実践+発信

人生の目標へ向けての「好ステップ」

2010.2.25

「人生の目標:地球と人に優しい人間、熱くもさわやかに海の素晴らしさを語れる研究者」……その昔、自身の結婚式で配布した自己紹介に記した言葉です。その後、大学教員として「持続可能な低炭素社会」なるものに向けた教育・研究に携わるようになって以降、市民向け講演会など、己の研究について専門外の様々な方々とお話しする機会が格段に増えました。しかし、自分の言いたいことがちゃんと相手に伝わっているのか、いつも不安で不安でたまりませんでした。それだけならばまだいいのですが、緊張のあまり頭の中が真っ白になってしまう自分がとても嫌でした。そんな情けない自分を何とか打破したく、藁にもすがる思いでCoSTEPの門を叩いたのでした。 しかし、私が受講した選科Aのカリキュラムは必ずしも、このような私の症状に対する処方箋にはなっていないことが、実際に受講してみて徐々に分かってまいりました。「発表の技法」めいたものを求めていた当初は正直、戸惑いましたが、多様な講義の聴講そのものを楽しんでいる自分に気づくまでにそう時間はかかりませんでした。「どう話すか(聞くか)?」も大切ですが、まずは「何を話すか(聞くか)?」が重要であるという、割と当たり前のことを再認識させられた次第です。その中で、受講生の発表の様子をビデオで録画し、皆であれこれと相互批判し合う「プレゼン演習」は、自分の発表に何が足りなくて、どんな所作が見苦しいかetcが一点の曇りもなく明らかになり、私にとっては自己嫌悪を助長させる反面、とても実践的で効果の高い演習でした。録画されることが事前に分かっていますから、発表の際はたいそう緊張いたしますが。 「教員のくせに、何で今さら受講生に?!」。皆さんからよく尋ねられたものです。しかし、実際に受講生になってみると、日々の教員生活で見落としていた数々の事柄が浮き彫りになり、とても新鮮でした。大学教員は人前で話す機会が多いので、自分はコミュニケーションにとても長けていると思っておられる方も多いと存じますが、そういう先生方にもひとつCoSTEPを受講して頂き、ナントカの壁とやらを打ち破って頂きたいですね。そういう教職員が増えれば、自ずと部局間の交流が拡がり、北大ももっと学生にとって魅力ある総合大学になっていくのではないでしょうか?もちろん自戒の意も込めて言っておるわけですが。 最後に。毎年あれだけ多くの受講生を抱えながら、CoSTEPのスタッフは例外なく、受講生の顔と名前を覚えておられ、驚嘆させられました。また、いつ何時、誰の質問に対しても丁寧に対応しておられて、プロとしての誇りとプロジェクトに対する情熱を感じました。何と言っても、スタッフも受講生も、実に楽しそうに取り組んでおられるのがとてもよいですね。何かと世知辛い世の中ですが、まずは自身が生き生きと何かに取り組んでいる姿勢を示すのも、大いに「伝える」ことになるのかな、と思いました。 私もこの1年間で学んだことを糧に、前掲の「人生の目標」に向かって少しずつ前進していきたいと思っています…先はとてつもなく長そうですが。

選科生修了/藤井 賢彦
北海道大学大学院 地球環境科学研究院 准教授