CoSTEP本科・映像デザイン実習の米田 夏輝さん(北大経済学部3年)が、地理情報システムやオープンデータのプロフェッショナルである古川 泰人(やすと)さん(株式会社MIERUNE / 酪農学園大学 / Code for Japan)に取材して、動画コンテンツ「DATA VISUALIZATION =データの可視化」にまとめました。
古川 泰人さん(左)と米田 夏輝さん(右)
科学的な裏付けのある数量データや行政がまとめて公開している数値データは、現代の情報社会には欠かせません。しかし、情報に価値を与えるためには、データのビジュアライゼーション、つまり可視化とデザインという、表現に関わる要素が非常に重要になってきています。
親しみやすいデザインや情報の整理を工夫して可視化することで、課題や論点が明確になり多くの人たちが問題に参加しやすくなります。そうして初めて新しいアイデアや対話が生まれるのです。
米田さんは2019年10月26日に実施された古川さんのデータビジュアライズ演習を受講して、自分でも北海道の鉄道路線図の可視化に取り組み、以下の動画コンテンツにまとめました。ぜひ、御覧ください。
DATA VISUALIZATION =データの可視化(5:47)
出演:古川 泰人(株式会社MIERUNE / 酪農学園大学 / Code for Japan)
ディレクター・編集:米田 夏輝(北海道大学CoSTEP15期映像デザイン実習/経済学部3年)
撮影:早岡 英介(CoSTEP特任准教授) 制作:北海道大学CoSTEP
■制作を終えて
・米田 夏輝(本科・映像デザイン実習・北大経済学部3年)
古川さんに取材をさせて頂こうと考えたきっかけは2019年10月26日に開催されたCoSTEPの「データビジュアライゼーション演習」の受講でした。本講義では地理情報システムの基本や、地理情報を可視化するこのできるQGISというソフトウェアの使い方を学びました。
元はただの数値情報の羅列であった地理に関するデータをQGISを用いることで、データの中の位置情報が瞬く間に可視化され、地図として可視化することができるのです。このことが自分にとっては大きな衝撃でした。技術的に面白いという感想だけではなく、可視化の持つ力や科学技術コミュニケーションに与える影響など多くのことを学ぶことができました。もともとはクリエイティブに関する取材を行おうと考えていましたが、今回のデータビジュアライゼーションも広く捉えればクリエイティブであると感じたので古川さんへの取材を敢行しました。
古川さんのお話の中でも取り上げられた「可視化は自分ごとになる」というお話が非常に興味深かったです。数値データとして、ただ提示されたとしてもなかなか大衆には刺さりません。データを可視化して届けることで、視覚的にデータの持つメッセージを比較的容易に理解してもらう可能性が上昇します。例として北海道森町の熊の出没情報の可視化が取り上げられました。
・ヒグマ出没マップ ひぐまっぷ
https://www.town.hokkaido-mori.lg.jp/docs/2016070600017/
町民の方から熊の出現情報が報告され、それらの情報が地図上にプロットされて示される。情報はデータベースとして蓄積されるので町民の方が情報に触れて、自分の家に近い、知り合いの家に近いといったように、「自分ごと」として考えることができるようになると、当事者意識が生まれ、人々が対話するきっかけを生み出せるといった影響を与えることができると感じました。
今回の動画の後半部分でも取り上げていますが、所属する経済学部のゼミ活動で早速データビジュアライゼーションを実践してみました。たまたまゼミの課題でJR北海道について調べる機会があり、課題の条件として空間分析を行うことが求められていたので、QGISを使って北海道における路線図や駅の変遷についてを可視化してみることにしました。使用したオープンデータは国土交通省が公開している国土数値情報です。
・国土数値情報 ダウンロードサービス
http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
ここでは鉄道をはじめとする「交通」に関するデータや、「国土」、「地域」など行政が持っている情報がオープンデータとして公開されています。今回は交通の「鉄道時系列」データを用いて、講義で学んだQGISのスキルを思い出しつつ、なんとか自分の思い描く状態に可視化することができました。以下が実際にQGISを用いて作成した北海道の路線図の可視化です。
青い線が現存の路線、黒い線がすでに廃止になった路線を示しています。北海道では半分以上の路線がすでに廃止になってしまっていることがわかります。図から与えられる衝撃的な北海道の現状。どうしてこのようになってしまったのかを自然に考えてしまいます。
調べると北海道の地理的特性、国鉄時代、分割民営化後のJR北海道の経営状況の厳しさなど様々なことを知ることができます。実際にゼミで画像を提示すると多くのゼミ生が北海道における鉄道に関して興味を示してくれました。可視化って面白いなどといった声も聞くことができたので良かったです。
経済学は数字をたくさん扱う学問です。データビジュアライゼーションとは非常に親和性が高いので、まずは直近で今後のゼミ活動でも可視化の技術を生かしていきたいです。
取材を通して「可視化」の持つ力に触れることができました。今後の自分の学業や生活の中で活かすことはもちろん、デザインやソフトウェアなどの可視化に関わるスキルも併せて向上させ、可視化について深く考えて活用していこうと思います。古川さん、取材に応じて頂き本当にありがとうございました。
ICC(インター・クロス・クリエイティブセンター)に入る映像技術会社ニューピークフィルムのオフィスにて
自然番組の映像素材の整理をされていました
当初は映像を学びたいという想いで受講を決意したCoSTEP。映像をはじめとするクリエイティブに関するスキルの学びだけではなく、科学技術コミュニケーションの学びもたくさん得ることができました。
特に1番の学びは可視化をはじめとする「伝え方」に関することです。どのように表現すれば、どのような情報を入れれば相手に伝わりやすくできるのか、といったようなことをこの1年間での映像編集やデザインをする際に痛感させられました。
自分は情報量を盛り込みすぎる癖がありました。 どのような人が対象なのかによって多少の変化はあると思いますが、情報量は多すぎても少なすぎてもいけないと感じます。適切な中間点を見極めることが重要であると感じさせられました。CoSTEPでの活動を通じて自分の中の「伝え方」に対する考え方に少しでも影響を与えることができて良かったです。
たっぷりと科学技術コミュニケーションに魅了された2019年度。
この学びを土台にして次のステージへと進みたいと思います。