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2024年度北海道大学CoSTEP開講式特別講演「安彦良和、歴史マンガを語る。」開講式を開催しました

2024.6.4

キャンパス内の緑が一気に芽吹き、晴れ晴れとした5月11日(土)。2024年度のCoSTEPが始まりました。開講に際し、漫画家であり、アニメーター、映画監督としてもご活躍されている安彦良和さんをお招きし、開講式特別講演「安彦良和、歴史マンガを語る。」を開催しました。多くの皆さんに関心を寄せていただき、一般参加者には抽選を行いました。

当日は、札幌キャンパスフロンティア棟(鈴木章ホール)に受講生を含む約180名が来場し、安彦さんの漫画家としての想像力の生かし方、そして漫画を通して伝えるメッセージについてお話をうかがいました。

CoSTEPで安彦良和さんの世界に迫る意味

歴史漫画の巨匠、安彦良和さんをお招きして始まった2024年の開講式。北海道遠軽町出身の安彦良和さんは、機動戦士ガンダムのアニメーターなどを経て、漫画家として数多くの作品を手掛けられてきました。安彦さんは、神話で伝えられてきた古代から私たちの現在の社会の礎になって近現代まで幅広い歴史をドラマチックに漫画で描いてこられました。

開会に先立ち、奥本素子CoSTEP部門長が、開会の挨拶とCoSTEPの説明を行いました。その際、本開講式のチラシのデザインについて触れられました。本デザインは安彦さんの漫画のキャラクターの「目」を組み合わせて、安彦さんの名前がタイポグラフィとして表現されています。キャラクターの「目」をデザインの中心に据えた意図として、歴史をまなざすこと、歴史を見つめる作家・安彦さんの「目」(まなざし)というコンセプトが紹介されました。

CoSTEPの新部門長、奥本素子さんの挨拶では、好評だったチラシについても触れてられました

続いて、CoSTEPでなぜ安彦さんをお呼びすることになったのか、歴史マンガを語るとは?今回の趣旨について、CoSTEPスタッフの福浦友香が説明しました。

福浦さんのご家族が遠軽町ご出身、安彦さんとの縁を語ります

CoSTEPは科学技術コミュニケーションの機関ですが、CoSTEPが取り扱う科学技術と歴史には一見共通点は見当たりません。しかし科学技術も、歴史も、単なるデータではありません。科学技術を利用し、影響を受ける人々、歴史の出来事に巻き込まれ、奔走する人々、どちらの中にも実はドラマが存在します。断片的な資料の先のドラマに対し想像力を働かせていくことは、科学技術コミュニケーターにとっても必要な資質の一つです。歴史漫画家である安彦さんは、断片的資料を通して歴史のどの部分ににまなざしをむけ、どのように想像力を生かしているのでしょうか。受講生の科学技術コミュニケーションの視野を広げるきっかけになることを目指して、CoSTEPは安彦さんをお招きしました。

歴史漫画から現代を問う

本講演を打診された際、安彦さんは「科学技術コミュニケーションとは一体どういうものだろう。自分は科学技術とは縁遠く、話せるだろうか?」と思ったそうです。ただ歴史漫画というテーマにおける想像力という本講演のテーマを知って、快く引き受けていただきました。

実は北大を訪れるのは、修学旅行以来62年ぶりとのこと。講演では、北海道大学の前身である札幌農学校も登場する『王道の狗』を中心に、故郷遠軽のお話も交えながら、歴史マンガについて語られました。

緑の多い北大キャンパスを散歩してこられたと語る安彦さん

後半では、近現代史を描く理由として、先の大戦に日本が歩みを進めてしまったそのきっかけを探る、安彦さんならではの想いが語られました。そして私たちが日本と呼んでいるこの国、この集団がどのように生まれ、どのように形成されていったのか、古代にまで遡り今を考える安彦作品の根底のテーマについて触れられました。

質疑応答では、受講生から「ノンフィクションに自分の想像力を働かせる作業はどうすればいいのか?」と質問があがりました。安彦さんは「その時代にあなたが生きていたら、どうしますか?」と逆に問いかけます。現在を知っている私たちとして歴史を見るのではなく、歴史の中に身を置いてみると、その時代の人々の葛藤、状況が実感を伴い立ち上がってくるそうです。そして史料、資料が少ない古代の歴史に想いを馳せる際には、古代より悠久の時間をまとっている自然風景を眺め、その場に身を置くそうです。

特別講演の最後には、CoSTEPが所属する大学院推進機構、機構長である山本文彦先生より閉会の挨拶がありました。歴史研究者でもある山本先生は、歴史漫画家も歴史研究者も、アウトプットは違っても、歴史を探る作業自体に違いはないのではないかと語られます。山本先生自身も、歴史を辿る際には、その場に身を置き、古の人々が聞いたであろう鐘の音をともに聞くという体験を通して、歴史に身を置くそうです。

歴史研究者の視点も交えて閉会の挨拶を述べる山本文彦先生

史実の先を想像し、創造する、安彦さんの歴史漫画家としての視点は、普段はじっくりと考える機会が少なく、また講義や演習などでは触れられない、コミュニケーションの大きな視点の話でした。基本的だけど、広く、深いその視点を学べたことは、受講生にとっても重要な一歩になったと思われます。本講演の模様は、後日、オンライン配信を行う予定です。楽しみにお待ちください。

20期の受講生と共に
CoSTEP ガイダンス

CoSTEPの1年間、どのように学び、どのように支えていくのか、奥本先生よりガイダンスがあり、その後は楽しい懇親会がありました。

CoSTEPの長い学びが始まります
安彦さんも参加してくれました
モジュール1 講義 & オープニングワークショップ

次の日は、奥本先生によるモジュール1-1の講義「科学技術コミュニケーションの入り口に立つ前に」ががありました。

また、その後宮本道人先生による科学技術コミュニケーションを「パターンランゲージ」で考えるワークショップが開催されました。

このワークショップの机の配置も、実は知恵がいかされているかも?

調査で収集された熟達者たちの科学技術コミュニケーションの「知恵」を言葉の形で可視化していきます。

熟達者たちの知恵を読み、そこからパターンを抽出します
みんなで積極的に考えていきます
やりっぱなしにしないための知恵とは?などたくさんのアイデアがまとまりました

2024年度、新たな挑戦を始めるCoSTEPの活動、ぜひお楽しみにしてください!