実践+発信

対話の場の創造実習は、明るい未来を感じさせてくれる体験になる

2022.3.22

わたしは2019年までアフリカで働いていました。アフリカでの任務を終え、日本に帰国してまもなく、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。旅行好き、だけど出不精で食べて寝るのが大好きなわたしは、アフリカに住んでいたこともあり、日本の衣食住やインターネット通販が充実した環境に感動し、2020年はひたすら家でゴロゴロしてネットで嗜好品を購入して楽しむという生活を満喫していました。しかしながら、プライベートな時間とはいえ、このように怠惰に過ごしていていいのだろうかという思いもありました。そしてこんなに旅行に行かない日々はもう来ないかもしれないとも思い、週末を旅行以外に有効活用できる何かをしようと考えました。

アフリカでは日本の技術を現地に普及する仕事に携わっていたのですが、言語や文化による違いや政治・社会的な背景等もあり、新技術の導入は簡単なことではなく、色々と複雑な思いを抱えながらの業務でした。科学技術コミュニケーションについて学ぶことで、そのもやもやとした経験を昇華させ、次の歩みを見出すヒントになるのではと思い、CoSTEPを受講することに決めました。

(最初の実習の様子。まだみんなの表情が硬い…)

わたしが受講した本科の対話の場の創造実習は、メンバーの8割が北海道大学の学生でした。本科は、毎週土曜午後の講義に加え、土曜午前の実習と平日の演習もあり、決してラクなコースではありません。また、イベントを作り上げるには実習の時間だけでは十分とは言えず、実習生による自主的な打合せや勉強の時間を設けることも必要になります。もしこれを読んでいるあなたが、多くの時間を継続的に捻出することが難しく、また、社会人を中心とした全国的なネットワークを得ることを大きな理由の一つとしてCoSTEPを受講するというのであれば、選科を検討してみるのもいいかもしれません。

(CoSTEPでの1年間の学びを発表する成果発表会。サイエンスカフェでの学びを伝えるパートを担当しました)

しかし、この実習の魅力は十分にあります。まず、1年間かけて二つのイベントを毎週の実習生とのディスカッションと教員の丁寧な指導を経て、じっくりと作り上げていくことができます。科学技術コミュニケーションを対話型イベント形式で行うための実際的な知識や技術面でのスキルアップはもちろん、自分も、まわりも、相互に影響し合うことで、様々な驚きや発見があり、色々な変化を感じることができます。なによりも、未来の社会を支える大学生・大学院生たちと科学技術と社会の在り方について一緒に考えていけるということは、頭が凝り固まってきたもうフレッシュとは言い難い世代の者にとってはとても明るい前向きな体験で、大きなエネルギーと希望をもらいました。

(成果発表会前の最後の自主的打合せにて。みんなやり切った感のあるいい笑顔!)

また、コロナ禍のためにCoSTEPの活動が原則オンライン化したことは、移動時間をなくし、打合せ等で実習生が集まる際の場所や時間の自由度を高めてくれ、非常にありがたかったです。

多様な人々とつながり、科学技術やそれを利用する社会について前向きに考えてみたい方は、今こそ本科の受講に挑戦してみることをお勧めします。

水上 千春(2021年度本科:対話の場の創造実習)
北海道大学国際部 特定専門職員