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87サイエンスカフェ札幌「未来は自分で変えられる~ドイツエネルギー自立に学ぶニセコ挑戦~」を開催(2)

2016.3.1

第87回サイエンス・カフェ札幌「未来は自分で変えられる~ドイツのエネルギー自立に学ぶニセコの挑戦~」で、ゲストに寄せられた質問・感想とその回答集です。

酒井さんへの質問

(ドイツについて)

1.ドイツ人の自立意識の高さは理解できましたが、それ以外に地方自治体とか州政府の支援策のメニューにはどういうものがあるのでしょう。

環境関連NPOへの出資、再エネ施設への補助金等があります。

2.ドイツの省エネ長期目標について、これまでのところ、当初の目論見通りに二酸化炭素削減を達成できていて、この調子でいくと長期目標を無理なくクリアできそうですが、その正確な試算は、どのような人(研究者)がどのようなシミュレーションで算出しているのでしょうか。

国の研究機関の研究者が試算しています。シミュレーションの詳細は、以下のURLでご確認下さい。

https://www.energy-charts.de/index.htm

3.ドイツの電力料金について知りたいです。1kWhあたりいくらくらいですか?北電は30円くらい? ドイツの太陽光は、いくらくらいまで下がっているのでしょうか。

40円程度/kWh (2014)だそうです。北電の場合は、30円くらいですね。再エネの付加金は、ドイツ:8.3円/kWh、日本:1.6円/kWh (2015)だそうです。

4.ドイツでは、個人で電力施設をつくる取り組みが盛んということですが、ドイツの人はお金持ちということですか?

お金のあるなしではなく、投資への積極性として理解できます。投資回収が10年程度であれば、貯金ではなく再エネ施設に投資したいと考えるようです。

5.FITによって酪農家をはじめとする個人に再エネ・売電が進んだが、電力価格の上昇に伴い、買い取り価格が引き下げられ、再エネの投資分を回収できずに経営が悪化している酪農家等が増えているとの話を聞くが、実際はどうなのでしょうか。

酪農家、林業関係者ともに、無理な投資が経営を圧迫している話は聞きます。売電収入に過度に注目した結果、燃料を外から購入する体勢になることが問題のようです。バイオマス利用の前提は、厄介者であったり未利用であったバイオマスを利用することです。地域外から購入する方法は成り立ちません。そもそも地域に存在する燃料よりも多くのエネルギーをつくり出すことはできないのですから。また、電気と熱のコージェネが重要です。

6.ドイツでは、住民合意をどうやってつくりあげたのですか?経済界の反対にどうやって説得できたのでしょうか。

基本的には、有志による地道で建設的な活動によるそうです。草の根による省エネの拡大とエネルギーに関する知識の啓蒙、市民レベルの共感の拡大、市民エネルギー会社の立ち上げなど、目指すべき方向へ着実に情熱をもって進んで行ったとのことです。最後には、経済界の反対を押し切るだけの力を市民組織が獲得したということなのでしょう。反対者との合意は基本的にはないようです。ただ、本当に良いものであれば、変化が起こった後に賛同が得られるかもしれません。

7.ドイツで自然エネルギー自給率が高くなることができたのは、何が一番のキーですか? やっぱり人々の意識でしょうか?

段階があるようです。初期は、町から見える原発やチェルノブイリ事故からの反原発運動、その後はエネルギー自立による経済的メリット、そして現在は豊かな社会へ不可欠であるという確信だと思われます。その意味では人々の意識と言えるでしょうか。しかし、日本的な”我慢と頑張り”でもないようです。あくまで戦略的かつ合理的に行動する力のようです。

(北海道について)

1.北海道のエネルギー自立に向いているエネルギー資源は何ですか?

水力、風力(日本海側)、太陽光(南側)、バイオマス、海洋水力、温泉熱などです。

2.国内で自然エネルギーを多く活用している地域はどこですか? 北海道は日本の中で進んでいるほうなのでしょうか。

岡山県(バイオマス)、高知県(風力)、屋久島(水力)など、活用を進めている地域は多数あります。北海道でも、下川町、鹿追町など特徴のある取り組みが見られます。

3.道内の一次エネルギーの何割くらいが、木質バイオマスで持続的に充当できるのでしょうか。

道内の森林が利用できていない現状では、1%も充当できないのではないでしょうか?人工林での林業を再構築し、木材のカスケード利用を徹底した後、残渣を燃料に利用することで、どれくらいになるのでしょうか?その答えが、将来分かるといいですね。

4.酒井さんが、今回のレポートを一番聞いてほしいと思う方(機関)はどなたですか? 北海道のエネルギー自立ぜひ進めたいと思っています。

道民のみなさんに聞いて頂きたいです。それぞれの立場でできることが違うからです。市民レベルでは節電や断熱性向上、企業は省エネ・高断熱商品の普及、行政や金融機関は10年・20年先へ向けた施設の導入を考えて欲しいです。そもそも、合理的な戦略をたてることが重要と言うことを全ての人に聞いて欲しいです。

(日本について)

1.日本では原発を使って大規模に水素を生産することが計画されているとききました。水素の活用を、原発でなく自然エネルギーの推進につなげていくためには、どんなことが必要でしょうか。

エネルギーに対する考え方です。日本では、経済の拡大を念頭に消費の拡大を目指す傾向があります。水素もたくさん作ってたくさん使う方向に考えられています。自然エネルギーの推進には、ムダを減らし消費を削減する考え方が必要です。自然エネルギー量には限りがあるためです。自然エネルギーの推進は、経済の拡大とは相反することかもしれませんし、豊かな社会の実現には重要な鍵なのかもしれません。エネルギー消費量を経済的豊かさの前提にしないことが肝要です。技術的には、再エネの余剰電力の貯蓄に使う方法は良いと思います。

2.日本で自然エネルギーの自給率を高めるため必要なのは、どんな改革でしょうか?

残念ながら、私個人の明快な答えはもっておりません。また、正解はないのかもしれません。地域によって、世代によって適切な改革は異なるかもしれません。ただし、確実なのは改革の手法を常に考え、勇気をもって試し、継続または変更する。その積み重ねであると思われます。ヨーロッパで語られるのは、「アメとムチとタンバリン」です。アメ:補助金や融資制度、ムチ:条例や規制、タンバリン:キャンペーンやコンペ。これらを一貫性をもって行っています。

3.日本でコージェネプラントを設置しているところはあるのでしょうか。

身近なのは、ガス会社さんの進める「エネファーム」です。これは、各家庭に設置されます。ちなみに、水素を使う燃料電池が使われています。六本木ヒルズを始めとする大型ビルには、内燃機関型の施設が設置されているようです。今回、ご紹介したようなコージェネ施設は、例えば、能代バイオ発電所 、気仙沼バイオマス発電所などだそうです。

(その他)

1.地域エネルギーへシフトするにあたり、交流給電から直流給電へ変えた方が有利なのではありませんか。

どちらとも言えない状況らしく、システム全体の損失を考慮し決める必要ありますが、直流・交流の変換が少ないことも重要です。

2.技術の進歩とともに、より二酸化炭素削減効率の高い方法も開発されつつあると思いますが、その場合は積極的に新技術をトップダウンで取り入れているのですか?

再エネ施設の導入はトップダウンではなく、住民出資者の選択によります。出資者と新技術とを結びつけるのが技術に強いNPOの仕事だそうです。