実践+発信

選科演習B

2010.6.6

「自分が専門とする分野のことだから、わかりやすく書ける。そう思うのは間違いです。」藤田貢崇・准教授は、添削して真っ赤になった原稿を受講生たちに返却したあと、こう注意しました。

14人の受講生たちも、書き込まれたコメントを見ながら、指摘されてみれば確かにそうだなあという表情で聞き入っています。

6月4日金曜日の夕方、北海道大学は大学祭の真っ最中。

同じころ、祭の会場から50メートルほど離れた、ポプラ並木近くの教室では、CoSTEPの授業「選科演習B」が行われていました。祭の喧噪も、ここまでは届きません。でも熱気は、祭のただ中にいるかのようでした。

CoSTEPの受講生たちはこの授業で、サイエンス・ライティングを学びます。

前回の授業で、「プレスリリースをもとに実際に新聞記事を書いてみる」という課題を出された受講生たちは、自分なりの新聞記事を、きょうの授業に先だって指導教員に提出していました。返却されたのは、それを添削したものです。

「新聞記事の場合には、まずリード文があって、その次に“ニュース”つまり“新たにわかったこと”についての記述がきます。」藤田准教授は、文章を書くにあたっては「構成」を考えなければいけないことを、新聞記事を引き合いに出しながら説明します。

さらに、受講生が書いた“記事”一つひとつについて、細かにコメントしていきます。「まとめの部分が、弱い印象を受けます。これからの研究動向についても触れたらどうでしょう。」「“四肢”はふだん使わない言葉です。“手足”で十分です。」

受講生たちは、自分の文章へのコメントはもちろん、他の受講生の文章についてのコメントにも、なるほどと頷いています。

藤田准教授は、身近なたとえ話を持ち出しながら説明をするので、笑いがわき起こるなど和やかな雰囲気で授業が進みました。

最後に、8日後までにメールで提出する課題文が出され、90分間の授業は終わりです。

この授業の受講生たちは、まもなく、本の原稿を書き始めます。来年春に、技術評論社から出版予定の本です。

実際に世に出る原稿を書きながら、サイエンス・ライティングを学んでいく。これは、CoSTEPならではの学びのスタイルです。