2017年8月6日(日)に、北海道大学 教育学研究院 准教授の保延光一さんと振付師のチョン・ドンヨンさんをゲストにお招きし、第95回サイエンス・カフェ札幌「私たちはなぜ踊るのか?盆踊りでつなぐ今と昔、心と体?」を開催しました。
(ゲストの保延光一さん)
8月5日に札幌では、札幌国際芸術祭2017が開催され、アートを楽しむ催しや展示が多く開催されます。今回のサイエンス・カフェ札幌は、札幌国際芸術祭2017との連携し、学問とアートが出会う場としてデザインされました。研究者である保延さんと、アーティストであるチョンさんと共に、私たちはなぜ踊るのか、という問いに迫ります。
(左から聞き手の朴炫貞さん、ゲストのチョン・ヨンドゥさん、保延光一さん)
今回、保延さんが撮影した盆踊りの調査映像を流しながら、盆踊りについて詳しくお伺いしました。
盆踊りの起源は、念仏を唱える代わりに踊ることで祈る、「踊り念仏」にまでさかのぼります。室町時代には、踊り念仏が各地の信仰や風習と結びつき、仏教的な念仏という意味を超えて、祈るための踊り、「念仏踊り」へと変化していきました。念仏踊りになると、踊り自体も華やかになり、踊る際の楽器や小物も地域ごとに多様性が生まれました。
そして、江戸時代、これまで限られた踊り手しか踊っていなかった念仏踊りが、町中で踊る「盆踊り」へと変化しました。保延さんお気に入りの「新野踊り」は、町の古来からある神送りの儀式に、盆踊りが融合してできたものです。盆踊りには町の文化や歴史が凝縮しているのです。
(モニターでは踊りの様子が映されています。)
保延さんの盆踊りの話を受けて、チョンさんはコンテンポラリーダンスについて語りました。チョンさんによると、神に対する祈りから、人間のために踊るようになったのが現代の踊りです。社会批判や人間の営みなど、コンテンポラリーダンスは様々な感情を踊りに昇華させていきます。
(自身が振り付けした作品をバックに語るチョンさん。)
第二部のフロアからの質問に答える際には、日韓の踊りの違いから、札幌のよさこいまで、幅広い質問が寄せられました。例えば、手話と踊りについて聞かれた際、チョンさんは言語より先に動きがコミュニケーションの手段としてはあったのではないかと語ります。また、保延さんには、踊る場合と踊りを見ている場合の違いについての質問がありました。実は踊りを見ているだけでも、踊る際に活性化する脳の部分が活性化するそうで、踊りを見ている時であっても私たちの脳は踊っている状態なのかもしれません。
(会場から多くの質問が寄せられました。)
私たちはなぜ踊るのか?
保延さんは、生と死が今よりもっと身近だった時代において、踊りは祈りの表現であった、と語りました。そしてチョンさんは、踊ることで私たちの中にある人間らしさを取り戻す、と答えました。さてあなたなら、どのような答を用意しますか?