実践+発信

「障がい者への就労支援の取り組み」/NPO法人 札幌チャレンジド 加納尚明さんの講義レポート

2013.1.8

NPO法人札幌チャレンジドは、障がい者が社会で働くための支援を行っています。障がい者支援というとボランティアの人たちが無償で取り組むというイメージがありますが、加納さんの方法は、とても合理的で戦略的です。その方法や考え方には、社会の中で意味のある活動を展開していくために必要なポイントがいくつも入っていました。

加納さんの活動は、障がい者の方々にパソコンの講習を行い、スキルを身につけた人たちが、それぞれの会社で仕事をするというもの。一口で言うと簡単なようですが、講習を行うボランティアの手配はもちろん、講習を終えた方の就職先の開拓、あたらしい仕事の開発、社会的認知を挙げるための広報活動、そして資金の調達と、やらなければならないことは山ほどあります。                                                                                   

受講者は4人以上と決める

まずパソコン講習会ですが、1回の受講料は1300円、そして講師には5000円を支払うことになっています。受講料より講師代の方が高額ですが、講習は、4人以上の受講者が集まらないと開催しない、というのが札幌チャレンジドの考え方。4人集まれば、受講料だけで講師代を出すことができるからです。1回の定員は8名。年間で延べ1000人が受講しています。

仕事の機会や選択肢を増やす

講習会を受講しパソコンのスキルが上がっても、仕事の機会がなければ就労はできません。そのため、加納さんはさまざまな業種の方を前に「こんな技術を持った人がいる」「このような仕事だったら得意です」とアピールする「営業」も行っています。企業にはさまざまな業務があり、ちらにもスキルを持った人がいる。これらの人たちを上手につないでマッチングさせていけば、お互いにメリットが生じます。企業や行政の集まりなどに出席し、活動の紹介と仕事の機会作りに努めて、少しずつ理解者を増やすことも大切な仕事。講習を受けた方々は、たとえインターネットの動画の監視や、インターネットショッピングサイトの更新、テレビ番組やDVDの字幕制作や、ホームページの制作・更新など、さまざまな仕事で活躍しています。 この仕事は、見方を変える企業の社会貢献を支援することにもつながっています。

慈善型NPOと事業型NPO

NPO法人という形態はようやく社会に定着し、社会の問題を是正しようと多くの人がいろいろなアイデアで活動しています。いわゆるボランティア団体のように主に無償での活動を中心に行っている団体も数多くありますが、札幌チャレンジドは、言ってみれば「事業型NPO」という形をとっています。これは、専従の事務局員を雇用し、事業を興して社会の課題解決に取り組んでいる団体を指します。事業を継続し、広げていくことによって、障がい者の働き方、企業の雇用、社会の中での認知度を上げて社会全体を変えていく。そんな力強い「新しい公共の担い手」としてのNPOは、これからさまざまな活動を展開していこうとする受講生に、いくつものヒントを与えてくれました。