実践+発信

なぜ数学は人を幸せな気持ちにさせるのか

2014.11.8

著者:クリスティアン・ヘッセ

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

刊行年月:2012年3月

価格:2160円


みなさま、数学で幸せを感じたことはありますか。私が数学を通して感じた幸せとは、試験で数学の問題が解けたときの達成感。…ちょっと違いますね、もしかしたら私は数学で幸せを感じたことはないのかもしれません。数学は、世の中にあふれています。それに気が付くには、きっかけが必要なのでしょう。この本の著者で数学者であるヘッセの言葉をお借りします。

数学は、いついつまでも感じるところのできる美しさの源泉でもあるのです。その精密さ、透徹した明晰さ、そして優雅は数学的特質だといえるでしょう。

ちょっとあまりついていけないような。しかしその後にこう続きます。

数学には、食事の席や宴会、パーティーでの楽しい会話のネタにすることができる話題が豊富にあるのです。

期待半分でページをぱらぱらめくってみると、なんだか面白そうです。著者の言う通り、何気ない日常生活と数学を結び付けてくれるような話が全部で100話、ユーモアたっぷりに語られています。例えば、『分割して統治せよ、あるいはねたみのないように分ける』という話では、ホールケーキを3人で分けるとき、不満が噴出せずに平和的にみなが満足してケーキを食べられる方法を伝授してくれているのです。しかも、論理的に!! これを知っていれば、3人兄弟の私は、小さなことで喧嘩をしなかったかもしれません。『枕合戦の科学:配偶行動の数学』なんて、少し吹き出してしまうような話まであります。

もちろん、数字を用いてじっくり頭を働かせて考えなければならない話や、抽象的すぎる!!とツッコミを入れてしまいたくなるような、さっぱり意味のわからない話も多々あります。それらは飛ばしてしまいましょう。

自分が面白そうだと感じた話だけを読んでみても、古代から脈々と受け継がれてきた数学が、私たちの日常生活の中に溶け込み、あちらこちらで活躍していることに気が付いて、はっとするのです。知らなった~!! 驚きと感嘆が入り混じった、言葉では言い表せないなんとも感慨深い気持ちに包まれました。生きていくには必要ではないのかもしれないけれど、自分の知っている世界に奥行きができたように感じられて、ちょっとだけ得をした気分です。嬉しさで顔がニヤニヤ。筆者のいう“幸せ”とは、このようなことでしょうか。

数学“ネタ“を仕入れた私は、さっそくだれかに伝えたい衝動に駆られて少々興奮気味に後輩に話しかけました。今考えれば、ありがた迷惑かもしれません(笑)。

さてさて、読み飛ばしていた話にもう一度挑戦してみよう思います。次はどんな発見が待っているのでしょうか。知的好奇心の赴くままに、さあ、数学の世界へ。

今井瑞依(CoSTEP10期本科)


6日間連続で掲載してきた読書週間の書評企画は今回で終了です。いかがだったでしょうか。

本を手にとっていただくきっかけになったならば幸いです。