JJSCでは外部のご意見を頂き、編集方針等を改善していくため、アドバイザー制度を設けています。第33号に掲載の論考についてアドバイザーから、コメントをいただきました。公開の許可を頂いたコメントについて公開いたします。
一方井祐子 金沢大学人間社会研究域地域創造学系 准教授
掲載原稿の内容について
33号には報告1本、ノート3本、小特集について4本の寄稿文とパネルディスカッションが掲載され、テーマも多岐に渡っていた。
見上・公一によるノートでは、分子ロボティクス研究者同士のオンライン座談会の内容が紹介されている。研究者同士の対話が、彼らの専門分野の「外」に向けて対話するときの内容とは必ずしも一致しない点について指摘があり、そのために実施記録を公開資料として残す重要性が強調されている。浅野・種村によるノートは、福島県の高校で行われた「環境カフェふくしま」プロジェクトに関する詳細な実施経緯がまとめられています。このプロジェクトは長期にわたる取り組みであり、同様の取り組みを検討する際に役立つ情報が提供されている。雁野によるノートでは、天文教育の普及に関する論文の相互参照の実態が報告されている。雑誌間での相互参照が充分に行われていないことが明らかになり、科学技術コミュニケーションの実践・研究をどのように記録・共有するかについての課題が提起されている。
小特集では、2023年のCoSTEPの修了記念シンポジウムの概要が報告されている。北海道大学、大阪大学、国立科学博物館、合同会社科学コミュニケーション研究所、および各講演者が行った科学コミュニケーションに関する活動について、具体的に知ることができた。個人が複数の機関の実践に関与するケースはあまり多くないと思われるため、こういった情報の共有は貴重である。将来科学コミュニケーションを学ぼうとする人々にも有用な情報になると思う。パネルディスカッションにおいても、講演者たちのアプローチは異なる部分もありつつも、方向性は共通していることが理解できた。