実践+発信

科学技術コミュニケーション実践を通した「言葉」再獲得

2019.3.29

CoSTEPそして「科学技術コミュニケーション」という言葉に出会ったのは、工学院の入学ガイダンス。「もう博士課程なんだし研究に専念するべきか? でも色んな人がいて面白そう……」と散々悩んだ末、応募することに決めました。

新しい言葉との出会い

CoSTEPでは、哲学、ジャーナリズム、デザイン、アート、倫理、教育など、実に様々な分野の第一線で活躍する方々による講義があり、科学技術コミュニケーションに取り組む上でエッセンスとなる未知の言葉たちに、1年間という短い時間でぎゅっと濃縮して触れられます。

また他の受講生たちも、年齢や身分もさることながら、興味もやってきたことも全然違うとあって、話しているだけで、大学院で学んでいるだけでは得られない、新しい言葉との出会いがありました。

当たり前になっていた言葉と向き合う

実習では、自分が使いこなせてると思っていた言葉が案外通じなくて苦戦したことが印象深いです。当たり前に使って来た言葉を、信頼できる仲間と具体的な実践に挑戦する中で再び獲得すること。これは本やパソコンと向き合うだけでは得られない貴重な経験でした。

 

私は対話の場の創造実習に所属していました。この実習では先生方の助けを借りながら、受講生自身が、対話イベントのテーマ決めから、企画、運営、評価まで行います。例えば、イベントの一つ、サイエンス・カフェ札幌を企画するとき、私がまず考えたのは「わかりやすく伝えたい」ということでした。メンバー全員、同じ気持ちがあったと思います。ところが具体的に準備を進めようとすると、噛み合わないことがある。あるいは専門用語をわかりやすく説明したつもりなのに、仲間にすら伝わってないようだぞ、ということがある。

――あれ? 「わかる」とか「伝える」って、そもそもどういうことだっけ?

このように、既に自分のものだと思っていた言葉がグラグラと揺らぐ場面が数え切れないほどありました。そしてCoSTEPでの1年間では、科学技術コミュニケーションの「実践」を通して言葉を捉え直していきました。具体的には、イベントの目的、つまり「誰に何を伝えたいのか、それはなぜなのか」について何度も議論を重ね、取り上げる科学技術の社会的価値・役割を吟味する過程で、少しずつ言葉がすり合わされていくことを体感しました。

 

なぜ実践を通すことが重要なのか

それは、言葉の指す内容は立場や状況によって常に変化し、科学技術コミュニケーターにはその変化に機敏に応じる能力が必要だから、そして、この能力は実践を通してしか鍛えられないからだと考えています。CoSTEPでの1年を経てパワーアップした言葉とともに、これからも周りを巻き込みながら実践を続けていきたいと思います。

そしてもし博士課程であることを理由に受講を迷っている方がいれば、思いっきり背中を押したい! 有り余るほどの新鮮な楽しさと、新しい発見に出会えると思います!

秋田 郁美 (本科・対話の場の創造実習)

北海道大学大学院工学院博士後期課程1年