永森彩奈(2016年度本科/学生)
プロジェクトマネジメントとは、何らかの活動(プロジェクト)を成功に導くまでの一連のプロセスのことをいいます。9月10日(土)の講義では、河瀬誠先生(MK&Associates代表)を講師に迎え、「プロジェクトマネジメントの基本的な考え方」と題し、ともすると困難な局面に陥りがちなプロジェクトマネジメントについて、分りやすく噛み砕いてお話していただきました。
最初が忙しいほうがいい
プロジェクトマネジメントを行うにあたって大切なのはプロジェクトの最初の段階で、前提となる事柄を明確にしておくことです。何をいつまでにどこまでやるのかをプロジェクトメンバーと共有し、チームにおける意思決定のルールや、利害関係者との調整・報告などの共通ルールを決めておくと、後々のトラブルを減少させることができます。この時に気をつけるポイントはプロジェクトの初期段階が忙しくなるようにスケジュール設定をすることです。多くのプロジェクトが“火を噴く”のは初期段階をゆるくし、締め切り間際がタイトになるように設定しているからです。プロジェクトのトラブルというのは締め切りの手前で頻発するもの。一旦、対立が起こってからのルール決めは火に油を注ぎかねません。最初にプロジェクトのルール決めを適切に行い、ゴールまでのプロセスをできる限り洗い出しておくと、余裕をもって進行管理ができるようになります。
人件費が最大のコスト
河瀬先生のお話で強く印象に残ったのは、「どの仕事に何人を何時間投入するか」という人件費に対する言葉でした。人件費はどのプロジェクトでも共通して発生するコストであり、プロジェクトマネジメントを行う上では常に意識するべきものであるということが分かりました。それは例え、サークルやボランティア活動のような、一見すると無償に見えるプロジェクトであっても、人件費はかかっています。こういった活動をしている人たちは交通費や食費といったコストを自分たちで負担しています。無償に見えるからといって、いつまでも無為に拘束されるような活動はプロジェクトマネジメントの観点でいえば、NGといえるでしょう。
リスクマネジメント
普段よく使われる「リスク」という言葉ですが、プロジェクトマネジメントでは「ある事象が今後起こる可能性」と「プロジェクトに与える負の影響」との積のことをいいます。リスクは未然に防ぐに越したことはありませんが、起きてしまった時は経験者の知恵を借り、メンバー同士でリスクを可視化して共有し、整理する必要があります。リスクをプロジェクトマネージャーが一人で抱え込み始めると、状況はさらに悪化します。普段であれば、気付けたリスクも気付けなくなってしまい、マネジメントどころではなくなってしまうからです。プロジェクトマネージャーはメンバーが動きやすくなれる環境を設定して、あとは何もしないくらいの意気込みがよいとのことでした。
仮説思考型の運営を
プロジェクトマネージャーの役割は、以上の要素を踏まえて、全体の世話役としてバランスをとっていくことであり、その意味では経営者に近いといえます。マネジメントに正解はありません。だからこそ、当面の仮説を設定し、プロジェクトを運営していく上でどんどん修正を加えていくという仮説思考型で進める必要があります。仮説思考型で組織を円滑に回しながら、プロジェクトマネージャーの役割を経験し、やがて新たな地平に組織を導く「リーダー」に脱皮していくことが今後は期待されている、という言葉で講義は締めくくられました。
CoSTEPのサイエンス・カフェ札幌や、私が所属しているWebデザイン実習で実施する札幌デザインウィークなどのプロジェクトを進める際に、河瀬先生の講義内容を思い返して、成功への道筋を見つけていきたいと思いました。
河瀬先生、ありがとうございました。