実践+発信

See the Science —C伝えるサイエンス

2025.3.21

阿部 稜平/2024年度 選科C(インフォグラフィック制作)
千葉大学大学院 融合理工学府 修士2年


私は地球科学を専攻する大学院生です。高校生の頃から、市民向けの出前科学実験を企画したり、サイエンスカフェに参加したりと、発信する側・受け取る側の両方の立場で科学技術コミュニケーションに関わってきました。これらの経験を通じて、科学を発信することに興味を持つようになりました。

研究室に配属後は、自身の研究に取り組むようになり、より高度な内容を発信する機会も増えました。しかし、その際に、伝えたいことを100%不足なく相手に伝えることの難しさを痛感しました。そこで、理論と技術の両面から効果的な発信方法を学びたいと考え、CoSTEPの受講を決意しました。

選科には3つのコースがありますが、これまでの経験から、展示パネルや印刷物の制作、SNSでの情報発信に必要となるグラフィック制作技術に特に興味があり、インフォグラフィック制作に特化した選科Cを選びました。

選科の受講を検討されている方には、私と同様、北大所属ではなく、1年間やっていけるか不安な方も多いかと思います。私もこの過去のウェブの体験記を読み漁りながら悩んでいたのですが、悩みに悩んで思いきって締切間近に申込書類を送信したことを覚えています。

筆者

講義は、主にオンデマンドで行われ、モジュールごとに課題を提出します。私は、普段極地や山岳域のフィールドワークを伴う研究をしているため、毎週決まった日に講義を受講することが難しいこともありますが、CoSTEPの選科では自分のペースで進めることができました。実際、私は今年度、CoSTEPの受講と並行して、1ヶ月間アラスカの氷河でフィールドワークを行っていました。仕事が忙しい社会人や大学院生でも安心して受講できると思います。また、2024年度は、DiscordやLINE、Zoomなどのオンラインツールを活用して、受講生同士で振り返り会や交流会、読書会の実施や、関東圏や札幌周辺のサイエンスイベントの情報共有が自主的に行われていました(それぞれ、主催してくださった受講生同期のみなさん、ありがとうございます)。応募時には、身近に受講生がいない環境で1年間続けられるか不安でしたが、その不安は全くの杞憂でした。

演習でのひとコマ。インフォグラフィック制作で行き詰まり、朴先生に助けを求めているところ

選科Cでは、10月に三日間の集中演習があります。自身が発信したい科学コミュニケーション活動について、その分野の知識がない人にも伝わるように意識してインフォグラフィックを制作します。先生方からのレクチャーや、各グループでのピアレビュー、時には先生とのマンツーマン指導を受けながら、形にしていきます。効果的なインフォグラフィックを作るには、デザインやグラフィック制作技術はもちろん重要ですが、伝えたい相手や内容、目的を整理する作業が何より難しいことを実感しました。3日間の集中演習は、懇親会で親睦を深めたり、自分のPCの画面とひたすら格闘したりと、盛り沢山な内容でしたが、CoSTEPならではの充実した経験となりました。

いくつかの講義や選科C集中演習の中で、科学技術コミュニケーション活動の実践の過程で「継続すること」「作り続けること」の重要性が度々提示されてきました。いま私は修了式からちょうど1週間が経ちましたが、この1週間の間にも、受講生の間で修了式の振り返り会やイベントなどの情報が新たに共有されています。今改めてCoSTEPの修了は、新たな科学技術コミュニケーション活動のスタートであり、新たな継続への皮切りであると感じています。

CoSTEPは、学びと実践を通じて視野を広げ、修了後の新しい挑戦へとつながる場です。科学技術コミュニケーションに少しでも興味がある方は、ぜひ一歩踏み出して、全国の多彩な受講生と共に1年間学んでみてください。

演習後に班のメンバーと記念撮影。様々な専門分野をもつ受講生たちで一緒に学びました

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