実践+発信

札幌クリエイティブコンペティション“No Maps2018”出展企画「アニマルめがねラボ 〜VR生き物の視覚を考えよう〜」を開催しました

2019.3.1

2018年10月14日(日)にメディアデザイン実習は、札幌市円山動物園にて小学3年生から中学3年生までの子どもを対象に360度のバーチャルリアリティ(以下、VR)の技術を用いたサイエンスワークショップ「アニマルめがねラボ ~VRで生き物の視覚を考えよう~」を開催しました。本ワークショップの目的は多様性に富む生き物の視覚について、VRで体験しながら考えてもらうことで、映画・音楽・インタラクティブ分野がクロスする札幌クリエイティブコンベンション“No Maps2018”に出展するために企画されました。

(*VRゴーグルの使用に関しては、ロケーションベースVR協会のガイドラインに沿って年齢設定しています。)

アニマルめがねラボは、生き物の視覚特性を参考にした、めがねを開発している架空の研究所です。子どもたちにはラボを見学するツアーの形で、「イヌとネコの色覚」、「カメの視力」、「ヤモリとカエルの動体視力」の3つのブースを回ってもらいました。ブースでは研究員を務める受講生が問題を出します。子どもたちは事前に配布された研究レポートにシールを貼りながら、問題に回答していきます。

5ヶ月間の準備期間

サイエンスワークショップのアウトラインは「アイデアしりとり」から生まれました。アイデアしりとりは玩具メーカーのバンダイで、「∞(むげん)プチプチ」を大ヒットさせた高橋晋平さんが考案した発想法です。時間を決めて、自由にしりとりをしたあと、出できたワードを組み合わせていくものです。

(アイデアしりとりをするメンバー)

VRコンテンツの撮影と編集

メディアデザイン実習メンバーの友人やCoSTEPの受講生を頼りに札幌中を飛び回り、視力、色覚、動体視力を表現するための撮影を行いました。使用したカメラはGoPro FUSIONです。動画編集にはAdobe Premiere Pro CCを用いました。VRカメラと編集ソフトを使用したことはなかったため、初歩的な操作から覚えました。

(VRコンテンツの編集作業)

ステークホルダーとの打ち合わせ

No Mapsの運営にたずさわっているクリプトン・フューチャー・メディア株式会社や、ワークショップの開催場所となる札幌市円山動物園、制作物の監修をお願いした水波誠さん(北海道大学 大学院理学研究院 生物科学部門 行動神経生物学分野 教授)とそれぞれ打ち合わせを行いました。企画のコンセプトを説明をし、ワークショップ当日の整列の仕方や、視覚を扱うことへの注意など多くの意見をいただいて、完成度を高めていきました。

(クリプトン・フューチャー・メディアで企画のプレゼン)

(監修の水波誠さん)

ポスターデザインと広報

ポスターやフライヤーのデザインは北村春菜が中心となり、メインビジュアルからコピーライトまで、全て自分たちで仕上げました。デザインワークの過程で、多くの方の意見をもらった結果、ワークショップのコンセプトに合致するビジュアルになったのではないかと思います。また、会場の円山動物園周辺の小学校に出かけ、フライヤーを配布しました。保護者の方から「チラシがかわいかったので部屋に飾っています」というお褒めの言葉をいただく機会があり、開催に向けて自信を深めることができました。

(ポスターデザインの変遷。④が完成稿)

ワークショップ当日

さあ、当日がやってきました。事前にフライヤーを配布したり、園内アナウンスをかけてもらったこともあり、開場の1時間前から行列ができました。ワークショップの冒頭では、北海道大学CoSTEPやサイエンスコミュニケーションについての解説を行い、ワークショップのコンセプトやVRを体験する際の注意事項についても説明しました。

(受付に並ぶ、親子連れ)

(園内の家族連れに呼び込みも行いました)

(ワークショップ冒頭では、集まってくれた子どもたちにコンセプトを解説しました)

(VRコンテンツを体験したら、配布資料の“研究レポート”にシールを貼ってクイズに答えてもらいます)

動体視力

子どもたちは3つのチームに分かれて、引率のスタッフと一緒に動体視力、色覚、視力の各ブースを順番に回ります。動体視力のブースではメジャーリーガーの大谷翔平選手が投げるボールのスピードを例に、動体視力を説明しました。

(動体視力のブースで解説を行う山本将隆)

色覚

色覚のブースでは、生き物の目は光の波長の違いを色として認識していることを解説しました。人間は光の波長を3つのピークを中心にして見分けています。一方、イヌやネコの色覚は2つで、色の見分け方が人間と異なると考えられています。解説の最後には、盲導犬や介助犬が使用する道具について取り上げ、イヌの色覚に配慮したデザインについて紹介しました。

(色覚のブースで解説を行う春日遥)

視力

視力のブースでは生き物の視力の測り方や、生き物の体の大きさと視力のよさが、一部関係していることなどを説明しました。暗いところで生活しているコウモリやモグラの視力は、あまりよくないと考えられています。そのかわり聴力や嗅覚はとても発達しており、視力の低さを補って生活しているそうです。

(視力のブースで解説を行う大橋真智子)

VRコンテンツで生き物の視覚を体験

各ブースで視覚についての説明を受け、いよいよ生き物の視覚をVRコンテンツで体験します。この時、VRに夢中になってケガをしないよう、子どもたちの側でスタッフは注意深く見守りました。子どもが楽しんでいる間、スタッフは積極的に話しかけ、生き物の視覚について理解が深まるように心がけました。「どんな生き物が見える?」などの問いかけに子どもたちはしっかりと受け答えを行っていました。研究レポートは、完成させられそうかな?

アンケートの記入

ワークショップの最後、子どもたちにアンケートを書いてもらいました。難しい漢字にふりがなをふる工夫をしたり、スムーズな誘導に配慮したりした結果、回収率100%を達成することができました。「楽しかった」「生き物は人間と違う見え方しているのは知らなかった」など、狙い通りの嬉しい回答が多くありました。

(アンケートに答える子どもたち)

ワークショップをふりかえって

ワークショップを開催するために、5ヶ月間もの時間を費やして準備をしてきました。関係者のみなさんの協力のおかげもあり、無事に終えることができました。本当にありがとうございました。

場所選びからワークショップの内容、デザインにいたるまで全てを自分たちで行ってきましたが、サイエンスコミュニケーションを実践する上で最も難しいと感じたのは、調整する力だったように感じます。ステークホルダーを納得させるには様々な材料が必要でした。また、自分たちのやりたいことと、出来ることを一致させるにはどうしたらよいかを考える力も必要でした。

アンケート結果を確認すると、私たちの目標であった生き物の視覚が多様性に富んでいることを考えるきっかけは作れていたのではないかと思います。「他の動物の見え方がどうなっているのか、詳しく知りたい」といった言葉を引き出せたのはそれを端的に示していました。

アニマルめがねラボシリーズはまだ終わりではありません。2018年内にあと2回実施する予定です。今回の反省点を活かして、さらによいものに仕上げたいと思います。

(運営スタッフ全員で記念撮影)


(最後に全天球の記念撮影も行いました)