実践+発信

「ファシリテーター役割と求められるスキル」118 青木将幸先生の講義レポート

2013.11.13

「守備範囲は家族会議から国際会議まで」という幅広い場でファシリテーターとして活躍されている青木先生。ファシリテーターの役割と求められるスキルを、スライドを使わず、ホワイトボードとお話しで伝えてくださいました。

みんなで考える「ファシリテーターの役割」と「求められるスキル」 

「ファシリテーターとは何か」、「それに求められるスキルとは何か」という問いを、青木先生と受講生、さらにはCoSTEPの先生方も含めて一緒に考えました。「促す人」「間をとりもつ人」「何らかの形の合意形成を進める人」など、それぞれの考えるファシリテーターの役割が出てきました。また、「思いをくみとる」「質問力」といったたくさんのスキルがホワイトボードにどんどん書きだされました。

様々な人々がどう考えているのか、他の人の違う角度からの考え方を理解し、比較・検討することで、物事をより正しく理解することができます。そこに話し合いの意味や価値がある、ということがこのワークから実感をもって理解できました。

ファシリテーターは菊と松

ファシリテーターが見ていなければならないのは、1.時間、2.参加者、3.話している中身・内容の三つだと青木先生はお話されました。会議や話し合いの場が時間内に収まるように、そして全員が主体的に関われるように、進行のブレーキ・アクセル・ハンドルを扱うのがファシリテーターです。

また、ファシリテーターは議題に関する知識を持ちすぎないことも大切です。これによって参加者に「ファシリテーターに教えなければ」という気持ちが生まれ、全員が自然に話せる状態になるのです。

ファシリテーターにとって「聴く」と「待つ」は根幹となる能力です。話し合いの場では、沈黙が怖いためについ口火を切ってしまいたくなります。しかし、その気持ちを抑えて待つことが重要です。そして、人の意見も自分の意見も平等に、尊敬の気持ちを持って聴き、その人の気持ちに触れながら、場を進行するのです。

ファシリテーターになるには…「10人100回」

青木先生は「誰でもがファシリテーターになれます」と言います。ただし、一人前になるには「10人100回」。

まず違うタイプの10人のファシリテーターに出会うこと。なぜならファシリテーターが使っている技術も、手法の使い方もそれぞれだからです。それを知ったうえで、自分がどういうタイプなのかを掴みます。

そして自分がファシリテーターとして100回活動すること。ファシリテーターノートにどんな失敗をしたのか、なぜ失敗したのかをまとめ、その経験をしっかりと積み重ねていきます。リーダーのように引っ張っていく力と、カウンセラーのように言葉を引き出す力を場に合わせて調整することを、100回の経験の中で身につけていくのです。

   

さあ今日からみんなでファシリテーターになろう!

この講義自体が青木先生によってファシリテートされていました。いつの間にか、「ファシリテーターの役割」と「求められるスキル」を自分に引き寄せて考えられるようになっていました。どんな発言をしても、青木先生が広げてくれるという安心感があり、自然に自分の考えを発表することができていました。

市民との対話の場をつくる人も、対話のテーマとなる科学や技術に直接携わる人もいますが、私は今後、どんな場面でもファシリテーターの役割を意識していきたいと思います。 

(石橋充子 2013年度本科・北海道大学大学院理学院 修士1年)