CoSTEPは新たな取り組みとして「科学技術コミュニケーション人材協働プロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは、CoSTEP修了生を他組織に派遣することで、派遣者は実践的な学びと実務経験を獲得し、派遣先は科学技術コミュニケーション活動の円滑化・高度化を図るという試みです。派遣者はCoSTEPの支援をうけつつ、ボランティアではなく短期支援員として雇用され、業務として活動します。原資にはCoSTEPクリエイト基金でのご支援を活用いたします。
プロジェクトの概要
この第1弾の試行として、先端生命科学研究院 研究戦略室とCoSTEPで「広報人材協働プロジェクト」を7月1日から正式に開始しました。先端生命科学研究院では、8月のオープンキャンパスで来訪した高校生の研究室取材をサポートし、その映像を撮影、編集し公開することを計画していました。しかし実施のための人員が十分ではないことから、CoSTEPに協力を打診。両者は協議をかさね、「広報人材協働プロジェクト」として実施することになりました。
今回派遣されるのは、17期選科A修了生の寺田一貴さん(生命科学院博士課程)です。寺田さんは生命科学院で研究をしており専門性が高い点と、選科Aでの映像制作やチームマネジメントの実績が買われての派遣となりました。
オープンキャンパスは8月8日に実施される予定です。活動の報告は後日、CoSTEPウェブサイトで公開予定です。
プロジェクトのしくみ
このプロジェクトは、CoSTEPと派遣先、派遣者だけで成り立っているわけではありません。CoSTEPクリエイト基金にご支援を受け、新たな科学技術コミュニケーションのチャンネルを作り出すしかけでもあります。まず、CoSTEPと派遣先組織は双方のメリットを確認します。その上で、派遣者と派遣先のマッチングにはCoSTEP修了生も多く登録している科学技術コミュニケーターのデータベースサイト「SciBaco.net」も用います。派遣に際しては、CoSTEPクリエイト基金からのご支援を用いて短期支援員として雇用し、活動はCoSTEPウェブサイトで報告することで、より具体的にご支援とCoSTEPの活動をつなげていきます。【科学技術コミュニケーターを目指す人を応援したいという方は、ぜひこちらをご覧ください】
今回の先端生命科学研究院研究戦略室とのプロジェクトでは「広報人材」としていますが、今後は連携内容によって、「リスクコミュニケーション人材」「ELSIコンサルテーション人材」といったように、適宜名称をつけて活動と専門性を明確にしていく予定です。
さらなるCoSTEPの教育・実践の発展へむけて
CoSTEPは2005年に科学技術コミュニケーター養成プログラムを開設。その後、2008年には大学院授業を3単位、2010年には学部授業を4単位開講し、大学・大学院段階における科学技術コミュニケーション教育を開始しました。さらに、2011年には本科・選科修了生を対象とした、研修科を設置。これはCoSTEPの支援を受けつつ、自らの活動や研究の場に軸足をおいて自主的に実施する、より実践的なプログラムです。
このように、CoSTEPはまず基礎領域へ、次に実践領域へとプログラムを徐々に拡張してきました。今回の科学技術コミュニケーション人材協働プロジェクトは、さらにこれを進めるものです。
科学技術コミュニケーター養成プログラムは、講義・演習・実習を組み合わせて知識からスキルまでを幅広く、1年で習得する内容となっています。しかし、まず非常に幅広い科学技術コミュニケーション分野をカバーすることを重視しているため、基礎的な内容にとどまるという課題があります。また、自由な場での学習は非常に有意義であるものの、実際の仕事の現場はより複雑で制約がある環境化での活動を要求されます。そして、「科学技術コミュニケーター」に該当する職の採用では、実務経験があることが求められることが多いため、教育内容の現状と求職にギャップがあります。
一方、学内組織においては、広報がより重要視され業務も増えており、科学技術コミュニケーション活動に対する認知も一般的になったことでニーズが顕在化している側面もあります。
「科学技術コミュニケーション人材協働プロジェクト」はこれらの課題とニーズに対応するためであり、CoSTEPのプログラムのさらなる充実と、学内外組織との連携強化の一歩となるものです。プロジェクトは今回は試行を踏まえて改善をしていく予定です。