 気象予報士・防災士・保育士