実践+発信

選科A集中演習が開催されました

2014.9.22

8月22日(金)~24日(日)の3日間、選科A受講生を対象とした集中演習が行われました。

この集中演習は、サイエンス・カフェや各種のワークショップなど、参加・体験型イベントの企画者・進行役に求められる企画、プログラム・デザイン、ファシリテーションなどのスキルを、3日間かけて集中的に身につけることを目指すことを目的として開講されました。

全国から集まった、年齢や職業、バックグラウンドも極めて多様な25名の受講生は、異分野、異世代とのコラボレーションを通して、発想と実践のための素材を持ち寄り、互いの問題意識の違いや共通性を見い出しながら活動をデザインしていくことの醍醐味や可能性、課題を体得しました。

集中演習では、少人数でのグループワークを中心としながらも、グループワークを進めていく上で必要な知識やスキルを習得するショートレクチャーが要所要所で行われました。

また、演習のプログラムは、「表現」「共有」「振り返り」という三つのステップを絶えず回しながら学習効果を高めていくというコンセプトに基づいて設計されました。

この「表現」と「共有」を有効なものとし、受講生同士がそれぞれの意識や考え、学びの様子を共有できるように、一日目に作成した「学習目標シート」や、二日目に行われた「相互インタビュー」の結果などを作成直後に壁面に貼り出しました。

また、「振り返り」のステップを有効なものにするために、毎日の終わりに各々の受講生が一日を振り返り、「発見したこと」「達成したこと」「もっとこうすればよかったこと」をそれぞれ付箋に書き、壁面に貼りました。

さらに、演習の様々な場面をスタッフが撮影し、写真とコメントを壁面に時系列で貼り出し、演習全体の流れを視覚的に見通せるようにしました。これをreal-time documentationと呼びます。このreal-time documentationは、演習の行われた空間だけではなくFacebookページでも展開し、演習に参加しなかった受講生や第三者も、その様子を知ったり、コメントを書き込んだりできるようにしました。

第1日目

まずは簡単なアイスブレイクで緊張をときほぐしたあと、集中演習の開催にあたって、全体についてのガイダンスが行われました。その後受講生には、各自があらかじめ提出していた「学習目標ワークシート」を印刷したものが配布されました。受講生は、この集中演習において達成したい学習目標をあらためて確認すると同時に、現時点で加筆修正すべき点を書き加えました。ひきつづき、イベント制作の原点となるレクチャー「企画を立てるということ」が行われました。

その後はいよいよグループワークです。受講生はあらかじめメンバーの多様性の観点から編成された5名ずつの班分けに従って、それぞれの教室に向かいました。

グループワークでは最初に、事前課題として制作した「自己紹介プレゼンシート」をもとに各自がプレゼンテーションを行いました。これは単なる自己紹介ではなく、これからグループで制作していく企画のタネになるような、個々人の得意分野、関心領域、経験、モチベーションなどを盛り込んだプレゼンテーションでした。

ひきつづき、各メンバーのプレゼンテーション内容から、メンバー全員で企画のタネになりそうな素材、キーワードやキーコンセプトを拾い出し、付箋や黒板などを使ってブレインストーミングを行いました。そして、企画の輪郭をだんだんはっきりさせていきました。グループワークのゴールは、他の受講生の前で発表するための「企画書」を作成することでした。

続いて、再び全員が一つの教室に集まり、各班毎に企画書プレゼンを行いました。聴衆役の受講生からは、鋭い指摘や建設的な改善案が多数寄せられ、各班のメンバーも、企画のブラッシュアップのために大変有益な情報を得ることができました。

その後、企画のコンセプトを実際の実演プログラムに落とし込むための具体的な手法と考え方の基本を解説するレクチャー「プログラム・デザイン」が行われました。

最後に受講生は各班に分かれて、企画書プレゼンで得たフィードバックやレクチャー内容を念頭に置きながら、2日目、3日目の作業計画を立てました。

夜は恒例の懇親会です。演習1日目の興奮冷めやらぬ中、3日目の実演に向けての期待と不安を抱えながら、受講生同士、そして受講生とスタッフとの間での熱のこもった会話が続きました。

第2日目

2日目は、ショートレクチャーから始まりました。まずは「ちらしの作成」「アンケートの作成・実施・活用」についてのレクチャーです。イベントは単に実施するだけではなく、事前の広報と、事後の評価が重要であるという観点から、そのための具体的な方法をコンパクトに学びました。その後、ファシリテーションについてのレクチャーと、それを短時間で効果的にトレーニングできる手法の一つである「相互インタビュー」が行われました。

「相互インタビュー」では、受講生が二人一組になり、所定の時間で相手についてのインタビューを行って所定の分量の文章にまとめました。更にそれを相手に見せて修正してもらい、「自分が伝えたと思っていること」と「相手に実際に伝わったこと」「相手がインタビューをまとめる際に重要だと思ったこと」との間にどのようなギャップがあるのかを実感してもらいました。更にそれを4人グループで音読し合って共有した後、一連のワークについての気づきを全員で共有しました。

相互インタビューの結果も壁面に貼り出して共有したので、受講生は、演習中密接な交流を持てない他の班の受講生の人となりや興味関心について知ることができました。

その後は再びグループワークです。昼食を挟んで約4時間という、演習の中でも最も長い時間をどう有効に活用するかに実演の成功がかかっているため、受講生の顔つきもより真剣なものになってきました。一方で、そのような適度な緊張感を楽しむ様子も見られました。

グループワークの後は、実演のリハーサルです。二つの班がペアになり、お互いの実演を見せ合って、フィードバックをもらいます。まだ構成もシナリオも小道具も整っていない中、とにかく曲がりなりにも「実演」をしてみせなければなりません。二日目の段階でいきなりリハーサルを行うというのはかなり大変なことですが、早い段階でとにかく全体像を創り上げ、第三者に見せてフィードバックを得ることは、ものづくりやイベント制作、コンテンツ制作などのプロジェクトにとって大変効果的な手法です。これを「rapid prototyping」と呼びます。

リハーサルはどの班にとっても満足のいくものではなかったでしょうし、恥ずかしい思いもしたかもしれません。しかし、ペアになった班の受講生や教員からもらったたくさんのフィードバック、掛け替えのない価値のある情報です。それをどう活かすかは、受講生にかかっています。

その後は再びグループワークです。公式の終了時刻は18:30でしたが、遅くまで教室に残って準備を進める班、一度食事に行ってから戻ってくる班、潔く切り上げてビールを飲みに行く班(「あえて場所を変えて準備作業をしたのだ」とは聞いていますが)など、班によって準備方法が多様であったのも興味深い点でした。もちろん、ホテルに帰ってから個人作業を続けた受講生もたくさんいました。

第3日目

最終日です。午前中は、最後のグループワーク、総仕上げです。実演の準備と並行して、アンケートやちらしも作成しなければなりません。ちらしの作成に関してはデザインを専門とする教員が各班を巡ってアドバイスし、最終的にどれも大変クオリティの高いものになりました。また、作業を分担して、一部の受講生は会場設営も体験しました。

そして昼過ぎから、演習会場の隣にある情報教育館一階のロビーで、いよいよミニサイエンスイベントの本番が始まりました。会場には、本科や選科Bの受講生、研修科受講生、修了生などが集まってくれました。

各班20分の持ち時間で、演題は以下の通りです。

  1. 1.「おいしい」ってな~に!?

    1. おいしいごはんを食べるために、明日からあなたができること

  2. 2.明日からちょっとだけ優しくなれる

    1. 身近な社会心理学

  3. 3.ふたりのトランスサイエンス

    1. 着床前診断は誰のため?

  4. 4.正体知れば怖くない!

    1. 今日からみんなエボラバスターズ

  5. 5.DoSTEP旗揚げ公演

    1. 監視カメラとプライバシーのトランスサイエンス

どの班のプログラムも大変興味深いテーマをユニークな切り口で扱っており、また、実演の手法も、全体を演劇で行うなど、趣向を凝らしたものばかりでした。

実演終了後、聴衆からもらったアンケート回答や、それに加えて付箋に書いてもらった評価コメントなどを各班で分類、整理し、実演の評価について総括を行いました。その後、全員で車座になり、全員が一人ずつ、この三日間の集中演習についての振り返りを発言しました。

 

受講生にとって、この集中演習での学びもさることながら、情熱と魅力に溢れる多数の「仲間」と出会えたことが、一番の財産になったのではないでしょうか。振り返りの際も、これで終わるのはもったいない、ぜひ今後も交流を続けて何かやりたい、との意見が多数見られました。

集中演習は、選科生にとってはCoSTEPの一年間のプログラムのハイライトですが、「折り返し地点」でもあります。これからも互いに励まし合いながら、頑張っていきましょう!