実践+発信

アート×科学×さかなで社会を探究する「あかさかな」1回目のプログラムを実施しました。

2026.9.18

北海道大学CoSTEPと札幌文化芸術交流センター SCARTSは、若い世代の皆さんと一緒に、アートの創造性と科学的な探究に触れ、世界をひろげる学びの場をつくることを目指す「アート&サイエンスプロジェクト」を実施しています。

本プロジェクトでは、札幌市教育委員会と共同で、市立高等学校学校間連携プログラム「あかさかな」を、札幌市立高等学校の「学校間連携による単位認定プログラム」として、9月から1月まで全5回実施します。

9月6日(日)、SCARTSスタジオにて、1回目のプログラム「アーティストの視点」を実施しました。

前半は、CoSTEP教員の五十嵐千夏とさとうゆかによるオリエンテーションとアイスブレイク、後半は、OTOMONO(アコースティック・エコロジー・デザイン&ヘリテージ・コレクティブ)のカロナリス・ステファノさんと、平山晴花さん(北海道情報大学准教授)を講師に迎え、「音」を起点に海洋環境や環境問題について考えるレクチャーとワークショップ「Echo Sea Stem」を行いました。

新しい魚「へん」の漢字をつくる


参加した高校生は、自己紹介とともに、自分で新しい魚「へん」の漢字をつくるアイスブレイクに取り組みました。
「魚+吸」「魚+雲」「魚+究」「魚+淡+君」など、自分の興味関心やこのプログラムへの意気込みを込めて、さまざまな漢字を考案しました。
それぞれが漢字に込めた意味や思いを説明し合うなかで、和やかな雰囲気でプログラムがスタートしました。

今回もプログラムを通してオリジナルの「ワークブック」を使用します。
ワークブックは、各回で学んだこと、考えたこと、調べたいことをメモに取ったり、まとめを書くことを促します。
メモを取ることは、得た情報を自分の言葉で再構成して深い理解と記憶の定着を促す有効な学習手段です。
また、プログラム全体のまとめとして「コンセプトマップ」を作成し、各回で得た知識や気づきを関連づけながら整理します。
学んだことを点として終わらせず、それぞれのつながりや関係性を可視化することで、テーマについての理解を深め、自分なりの問いや考えを見つけることを目指します。

アーティストによるレクチャー:いつもの音が、違って聞こえる


後半は、OTOMONOによるレクチャーです。
まず、「サウンドスケープ・エコロジー」という考え方について学びました。サウンドスケープとは、私たちを取り巻く音の環境のこと。
身の回りにあるさまざまな音に耳を澄ませ、その土地や環境との関わりを考えることから、海や生態系、環境問題へと視野を広げていきます。
続いて、実際の「エコロジカル・サウンドアート」の作品を鑑賞し、音を通して環境を捉え、表現するさまざまな方法について紹介してもらいました。

水中で聞こえる音を、地球物理的な音/生物が発する音/人間活動による音の3つのカテゴリに分けて聴き比べます。さらに、複数のカテゴリの音を同時に聴き、どのカテゴリの音なのかを分類していきました。
人間の活動による音だと思ったものが生物の発する音だったりと、参加した高校生たちは、普段とは違う視点で音に耳を澄ませていました。
また、音の分類を行った後は、バイノーラル形式で制作された架空のサウンドスケープをイヤホンで聴き、サウンドマップを作成しました。
どの方向からどんな音が聞こえるのか、その音は移動するのか。配布されたマップの台紙に、聞こえてきた音のイメージを書き込んでいきます。
音の聞こえる方向や移動をそれぞれの感覚で捉え、さまざまなサウンドマップができあがりました。

ワークショップ「Echo Sea Stem」

音についての知識や、音を捉える感覚を学んだ後は、身体を使ったワークに取り組みました。
タイトルの「Echo Sea Stem」は、「ecosystem(生態系)」をもとにした言葉遊びから生まれたものです。
「eco」を「echo(反響・音)」に、「sy」を「sea(海)」に置き換えた言葉で、音と海、そして生態系とのつながりを考えることをテーマにしているそうです。
ここでは、音を手がかりに、海の中で起こる出来事を想像し、ストーリーをつくっていきます。
まず、チームに分かれて、「海の中で爆発音が聞こえ、それに魚が驚く」といったように、海の中で起こる出来事を音で表現するストーリーを考えました。
考えた音のストーリーをもとに、平山さんが音響編集ソフトを使って、実際にどのような音をつくることができるのかをデモンストレーションしました。

そしていよいよ、各グループが考えたストーリーを、会場にあるさまざまなものを使って、音だけで演劇のように表現するパフォーマンスをつくります。ステファノさんからは、パフォーマンスをつくる際のポイントとして、時間や空間など、音の変化を意識することについてアドバイスがありました。

各グループの発表では、ペットボトル、椅子、けん玉、ギター、ビニール袋など、会場にあるさまざまなものから音をつくり、多様な方法で海の中の出来事を表現しました。

椅子を使った音の立て方を工夫したり、演者が移動することで音の聞こえ方を変えたりと、グループごとに異なるアイデアが見られました。
発表後には、参加者同士でもそれぞれの表現について感想を伝え合いました。
講師からも「初めてじゃないよね?」と声が上がるなど、高校生たちの発想や表現に驚く場面もありました。

最後のリフレクションでは、「生物音響学というものがあることに驚いた」「人工物による生態への影響について考えた」
「なぜ音に興味を持ったのか」など、参加者からさまざまな感想や質問が飛び交いました。

次回
11月3日(火・祝)、「研究者・現場の視点」と題して実施します。
講師には、漁業の仲卸から飲食店まで、水産業の現場で幅広く活動し、北海道の水産業や海洋環境の課題解決を目指す「DO FOR FISH」の代表を務める本間雅広さん、北海道北見市でホタテ漁をはじめ、6次産業化に取り組む柏谷晃一さん、そして北海道大学函館キャンパスから北極圏の研究を行う上野洋路さんを迎えます。