実践+発信

文系と理系との垣根を越えて

2025.3.25

工藤 優樹/2024年度 選科B(サイエンスライティング)
東海大学付属札幌高等学校教諭

CoSTEPを受講したきっかけ

私は高校教員として主に地理や世界史を教えており、科学とは縁遠い世界に生きてきました。そんな文系の道を歩んできた自分がCoSTEPを受講しようと思った理由に、学校現場における文系と理系との“断絶”がありました。理系の生徒にも歴史を好きになってもらいたい、文系の生徒にも科学を好きになってもらいたい、そんな文理の垣根を超えた授業をしたい、そのためのヒントを得ようと思い、CoSTEPに応募することにしました。

集中した集中演習

選科は講義と3日間の集中演習に取り組みます。選科Bの集中演習はサイエンスライティングがテーマで、課題は「科学技術コミュニケーターの役割について、高校生にわかりやすく伝える」でした。職業柄、書く機会は多いし、しかも相手は日常的に接している高校生ということで、正直、楽勝だろうと思っていましたが、しかしそんな甘い考えはすぐに打ち砕かれました。わかりやすくという課題なので、小説風に書いてみようと思ったのが無謀でした。まず自分自身にさえ納得のいく内容になりません。いくら考えてもうまくまとまらないし、オチは微妙だし、最後は何を言いたいか分からなくなってしまいました。ピアレビューというお互いに批評をする時間があったのですが、批評する方も何をいったらよいのか困惑するような出来でした。3日目になると時間との戦いになり、ただひたすら文章を直すだけの苦痛の時間が続きました。作品には満足できなかったけれど、改めて自分と向き合うことが時間となりました。だからこそ、今振り返ってみると、サイエンスライティングの意義が分かったような気がします。

こんな人におすすめ

サイエンスライティングはなにより書くことが肝心です。当たり前のようですが、科学に関する内容を、正確に、わかりやすく、さらに興味をもって読んでもらえる文章を書くことは非常に難しいことです。選科Aのサイエンスイベントも選科Cのインフォグラフィックも科学を伝えるという面で非常に大切なことですが、論文や書籍など、科学を他者に伝えることの基本は「書く」ことだと思っています。書くことについて、徹底的に向き合いたいという人にはぜひ選科Bを受講してほしいと思います。

このCoSTEPの経験をどのように高校生に還元するか、1年間の内容があまりに濃すぎたため、正直まだ整理がついていません。実は自分の書いた文章や他の受講生が描いた文章を生徒に読んでもらう機会を作りました。生徒が真剣に読んでいるのを見て、まずは自分なりに科学の面白さを伝えることから始めようと思いました。科学に疎い自分だからこそ、伝えられることがあると考えています。また今年、生徒を連れていくつかのサイエンスカフェにも参加させていただきました。このようなことも生徒が科学に触れる機会になっていくでしょう。そこから、そもそも文系だ、理系だとこだわらない教育につなげていきたいと考えています。

CoSTEPは受講生に新たな視点を示してくれます。自分のこれまでの実践をさらに広げたい人、壁にぶつかってしまった人、新たなチャレンジをしたい人にぜひCoSTEPを受講してほしいと思います。


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