2016年2月21日(日)、第87回サイエンス・カフェ札幌「未来は自分で変えられる~ドイツのエネルギー自立に学ぶニセコの挑戦~」を開催しました。今回は、北海道大学電子科学研究所助教の酒井 恭輔さん、ニセコ町役場 企画環境課環境モデル都市推進係主任の大野 百恵さんのおふたりをゲストにお迎えしました。
当日は、札幌市内はもちろんのこと、ニセコ町や倶知安町からもこのイベントのためにたくさんの方が会場に来られました。
今回のサイエンス・カフェの目的は、ドイツとニセコの事例を紹介しながらエネルギーや環境、そして豊かな生活について会場のみなさんと一緒に考えていくことです。イベントの冒頭に、実際にニセコ町に住んでいる人々の生活を映像でご紹介しました。
1人は、薪ストーブを使っているCoSTEPスタッフのくらし。
薪ストーブは、燃料として薪を使うことで二酸化炭素の排出が事実上ゼロであるだけでなく、エコの観点や快適さの点でさまざまな良さがあります。
もう1人は、アラスカからニセコ町に移住し、10年以上かけて家作りをしているロブ・マクマホンさんのくらしです。アラスカ州シトカ生まれのロブさんは、環境と建築の専門家です。
「北海道は、世界でも稀有な、とても貴重な場所」。
ロブさんが作る家のこだわりには、ニセコのきれいな空気や水を尊ぶ気持ちと、移住を決意させたニセコ町の環境政策への共感が背景にあります。「断熱こそ、最も経済的な室温調節装置」と語るロブさんは、建物全体から熱を逃さない断熱設計と、効率よく家をあたためるロケットストーブ(Masonry stoveの一種)を自らつくり、エコハウスの建築を進めています。
断熱によって熱を逃さないことで、どれほどあたたかく過ごすことができるかを体験する実験として、会場の参加者にアウトドア用のアルミシートを配布してくるまっていただきました。
体験した人からは、「百聞は一見にしかずでした。暑いくらいでしたが、耐え難いというほどではなく、ポカポカして驚きました」との声が寄せられました。
このあと、大野さんからニセコ町の取り組みが紹介されました。ニセコ町は、2014年に道内3番目の環境モデル都市に認定され、ドイツの成功例に学びながらエネルギー自立に挑戦しています。ニセコ町で撮影した映像も使い、「説明が具体的でわかりやすかった」「ニセコの町の姿勢、実践が興味深く、その行く末に注目したい」などと好意的な感想をいただきました。
ニセコ高校エアハウス
ニセコ町町民センター
王子製紙尻別川第1発電所は、ニセコ町内に3つある水力発電所のうちの1つです。ニセコ町では、エネルギーの地産地消の観点から、2016年4月より町内10の公共施設を、この水力発電所を有する企業からの新電力に切替えることを決定しました。
参加者の一人からは、「なぜ技術革新は日々進歩しているのにエネルギー問題はなかなか解消されないのだろうと思っていました。しかし、今日のお話をきいて、無駄をなくそうとする意識があれば、少しずつ解消できるかもしれないと思いました。来てよかったです。」との声を寄せていただきました。
イベントのタイトルにある「未来は自分で変えられる」は、ゲストの酒井さんのこだわりです。エネルギーや環境をドイツやニセコだけの特別な問題ととらえず、北海道にあるすばらしい財産を生かして、私たちひとりひとりが「豊かな未来」をつくることができるはずです。こういうことができるのは地域に資源がある北海道の強みです。このイベントがそのきっかけになると信じています。私たち主催者の思いが、参加者のみなさんにも共有していただけたことが感じられ、うれしく思いました。
参加してくださったみなさん、ありがとうございました。ニセコ町でもこのイベントを開催してほしいという声もいただいています。今後、いろいろな形で、エネルギー自立について学び、行動につなげていくための機会をつくることができれば幸いです。