6月20日、モジュール1の最終回「実践入門」の冒頭で、科学者として初めてスペースシャトルに乗り込んだ毛利衛さん(北大理学部出身)が、貴重なお話をしてくださいました。
現在、日本科学未来館の館長をつとめる毛利さんの「実践」には、二つのルーツがあります。
一つは、北大工学部に所属していた頃に取り組んだ、札幌のきれいな空を取り戻すプロジェクトです。当時、車はスパイクタイヤを装着しており、春にはスパイクで削られた路面から生じた粉塵が、深刻な環境汚染を引き起こしていました。毛利さんはこれに対して研究者として取り組んだのです。
二つ目は、1992年のスペースシャトルエンデバーでのミッション中に行った宇宙授業です。出身地余市の小学校と映像でつないだ授業で演出として用いられたのがひとつのリンゴ。そこには様々なエピソードが隠されていました。
1986年打ち上げのチャレンジャー号のミッションでは、高校教員のクリスタさんがリンゴを用いて宇宙授業をする予定でした。しかしチャレンジャー号は事故を起こしてしまいます。クリスタさんの出身はリンゴで有名なマサチューセッツ州でした。そして毛利さんの出身地余市町は、日本で初めてリンゴの栽培に成功した町であり、その林檎はマサチューセッツ州からもたらされ、そこには北大の研究者の努力もあったのです。
ひとつのリンゴには、多くの人の科学、そして科学技術コミュニケーションの実践があり、それを引き継いだのが毛利さんの宇宙授業だったのです。
最後に毛利さんは、科学技術コミュニケーションは社会にとって非常に意義がある活動です。CoSTEPでしっかり学んでください、と力強いメッセージをCoSTEP受講生に残して下さいました。