8月1日(水),CoSTEP本科のグラフィックデザイン実習生が,2012 サイエンスパーク(北海道・北海道立総合研究機構主催)に参加し,理科実験教室を開きました。未来を担う子どもたちに,科学技術を身近に体験・理解を深めてもらおうと企画されたイベントです。会場となった札幌駅前地下歩行空間は,研究機関や民間企業による様々な企画や展示が並び,夏休み中の子供たちで賑わいました。
私たちの企画タイトルは「ゼリー七変化〜酸とアルカリのふしぎ〜」。色が変わる不思議なゼリーを使ってアート作品を仕上げるのがねらいです。ゼリーに仕込んだ秘密の種は紫キャベツと食塩。紫キャベツの色素(アントシアニン)が酸・アルカリによって変化する性質と,食塩水の電気分解を利用したものです。
会場には,小学校3年生から6年生まで30名を超える子どもたちが集まりました。はじめに,紫キャベツから取り出した色素が,身近にあるレモン水や重曹水などの液体を混ぜることによって,どのように変化するか,実際に確かめてもらいました。すると,レモン水のように酸の性質をもった液体を混ぜると赤色に,重曹水のようにアルカリの性質をもった液体を混ぜると緑色〜黄色に変化します。大人にとっては単純で当たり前の変化かもしれませんが,透明のコップに入った液体の色が変化した瞬間,子どもたちからは「わーすごい!」と歓声が上がりました。
そしていよいよ,この紫キャベツの色素と,食塩を溶かしておいた寒天ゼリーを使った実験のスタートです。乾電池の+極・−極それぞれに,シャープペンシルの芯を接続し,その芯をゼリーに差し込みます。すると,電極となった芯のまわりの色がじわじわと変化してゆきます。電気を流すことにより,ゼリーに含まれる食塩(塩化ナトリウム)が化学反応(電気分解)をおこし,+極側に少量の塩酸が,−極側に少量の水酸化ナトリウムが発生,それぞれの芯の周りの色が酸とアルカリの性質によって変化するのです。
5つのグループに分かれて作業してもらったのですが,すぐに色の変化が起こったり,回路の組み立てに時間ががかかったせいで変化に時間がかかったり,各グループの進行は様々です。しかし電気を流しながら,じっと観察を続ける子どもたちの様子は真剣そのものでした。
もちろん,なぜ色が変わるのか? 説明も欠かせません。酸・アルカリの性質や電気分解について,大学院生の“おねえさん”長田詩織さんと“おにいさん”古川雄大さんがオリジナルのイラストを使って説明しました。かなり難しい内容にも踏み込みましたが,未知の世界があることを知ることだって「サイエンス」の入口となるはず!と二人とも熱がこもった解説です。
つづいて,ゼリーの色の変化を利用した「アート作品づくり」に挑戦してもらいました。赤・緑の縞模様をつけたり,ゼリーをナイフで成形したり,クッキー型で切り抜いたり…表現の仕方は様々です。太田菜央さんが準備したゼリーは各グループに約1リットル。充分楽しんでもらいたい!と,牛乳パック6本分用意しました。正面のスクリーンには,作品づくりのヒントを映しました。たった2本の芯と3色(青紫・赤・緑)を利用した,立体模様のアイディアは木塚あゆみさんを中心に考えました。
さて,ゴム手袋をつけて工作を始めた子どもたち。電極をさして,お手本のような模様作りに夢中になる子もいれば,美しい形をつくろうとする女の子,さらには寒天をぐしゃっと潰してボードの上に広げ遊び出す男の子。スタッフ一同,子どもたちのパワーに圧倒されました。
最後に,この企画を応援してくれた(株)学研教育出版と(独)北海道立総合研究機構から子どもたち全員に,7/10に発刊されたばかりの「科学脳」がプレゼントされました。2009年に休刊していた学研の「科学」復活第一弾で,テーマは「酸・アルカリ」です。もちろん実験キット付きですから,持ち帰って親子で楽しむことができます。多くの方の協力によって,このイベントを実施できたことに改めて感謝いたします。ありがとうございました。そして,参加した子供たちからは「楽しかった!」「ゼリーの内部で色が変化するっておもしろい!」「家に帰って別の実験もしてみたい!」など,たくさんの感想がよせられたことも追記させていただきます。
レポート:前田明裕(北海道大学工学部4年・2012年度CoSTEP本科受講生)