実践+発信

ラジオ156:2009814

2009.8.14

 

北海道から発信!!カムイロケット

研究室に行ってみよう

北海道大学大学院工学研究科・機械宇宙工学専攻・宇宙システム工学講座・ 永田晴紀(ながたはるのり)先生

コーステップインフォメーション

カムイロケットの打ち上げ実験見学について

◆研究室に行ってみよう〜北海道から発信!!カムイロケット〜

カムイロケットで有名な北海道大学大学院 ・工学研究科機械宇宙工学専攻、永田晴紀(はるのり)先生の研究室を訪ねました。永田先生はこれで2回目の「科学たんけん隊コーステップ」ご出演であり、2006年5月12日のサイエンスカフェ「北海道のCAMUIロケット」にも出演していただいたことがあります。

「カムイ(CAMUI)ロケット」とは従来のロケットに比べ安全で、さまざまな宇宙実験に使いやすい小型で効率の良いロケット。今回は今年3月の打ち上げ実験の様子など、その後の永田先生の研究の進展について伺うことができました。

インタビュアーはマッチこと近藤奨(つとむ)さんです。

CoSTEP近藤さんと、北海道大学大学院工学研究科 永田先生

Q.カムイロケットと従来のロケットではどこが違うのですか。

A.従来のロケットの多くが液体燃料を使用した「液体ロケット」または火薬を用いた「固体ロケット」でしたが、カムイロケットは、固体燃料(火薬ではなく、プラスチック等)と液体酸化剤の組合せを用いたハイブリッドエンジンを搭載しているという点です。従来の液体、固体燃料にくらべ燃料庫などの施設維持費が安くなり、何よりもロケット打ち上げ時の安全性が向上します。

Q. 今年3月にカムイロケットの打ち上げ実験が行われましたが、その時に得られた成果はいかがでしたか。

A.カムイロケットによるエジェクター効果(燃料噴射時に噴射口からガスを排出させるのと同時に大量の空気を取り込み、空気を2次燃焼させることで推力の向上を図る。)の確認や、亜音速の流れ(マッハ1 以下の速さでロケットが動く時に作り出される空気の流れ)の解析を行うことができました。

カムイロケットのペーパークラフトを手にする永田先生

Q. JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究を始められたそうですが、それはどのような内容ですか?

A.カムイロケットを利用すれば、地上で得るのが難しい音速に近い領域に関する流体などのデータを、効率的に得ることができます。カムイロケットが小規模な実験や小型の衛星の打ち上げのための有意義なツールとして使えるかどうか、これからJAXAと一緒に研究していきます。

Q.ますます注目されているカムイロケットですが、じつは北海道の企業や自治体の協力を得ながら運営されているそうですね。

A.そうなんです。とくに、赤平市にある企業と共同でロケットの製作をおこない,大樹町ではロケットの打ち上げ場所を提供してもらう、というように2つの町がカムイロケットにとても深くかかわっています。どちらの町でもカムイロケットをわが町の誇りと思っていただいているようでうれしいです。

北海道内だけで単独でロケットを製作し、打ち上げられるというのは、すごいことです。北海道は私も含め、宇宙開発に強い想いを持っているという人がたくさんいらっしゃることを知ってほしいです。

カムイロケットのペーパークラフトを使って説明していただく

Q.カムイロケットの開発を通じて、私たちに伝えたいことは?

A.どんな人でも社会の中でさまざまな役割を果たしていますが、社会づくりに積極的に参加することで、私たちは生きがいを感じるのではないでしょうか。今年、今年、アポロ11号で人類が月面に初めて着地してから40周年に当たります。宇宙開発(ロケット打ち上げ)に対するわくわくするような感情を子供たちに与えたいです。

 

インタビューに同席して、永田先生はカムイロケットの開発を通じて、人とのつながりをとても大事にしていることが言葉の節々から伝わってきて,とても印象的でした。大樹町の「道の駅」にカムイロケットが展示されたということも、カムイロケットの可能性に地域の人々が期待している何よりの証拠です。

「社会と宇宙開発のコミュニティーを日本全体に作りたい。赤平市,大樹町から日本全体に宇宙開発を発信していく。」という、永田先生の強い意志を感じることができました。これからのカムイロケットの動向に注目したいと思います。

カムイロケットの打ち上げ予定に関しては,NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)のウェブページ(http://www.hastic.jp/)から見ることができます.打ち上げを間近で見たいという方は定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか?

永田先生、お忙しいところありがとうございました!

(文責:三原義広)