実践+発信

地域における科学技術イベント戦略と文脈 127 永井智哉さんのレポート

2011.12.16

 今回の講義では、永井智也さんに、国立天文台で行われている人材育成プロジェクトや科学フェスティバルなど、科学を通じた地域活性化についてお話ししていただきました。永井さんは、国立天文台の研究員として科学プロデューサ・科学映像クリエータの人材育成に取り組み、筑波大学に移られた今も、東京国際科学フェスティバル総合プロデューサとしても活躍されています。

科学コミュニケーションを仕事にしていける人材育成を

 国立天文台のプロジェクトである「科学文化形成ユニット」では、天文台がある三鷹市(東京都)の地域再生につながる事業を行いながら科学を素材とした事業を起こすなど「食べていける」科学プロデューサ人材の育成を行っています。プロジェクトを修了した人は、科学映像のクリエータになったり、科学を素材にした新しい事業を起こしたりとさまざまなフィールドで活躍しています。

 科学フェスティバルで地域活性を目指す

2009年から毎年開催されている東京国際科学フェスティバル。永井さんはその総合プロデューサです。東京国際科学フェスティバルとは、大人も子どもも科学を楽しみ技術に親しめるお祭りとして、三鷹市を中心として都内全域で行われるイベントです。このフェスティバルでは、市民がイベントとを訪れるだけではなく、企画を実施する側としても参加することができます。科学文化形成ユニットで育成した人材も積極的に活動しました。第1回、第2回と東京国際科学フェスティバルを開催してきた結果、科学に興味を持っていたり、イベントを開くことに関心がある市民がたくさんいるということがわかりました。しかし、科学に興味の薄い層に対してのアプローチはまだ課題として残りました。

第3回の今年は今後の継続的な開催を見据えて、さらに運営の基盤を固めるための仕組みづくりを行いました。資金調達や協力者を募ったりするための態勢を整えたり、企画を自分で用意して参加する以外にも用意された会場でスタッフとして参加できるといった新たな参加の仕方ができるようになりました。今回の企画の一つ、「みたか太陽系ウォーク」では、三鷹駅前の商店街を中心とし、三鷹のまちを太陽系に見立てたスタンプラリーを行い、たくさんの人が参加しました。これはまちづくりと科学が融合した市民参加の新しい試みです。

 科学フェスティバルは、科学に興味があり地域で何か活動したいと思っている市民の交流の場となり、地域の活性化にもつながりました。科学に興味の薄い市民にとっても、科学の「お祭り」が参加のハードルが低くなり、科学を楽しみ技術に親しむチャンスになりました。今後はこのような活動が、都内や全国に拡大し、地域で主体的に活動する市民が増えていってくれればいいと思います。

科学の研究成果を社会で活用するための「代理店」的役割

 国立天文台の研究成果を社会で効果的に活用していくために、合同会社「科学成果普及機構」を設立しました。合同会社は個人や企業で簡便に起業でき、コンテンツ制作・コンサルティング業に向いた形態の組織です。現在、科学成果普及機構は国立天文台の研究成果を公開する一つの代理店のような位置づけで、科学映像の加工・提供や利用に関する相談を受けたり、グッズ製作や天文イベントの企画などによる研究成果活用・普及事業を行ったり、科学や研究成果を普及できる人材を養成したりと様々な事業を展開しています。

 今までの活動により、科学文化を伝えていきたいと思っている新たな人材を発掘できました。また、そのような活動が地域活性化にも貢献でき、研究成果を発表できる場としても機能しました。しかし、やはりそのような人材を育成できても、その人たちがビジネスを立ち上げることは困難なのが現状です。

 今回永井さんにお話しいただいた中には、とても面白い科学技術コミュニケーションのアイデアがたくさん散りばめられていました。科学技術コミュニケーションを仕事にすることは、いばらの道を進むように大変なことだと思いますが、そのような人たちが一人でも多く活躍してほしいと思いました。(平等清夏 農学部生物機能化学科 学部4年)