北大の学生はもちろん、海外からも北大で授業が受けられるhokkaido summer institute。その一環で「研究者とクリエイター:森を考える(皮革)」の授業を行いました。7月1日から11日まで、7名の学生が受講しました。今年の授業は、去年森の中でも「木」に注目したことに対し、「皮革」をテーマにして動物と私たちとの関わりについて多角的な方面で見つめ、それぞれの立場で考える内容にしました。様々な研究者やクリエイターに取材をし、その話を元にディスカッションをしたり、それぞれ考えたり、手を動かしたりする時間でした。
初日には、アイスブレーキングワークとしてお互いの顔を描くブラインドコントゥアドローイングを行った後、自分の皮革ものに対する思い出を語りました。いつか持っていたキーリング、気合いを入れて買って大切に使っている手帳のカバー、子どもの時使っていたランドセルなど、様々な思い出を話あうことで、皮革が日常でどのような素材として使われてきたかを考えました。
この授業の特徴は、皮革に関わる研究・制作・仕事をしている様々な立場人々から話を聞けることでした。
まずは、北大における皮革研究を中心に、様々な研究者から話を聞きました。
人類学者、近藤 祉秋(北海道大学アイヌ・先住民研究センター)さんによる人類と皮革の関わり方について取材した映像を元に動物と人間がどのように共存してきたかの話や、動物だけでなく植物や魚の皮革を使うことについて話を聞きました。また、エゾシカと交通事故を研究している研究者、野呂 美紗子(北海道開発技術センター調査研究部)さんに取材した映像を元に、野生動物と私たちとの関わり方について考えました。特に北海道における動物との共存は、予想以上に我々の日常生活に深い関わりがあることが分かりました。続いて、北大の畜産研究者、近藤 誠司(北海道大学 総合博物館)さんのお話を聞きながら第二農場を見学しました。北大における畜産研究の流れについて詳しく知ることができました。
そして、小林 謙(北海道大学農学研究院畜産資源開発学分野)さんの講義資料や協力を受けながら、皮革工芸室の見学を行いました。10年以上皮革工芸室で技術職員として務める山川 育生さんのご案内で、実際に鞣しの作業過程や、出来上がった毛皮と皮革を体験することができました。
続いて、地元のクリエイターの話を聞きました。
長谷さんのインタビュー映像
原さんのエゾシカの皮革を触る
北海道在住で、狩猟を鞣しを一緒に行っている長谷 耕平(ezo leather works)さんの話や、十勝で皮革工房を運営している吉田 亜美(Yoshida Leather Works)さんの話、札幌でエゾシカの皮を使ったデザイン活動を行っている原ななえ(agra / deer park)さんの話を聞きました。北海道で皮革を用いた制作は、狩猟の過程から生態系のことまで考えて行う作業であることが分かりました。
そして、北海道食材探検家の佐々木 学(北海道食材探検家)さんによるエゾシカを食べることに関するの話を聞きました。肉を食することに関すること、そこに関わる人々の思いについて聞くことができました。また、実際に鹿肉を食べる機会も設けました。
最後には、韓国からのクリエイターの話を聞いて皮革のものづくりを体験しました。
デザイナーとして幅広い分野で活躍しているナム・ミヘ(趣美社)さんに、デザイナーにとって材料としての皮革について話を聞きました。皮革で制作した様々な事例を紹介してもらい、デザイナーがどのようなプロセスや考えでものづくりをしているかについても聞くことができました。
韓国で皮革のスタジオを運営しているリ・ジヨン(CONE Leather)さんには、持続可能な材料として皮革を選ぶようになった経緯や、今の活動に対する考えを聞いた上で、キーリングをつくるワークショップを行いました。
最後には、学生一人一人が自分にとっての皮革とは何かについてプレゼンをして、授業を終えました。
今回の授業は、皮革を中心にそこに関わっている研究や、複雑な問題を掘り下げることで、多様な視点を理解することを目指していました。授業の最初、学生たちが皮革に対して持っているイメージは「高い」が多かったですが、最後の授業で話し合ったことは「持続可能」、「環境」、「丈夫」、「時間と共に変化する」、「命」などと、イメージが豊かになりました。この授業を経験してからは、皮革の商品を見る目が少し変わるのではないでしょうか。
授業のご協力いただいた方々、参加してくれた学生、ありがとうございました。