実践+発信

2017年度ライティング編集実習の成果紹介(3)「記憶の部屋」

2018.3.31

岩崎祥太郎(2017年度 本科 ライティング・編集実習/学生)

2017年度ライティング・編集実習の成果紹介、三つ目はメディアデザイン実習と協働した「記憶の部屋」です。普段見ることのできない研究者の部屋、人柄に関連するアイテム、それらの中に隠された研究者の思考や知識…VRの技術を使って空間をまるごと、研究者の記憶として記録しました。ライティング・編集実習メンバーは、そのアイテムの説明文を手がけました。100年後に残ることを想像しながら進めてきた思いと共に、プロジェクトの取り組みを紹介していきます。

まずは2つの実習メンバーが一堂に集まり、「頭の中を覗いてみたい研究者」をメンバーがそれぞれ取り上げて、発表し合うところからプロジェクトは始まりました。

(合同実習での話し合い)

部屋やアイテムなど映像として残すおもしろさ、研究室や研究内容の歴史性・特異性などの指標をもとに議論を重ねた結果、補者の中から選ばれたのは、武田雅哉さんと曾根輝雄さんです。上記の指標に加え、周りの人に慕われている人柄も大きな要因となりました。

(左:武田雅哉さん 右:曾根輝雄さん)

作成に先立って、記憶の部屋のイメージを掴むべく、事例調査としてレトロスペース坂会館へ見学に行きました。館内には、日用品や雑誌、ポスター、人形、ありとあらゆるものがところ狭しと飾られています。アイテムの作り出す空間には、何か人を魅了する力があり、ふと懐かしい品を見つけて思い出に浸っていると、あっという間に時間が過ぎていました。訪れた人が、アイテムに自分の物語を重ねることで、ひとりひとりの記憶の部屋がここに眠っているのではないかと思いました。

(左:館長の坂一敬さんにお話を聞いてる様子 右:懐かしいアイテムを見つけて足を止めてる様子)

坂会館での感動を胸に、2班に分かれて武田さんと曾根さんのもとへ取材に行きました。取材は2回に分けて行い、1回目はインタビューを中心に、研究に関することから趣味趣向についてまで、幅広く話を聞きました。同時に部屋を案内してもらいながら、記憶の部屋に残したいと思うアイテムを探していきます。「どれだけ研究者の頭の中を覗き込めるか」、これこそが記憶の部屋のコンテンツの魅力を決めるポイントであり、それがこのアイテム探しではないかと感じています。2回目では、それらのアイテムに関するエピソードをひとつひとつ細かく聞きながら、記憶の部屋全体のイメージを固めていきます。

アイテムやVR用の写真は、プロのカメラマンお二人に撮影を依頼しました。アイテムは、北海道大学経済学部出身で在学中の頃からカメラマンとしてご活躍の中村健太さん。VRは、数多くのパノラマ写真をアーカイブしているWebサイト「パノラマジャーニー」も運営されているパノラマ写真家の横谷恵二さん。質の高いコンテンツを作ることはもちろん、プロの撮影現場を間近で見るという学びも、重要な目的です。

(左:武田さんの自宅への取材風景 右:曾根さんの研究室への取材風景)

メディアデザイン実習班がVR画像を作成している間に、ライティング・編集実習班はアイテムの説明文を書いていきます。たくさん見つけたアイテムの中から、VR画像内のアイテム配置のバランス、アイテムに関するエピソード、アイテムと研究者との関連性などを吟味して、掲載するものを選別しました。限られた文字数の中、アイテムの紹介を通じていかに研究者の世界観を表現できるかが、ライティングの腕の見せ所です。本人が話した言葉や表現を大切にして、人柄が伝わるような文章を意識して書きました。完成した説明文は、VR画像の中に組み込まれ、VRコンテンツの完成となります。

また、VRアイテム用の文章と並行して、二人のインタビューを「いいね!Hokudai」クローズアップ用の記事としてまとめ、掲載しました。(※成果紹介(1)~「いいね!Hokudai」~参照)

(左:曾根さんのアイテム紹介 右:武田さんのアイテム紹介)

完成したVRは、CoSTEPウェブサイトにて公開しました。

  武田さん:怪物の部屋

  曾根さん:菌楽の部屋

また実際に手にとって体験していただけるよう、北大札幌キャンパス正門横の「エルムの森」にて、特別展示会も開催しました。来場者には、VR用グラスを装着して武田さんと曾根さんの記憶の部屋をのぞいてもらいました。実習メンバーは、展示の概要説明や来場者からの質問に答えるなど、展示スペースでの解説員として直接市民とコミュニケーションを行い、その反応からも多くの気づきを得ることができました。


虎の巻について紹介します。