2020年4月。いつもなら新学期が始まるはずのこの頃、私はほとんどの時間を家で過ごしていました。大学の授業開始は延期され、あらゆる課外活動は再開の目処が立ちません。閉塞感と先が見えない不安から、私の気持ちは暗くなっていました。そんなとき、CoSTEPが2020年度の受講生を募集していることを知ったのです。
「この一年、何もできなかったなんて言いたくない。」
焦りにも似た思いに突き動かされて、さらに当時感じていたリスクコミュニケーションのあり方への疑問にも背中を押されて、CoSTEPの受講を決めました。
思えばあの時が、科学技術コミュニケーションをめぐる旅の始まりでした。気づけば私は「対話の場創造実習」(通称:対話班)の一員になっていたのです。
ときは進んで10月。対話班は未来の海に向き合っていました。海の環境問題を扱ったサイエンス・カフェを開催するためです。今回は、受講生が企画するサイエンス・カフェとしては初めてとなるYouTube Liveでの生配信形式でした。何をどう見せ、どう伝えるか。オンラインで双方向的な「対話の場」をどのように創るのか。初めてのイベントの企画はわからないことだらけでした。そんな中でも対話班5人の特性を活かし、先生方や他の実習生の力も借りながらなんとかイベントをつくりあげて、私たちは海を越えました。
年が明けて2月。私たちは、今度は山の状況と向き合いながらごはんを作っていました。山で食べるごはん(通称:ヤマメシ)を入り口にSDGsの理念について考えるイベントを開催するためです。このときは、ヤマメシ×SDGsという新奇で異質な組み合わせにどうやって説得力をもたせるのかという根本的な問題に、当日まで頭を悩ませました。思い出されるのはメンバーどうしの対話の場面です。企画を練るため連日オンラインミーティングを重ね、考えて、考えて、考え抜きました。全く新しいイベントをつくることの難しさを身をもって知った経験でした。
こうして対話班一行は、山を越えました。
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの暮らしを一変させました。しかし、CoSTEPではこんな状況すらもチャンスに変えることができます。私の場合は、対話班の仲間と一緒にオンラインの対話の場を創る機会を得ました。でもきっと、こんなのは序の口。科学技術コミュニケーションにはもっとポテンシャルがあると思うのです。CoSTEPには、ああでもないこうでもないと一緒になって頭を捻ってくれる仲間と、それを全力でサポートしてくれる先生方がいます。新しいことに挑戦するにはもってこいです。
こんな時代にこそ、CoSTEPで新しい科学技術コミュニケーションの形をさぐってみませんか?
折登いずみ(本科:対話の場創造実習)
北海道大学文学部行動科学講座3年