実践+発信

「トランスサイエンスメディア空間サイエンスメディアセンター試みから〜」/912 田中幹人先生の講義レポート

2012.9.19

 9月12日は、早稲田大学政治学研究科・准教授、田中幹人先生による講義「トランスサイエンスとメディア空間?サイエンス・メディア・センターの試みから?」が行われました。田中先生は、バイオの研究者として出発する一方、学生時代からライターとしても活動しており、現在はサイエンス・メディア・センターの運営にも関わり、研究者のコミュニケーション活動を支える活動をしています。今回は科学とメディアが抱える問題について講義していただきました。

日本における科学

日本の社会では「知識の啓蒙」の流れが強く、倫理的・法的・社会的問題(Ethical, Legal and Social Issues : ELSI)について議論されることはまだ多くはないと田中先生。車の運転にはアクセルとブレーキが必要ですが、現状はアクセル(研究推進)だけがあってブレーキ(ELSI)が伴っていないと言います。研究を推し進める上で、どのような利益があるかを考えるだけでなく、それに伴って起こる倫理的問題・法的な問題・社会的な問題にも十分な配慮が必要となるはずです。

トランスサイエンスとジャーナリズム

震災や原発の問題は、まさにトランスサイエンスの問題、すなわち「科学に問うことはできても科学には答えることができない問題」です。しかし、そこで科学 者が発言すること自体、政治的な問題、例えばどうすれば安全なのか、という現場の要求に直面せざるをえないのも現状です。そこで、問題の全体像を浮かびあ がらせ、人々に伝えていくのがジャーナリズムの役割になってくると田中さんは語ります。扱わなければならない問題は科学コミュニケーションからリスクコ ミュニケーション、クライシスコミュニケーション、それぞれが独立した問題であると言えるほど幅広いものです。しかし、現状の問題として、語ることのでき る研究者、伝えられるジャーナリスト、科学コミュニケーターが不足していることも事実です。

サイエンス・メディア・センターは、科学者/ジャーナリスト、あるいは情報を求める市民、そうした様々な立場の人たちの情報の仲立ちになり得る可能性を秘めていると感じました。

(2012年度選科生・青井 良平)