普段私は、教育社会学という、「科学技術コミュニケーション」とほとんど関わりのない分野を学んでいる。そんな私がCoSTEPの受講を決めたのは、意外にもコロナだったかもしれない。感染拡大によって留学への希望が閉ざされていた矢先、友人に誘われ、いわばノリと勢いで申し込んだ。文系で、しかもコロナ禍で、ちゃんとした学びが得られるかどうか心配している人はいるかもしれない。私もその一人だった。しかし、振り返ってみれば、CoSTEPがなければ2020年は本当に空白な一年だったと言わざるを得ないくらい新たな学びや気づきがあった。
私はライティング・編集実習において、「書く」ということを中心に学んできた。主にやったことは、書評、突撃取材、研究者インタビューの3つで、いずれも完成した記事はCoSTEPの公式サイトや「いいね!Hokudai」のウェブサイトにて公開されている。「書く」という行為自体は、授業のレポートを通して何度もやってきた。だから、私にとっては、「書く」ことはそこまで遠いものではなかった。しかし、CoSTEPにおけるライティングは、必ずしも前提知識を共有していない読者に向けて書くもので、常に「他者」、そして書き手としての「私」の視点や責任を意識しなければならないという点で全く新しい経験であった。難しい作業に見えるかもしれないが、決して一人で行うわけではないし、誰も最初から完璧な作品を作れるわけでもない。完成品の裏では、他の実習生や先生方からのアドバイス、修正が何度も行われている。様々なものに影響されつつ、ああでもない、こうでもないともがきながら、一つの作品がだんだんと「構築」されていく「社会的」な過程を体感できるだろう。
実習のほかにも、CoSTEPの魅力は、様々なバックグラウンドを持つ方の講義を受ける機会に恵まれている点にもある。講義を聴く中で、今まであまり関係ないと思っていた私の専攻分野と、科学との繋がりを見出すことができた。例えば、社会学は新たな技術を生み出す分野ではないため、科学者や専門家が生み出した科学技術や科学的な知見を一般市民に普及させるという面では確かに用無しかもしれない。一方で、科学技術によって何らかの被害を被ったり、科学的な知見を受け入れない人々の声を排除するのではなく、それらに耳を傾けて理解しようとする取り組みはまさに社会学の役割でもある。これは、CoSTEPを受講したからこそ得られた気づきであった。
最後に、今年度はコロナの影響でオンラインでの受講がメインであったが、感染状況を踏まえながら対面での実習も何度か行った。普段は画面越しでしか顔をそろえることができなかった分、実際に会えた時に覚えた何とも言えない新鮮な感覚は今でも忘れられない。オンラインで仲良くなるのは難しいと心配している方もいるかもしれないが、ライティング班は、ピアレビューやミーティングを繰り返しているうちに、最終的には一緒に旅行に行くほど仲良くなれた。
長くなってしまったが、科学にあまり関係のない分野の方でも、コロナ禍でも、CoSTEPは開かれた場所である。ぜひ挑戦してみてほしい。
寺本えりか(本科:ライティング・編集実習)
北海道大学文学部社会学研究室