秋田郁美(2018年度 本科/学生)
CoSTEP10期選科Aの修了生でもある、種村剛先生(CoSTEP特任講師)。私を含めた講義室の受講生だけでなく、e-learningで講義を視聴する選科生に対しても向けられた工夫や気配りが印象的でした。種村先生を通して遠くにいる選科生の仲間たちを感じ、講義室内がいつもよりも広く、賑やかなような気がする楽しい講義でした。
第14期CoSTEPの講義のうち1/3が終了しました!
「まず始めに、みなさんに悲しいお知らせがございます…実はCoSTEPの講義は1/3が終わってしまいました。」開始の挨拶に続く種村先生の一言に、講義室内にはざわめきが広がりました。開講式から早3ヶ月、充実した時間はあっという間に過ぎていきます。「そんなみなさんに朗報です。まだ2/3が残っていますね!」そう、私達にはまだ残された時間があります。科学技術コミュニケーションの勉強をもっと深めながら好きになっていくにはどうすればいいでしょうか?その鍵となるであろう「学び方」についての講義が始まりました。
なぜ今「学び方」を学ぶのか?
学びの実践例として、種村先生の受講生時代の取り組みを紹介頂いた後、改めて今日のテーマである「学び方」について考えました。受講生の多くは受験勉強や資格試験の経験があり「学ぶ」ことにずっと取り組んできたと言えます。そんな私たちが、なぜ今「学び方」について学ぶのでしょうか。
その理由は学びの種類にあります。「学び」は大きく二つに分けることができる、と種村先生は言います。私たちが経験してきた「学び」の多くは試験や修了の「手段としての学び」です。そしてもう一つは語学や楽器、教養、研究活動などのように、終わりのない「自分自身の成長や変化としての学び」です。科学技術コミュニケーションについて学びには「手段としての学び方」では不十分であり「自己成長としての学び方」が必要とのことでした。そして「学び方」は「教え方」や「伝え方」にも深く関わります。これが科学技術コミュニケーターを目指す私達が、いま改めて「学び方」を学ぶ理由でした。
「学ぶ」とはどういうことか?「説明」できるようになろう
なるほど、科学技術コミュニケーションのために学び方を学ぶことの大切さはわかりました。ではそもそも「学ぶ」とはどういうことでしょうか。「学ぶ」ことの何を示せば「説明」したことになるのでしょうか。そこで種村先生から示されたのが、「説明」の三要素「構造・機能・原因による説明」です。
「学び」は「発問―応答―評価」の連鎖という構造を持っています。特にこの連鎖が双方向的な優れたコミュニケーションとなるには、誰が「発問」すなわち「問い」を発するかのデザインが非常に重要とのことでした。
また学びの機能は、なぜ学ぶのかという「目的」と、目的に到達するためにこんなことが出来たらいいな!という「目標」から説明されます。目標は、「知識・技能・態度」という学び方の三要素に集約され、シラバスに掲げられた本講義の達成目標も、学び方の三要素に対応するように設計されていました。
学び方の三要素「知識・技能・態度」をフレームワークとして使いこなす
学び方を三要素からなるフレームワークとして捉えることで、どんな効果があるのでしょうか。ひとつには学びを「メタ認知」するため、すなわち「いま何を学んでいるのか」を斜め上の視点から観察するためと言えます。講義に先立って、種村先生は受講生から質問・意見を募集されていました。その中から「講義を聞いた後に自分でさらに勉強する必要性を感じるため、講義で自分が何を学べたのかあまり実感できない」という意見を紹介され、私も「わかるー!!」と思わず心の声を上げてしまいました。受講生本人の視点からすると、学びの実感が得られず困っているという状況です。しかし、これを一段上の目線からメタ認知してみるとどうでしょうか。この状況を学び方の三要素と照らし合わせれば、「科学技術コミュニケーションの学びに終わりはないようだから、もっと学んでいかなきゃ!」という態度を学んでいるのです。本人目線では停滞しているように見えても、メタ視点から見ればきちんと前に進んでいる。学び方の三要素のフレームワークがもたらすメタ認知は、私たちの終わりなき学びの旅において羅針盤の役割を果たしてくれるように思いました。
さらに学び方を三要素のフレームワークで構造化することは、教え方のデザインにも応用することができるとのことでした。まさに、それが科学を伝えるための軸になる枠組みであることを、北大名物講義「蛙学への招待」の講義デザイン、そして、NINTENDO LABOにみる「学び方」の構造を例に解説していただきました。
「勉強とは作ることだ」―自分アウトプットのススメ
講義中、「自分ごと」「自分のことに引きつける」という言葉が何度も登場し、具体例の多くは種村先生ご自身の経験や関心に基づくものでした。そしてこの「自分ごとに引きつける」の最終形が、講義の最終部で登場した「自分アウトプット」。自分アウトプットとは誰に頼まれたわけでもなく、自分の学びを、自分で体系立てて、自分の言葉でアウトプットを作り上げることです。例えば種村先生は論文や原稿の執筆に加えて、自分による自分のための「自分アウトプット」として10年以上に渡るご自身の活動ポートフォリオをwebページにまとめています。種村先生はwebサイトを紹介するときに「見ると、ちょっと怖いと感じると思います。」とおっしゃっていましたが、自分の成長としての終わらない学びを続ける人自身にとって、自分アウトプットは大事な宝物なのだと思います。
科学技術コミュニケーターとメタ認知
これまでの講義で度々登場した「構造化」「枠組み」「軸」「デザイン」「設計」「ストーリー」などのキーワード。これらは全て「メタ認知」に基づくという共通の性質を持っています。つまりどのような立場からみても、科学技術コミュニケーターにとって「メタ認知」が重要であることは繰り返し示されてきました。一方で伝えるプロである科学技術コミュニケーターは、伝えたい内容や相手を仔細に分析することも求められます。そのような視点の切り替えはどのように身につくのか。本講義を通して示された一つの道が「自分アウトプット」であったように感じました。私もずっと続けられるような自分アウトプット、考えてみたいと思います。種村先生、ありがとうございました。