実践+発信

園山慶さんから質問への回答をいただきました72サイエンスカフェ札幌

2013.12.18

第72回サイエンス・カフェ札幌 質問カードへの回答

12月1日(日)に開催された第72回サイエンス・カフェ札幌「ようこそ「腸」宇宙へ〜腸内細菌のかぎりない可能性〜」では、参加者の皆さまから、たくさんの質問をいただきました。

(カフェ当日のレポートはこちら:http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/753/)

時間の関係から、当日のカフェの中ではお答えできなかった質問について、ゲストの園山さんに回答していただきました。カフェ中に取り上げた質問についても再度お答えいただいていますので、当日の園山さんのお話を振り返りながら、ご覧いただければと思います。

なお、内容が重複するご質問などについては、掲載されていない場合があります。また、質問文の一部を掲載用に書き換えている場合があります。ご了承ください。

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【食物と腸内細菌の関係】

Q1)草食の人(ベジタリアン)の腸内細菌はちがうのかなあ。入れ替わったのでしょうか。細菌の主な住人が変化するということでしょうか。

A1)腸内細菌の構成(種類の割合)は食生活に左右されますので、ベジタリアンとそうでない人の腸内細菌の構成は違うはずです。腸内細菌が利用できるのは、ヒトが食べても消化・吸収できずに大腸まで到達するような成分、難消化性オリゴ糖や食物繊維で、これらは植物に含まれています。

Q2)食生活の乱れで腸内細菌叢は変化している様ですが、大人になってから腸内細菌環境を良くする方法を教えて下さい。

A2)動物性脂肪(肉食)を少なく、野菜や果物を多く食べることが良いと考えられています。野菜には腸内のビフィズス菌を増やす難消化性オリゴ糖が含まれています。

Q3)整腸作用をよくするために、ヨーグルトを毎日食べていましたが、全然効果がありませんでした。ヨーグルトには数多い種類の菌があって、「2週間試してみて自分に合っていなければ、別のヨーグルトに変えてみる」と聞いたことがありますが、それも大変なのでやめてしまいました。腸内環境をよくするために、どのような食事をとればいいのでしょうか?

A3)食品は薬とは違いますので、劇的な変化は起こりにくいかもしれません。ヨーグルトに含まれる菌の種類によって身体におよぼす影響が異なることも確かです。

動物性脂肪(肉食)を少なく、野菜や果物を多く食べることが良いと考えられています。野菜には腸内のビフィズス菌を増やす難消化性オリゴ糖が含まれています。

Q4)乳酸菌やビフィズス菌を摂取する食品が増えているが、長期間摂取すれば、自身のフローラとして定着するのでしょうか?

A4)摂取している期間は腸内に生きて存在する可能性がありますが、摂取するのをやめるといなくなる場合が多いようです。もともといる腸内細菌は保守的なのです。

Q5)オリゴ糖を多く含む他の食品は? りんご、カキ、バナナその他の果物ではどうですか?

A5)フラクトオリゴ糖はネギ、タマネギ、アスパラ、バナナなどに含まれるそうです。

Q6)お酒や薬、食べ物などによって、腸内細菌は大きく変わりますか。

A6)腸内細菌の構成(種類の割合)は食生活に左右されますので、お酒や薬も影響します。とりわけ抗生剤は腸内細菌の数を減らし、割合も大きく変えます。

Q7)腸内細菌のエサとして有効な食物はわかっていますか。特殊なキノコとか?

A7)腸内細菌のエサになるのは、ヒトが食べても消化・吸収できずに大腸まで到達するような成分、難消化性オリゴ糖や食物繊維です。

【アレルギー】

Q8)トクホになっているヨーグルトは、腸の調子を整えると聞いていますが、アレルギーについては知りませんでした。

A8)現在のトクホの制度でアレルギーについての効果を訴えることは許可されていません。また、ヨーグルトがすべてアレルギーに対して予防や改善の効果があるとは言えません。

Q9)成人後オリゴ糖の摂取によりビフィズス菌を増やすことは、アレルギー症状(アレルギー性鼻炎など)の緩和に役立つのでしょうか。

A9)現在までのところ、研究によって結果がまちまちで、役立つと結論するに至っていません。

Q10)自然分娩の割合は昔とそれ程変わらないと思うのですが、近年アレルギーの人が増えているのは何故でしょうか。

A10)衛生環境が良くなり、また食生活の変化によって腸内細菌の構成が変化したことにより、免疫系の調節がうまくいかなくなっていることが関係していると考えられています。

Q11)腸内細菌が不足していくとアレルギー(アトピー…)になりやすいとおっしゃっていましたが、アトピーになった後でビフィズス菌(オリゴ糖)など摂取すればアレルギーが改善されるのですか?!

A11)現在までのところ、研究によって結果がまちまちで、必ず改善するとは限りません。食品は薬とは違いますので、劇的な変化は期待できないかもしれません。

【腸内環境を整える】

Q12)腸内細菌の種類は人工的にどのくらいまで増やすことができるのですか?

A12)腸内細菌はヒトの進化の過程で形成されてきたものです。例えば、大腸のような酸素の乏しいところで生きることができ、ヒトの免疫系による排除を免れることができ、ヒトが食べたものでヒトが消化できなかったものやヒトの腸から分泌される粘液を利用できるような菌が腸内細菌になったと考えられます。そのような腸内細菌の種類を人工的に増やすのは難しいかもしれませんし、危険も伴うのではないでしょうか。

Q13)他の動物の腸内菌で人間に入れたら良い働きをしそうなオススメ菌はありますか?

A13)他の動物の腸内細菌とヒトの腸内細菌は、「おおまか」に言ってそれほど違いはありませんが、草食動物の腸には食物繊維を分解しやすいような菌が豊富にいます。日本人の腸には欧米人の腸に比べて海藻に含まれる食物繊維を分解しやすい菌が多いこともわかっています。

Q14)ビフィズス菌の話はよくわかりました。健康の為には重要なのは腸内細菌の数ですか?ある特定の細菌の種類ですか(ビヒズス菌のように重要な菌があれば知りたい)? 細菌の種類のバランスですか?(後半でお話があるのかもしれませんが…)

A14)トータルの数ではなく、特定の菌群が健康にポジティブに働くと考えられますが、それらの菌群の腸内での生育も他の菌群との関係で成り立っています。

Q15)ヒトにとって理想的な腸内細菌のバランスは分かっていますか。

A15)今後の研究によってそのようなことが明らかになるかもしれません。

【腸のトラブルと腸内細菌の関係】

Q16)腸が弱いのかすぐ下痢をするけど菌の関係がありますか?

A16)下痢の原因はいろいろありますが。腸内細菌が関係する場合もあります。

Q17)大腸ガンと腸内細菌は関係があるか? 便秘、下痢は?

5年位前から毎日朝カスピ海ヨーグルトを食べています。体調は良好です。一つ困っています。ヨーグルトとの関係は? オナラがよく出ます。20回位/日。クサくはないのですが、多すぎて困ってヨーグルトと何か関係はあるのでしょうか。何か改善策があれば教えて下さい。*肉はあまり食べません。魚メイン。

A17)オナラは、腸内細菌が作り出すいろいろなガスです。芋や豆や玄米を食べるとオナラがたくさん出るのは、それらに含まれる食物繊維が腸内細菌によって分解され、ガスができるからです。臭くなければ身体に悪いということはないのですが、臭ければ本来は大腸に到達しないタンパク質が腸内細菌によって分解されてできるガスのせいですので、食生活や身体の調子が悪い証拠です。

Q18)4ヶ月の乳児ですが、がらくのオリゴ糖を飲ませているのですが、便は出るのですがガスがたまって病院に通う程です。それはどうしてですか。

A18)オナラは、腸内細菌が作り出すいろいろなガスです。腸内細菌はオリゴ糖を分解してガスをつくります。それが多すぎで不快であれば、食べるオリゴ糖の量を減らすと良いと思います。

【研究の進展】

Q19)クロストリディウム(Cl.spp.)は悪玉菌と考えていましたが、(一)昨年のNHKTVで実はCl.spp.が免疫機能に需要な役割を果たしていることが判明(京大教授 伊藤先生?)とありました。この点に関して、どこまで研究が進展しているのでしょうか。

A19)クロストリジウムには非常に多くの菌種が含まれますので、ひとまとめに言うことはできませんが、その中で、Clostridium coccoides groupには酪酸を産生する菌種が含まれており、酪酸は免疫などの身体の機能に重要な役割を果たすことがわかっています。

Q20)お母さんがオリゴ糖をたくさんとるとアレルギーがおさえられるというお話をきいて「そんなことなら私もそうすればよかった!」という方はいっぱいいるのでは?と思いますが、この研究はいつごろ発見されていたのですか。

A20)私達のグループでは2010年に動物実験の結果を発表し、その後、ヒトでも同様な報告がされていますが、まだ研究段階なので、オリゴ糖を食べれば必ず予防できると結論づけることはできていません。

Q21)マウスと人の相関は検証されていますか?

A21)マウスとヒトの腸内細菌の構成は、「おおまか」に言えば同じですが、「細かく」見れば違います。また、マウスとヒトでは、身体の構造や機能が違います。したがって、マウスの研究結果をヒトに当てはめて考えるときには注意が必要です。現在では、ヒトの遺伝子を導入し、さらに腸内細菌をいないようにしたマウスにヒトの腸内細菌を移植して、いろいろなことが調べられています。

【分娩時に母の腸内細菌を受け取る】

Q22)腸内細菌(フローラ)が母親似のパターンと言われましたが、帝王切開で出産し、父親がその後育てた場合のフローラのパターンはそれでも母似でしょうか(母が要職のためすぐ社会へ戻り、その代わりに父などが育てた場合)。

A22)経膣分娩と異なり、帝王切開の場合は、赤ちゃんの腸内細菌の構成はお母さんとは似ていないことが報告されています。

Q23)帝王切開で生まれた赤ちゃんの腸内細菌は正常分娩の赤ちゃんのと異なるのでしょうか。

A23)経膣分娩と帝王切開の場合では、赤ちゃんの腸内細菌の構成は異なることが報告されています。

Q24)帝王切開で生まれた子の腸内細菌はどのようになっていますか。

A24)経膣分娩と異なり、帝王切開の場合は、赤ちゃんの腸内細菌の構成はお母さんとは似ていないことが報告されています。

【母乳】

Q25)人の乳にだけ(?)オリゴ糖が入っている意味は?

A25)合目的的に考えれば、赤ちゃんの健康な発育に役立つビフィズス菌が増えるようにオリゴ糖が含まれているのでしょうか? ヒトで特に多い理由はよくわかりません。

Q26)母乳にオリゴ糖が多いという事は母親にオリゴ糖を作る能力があるという事ですか? 母乳のオリゴ糖がどこから来ているのか教えて下さい。母親だから特別多くオリゴ糖を摂取することはないと思いますので。

A26)食べたオリゴ糖が母乳にでてくるのではなく、お母さんの乳腺でオリゴ糖がつくられます。

【その他】

Q27)大人になってからヨーグルトをたくさん食べてビフィズス菌をふやそうとしてもむだでしょうか?

A27)ビフィズス菌が入っているヨーグルトを毎日食べたり、難消化性オリゴ糖を食べたり、難消化性オリゴ糖が含まれる野菜や果物を多く食べるような食生活をすれば、ビフィズス菌が多い腸内細菌になるかもしれません。

Q28)小腸と大腸のビフィズス菌数のバランスの違いはあるのか?

A28)ビフィズス菌は主に大腸に生息しています。乳酸菌は小腸にもいます。

Q29)腸のような消化器以外にも細菌は普通にいますか。

A29)口から肛門までの消化管に加えて、皮膚のような体表面や外性器にも普通にいます。

Q30)良いと言われるものでも「過ぎたるはおよばざるがごとし」で、多すぎると逆効果になるということはありませんか? ビフィズス菌は多ければ多いほど良い?

A30)赤ちゃんの腸内細菌のほとんどはビフィズス菌ですので、赤ちゃんにとってビフィズス菌の割合が多いことが不都合になることはないと思います。しかし、赤ちゃんと大人では食べ物が異なりますので、ビフィズス菌が多ければ多いほど良いということにはならないはずです。

Q31)漢方薬の効く・効かないは腸内フローラが重要と聞いたことがあります。日本人の腸内フローラは漢方が効きやすいフローラですか?

A31)漢方薬については良くわかっていないことが多く、腸内細菌との関係についても研究すべき多くのことが残されていると思います。

Q32)自分の腸内環境を知る術はありますか。

A32)「腸内環境」という言葉は曖昧ですが、良いウンチが良い腸内環境を反映すると言われています。「大便力」(辨野義己 著、朝日新書)が参考になると思います。

Q33)1000兆個の腸内細菌はおもさでは何?くらいでしょうか? 体調で腸内細菌が大きく変わるということは体重もその分変わるということでしょうか?

A33)1キロくらいでしょうか。腸内細菌の総数は10倍くらいは変化すると思います。

Q34)腸内細菌が良い状態で精神状態に影響すると本で読みましたが、いかがですか?

A34)脳と腸とは深く関係しており、その関係性に腸内細菌が影響するのではないかということが研究され始めています。過敏性大腸炎という病気は精神的ストレスが関係し、腸内細菌の改善(乳酸菌などによる)で症状が改善するということが報告されています。

Q35)腸内フローラの割合でよく本とかにでているのは、善玉2:悪玉1:日和見菌7となっているが、日和見菌自体は菌は変化しないと思いますか。軍勢の多い方に味方するようですが、どのように変化するのか教えて下さい。

A35)良くわかっていないと思います。腸内細菌全体は多くの種がお互いに関係し合うことで成り立っています。

Q36)マウスの場合、出産後、父マウスと同じケースでは、フローラはどうでしょうか?

A36)マウスは、ケージの中で糞が身近にあるような環境で飼育されますので、子マウスの腸内細菌は一緒に住んでいるマウス(父親でも仮親でも)の腸内細菌の影響を受けることになります。

Q37)コアラやカバは仔に糞食させて、フローラを提供すると言われていますが、その糞は常時排泄している糞とは異なる(ウサギの様に盲腸発酵させた特別な糞)でしょうか?

A37)常時排泄している糞です。

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園山さんの研究室のHPはこちら: http://www.agr.hokudai.ac.jp/fbc/sonoyama/index_J.htm

 たくさんの質問をお寄せくださった参加者の皆さま、そして、その一つ一つに回答してくださった園山さんに感謝申し上げます。ありがとうございました!