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「オンライン学び合う場のつくりかた対話と協同の場づくり〜 」(9/11) 杉森 公一 先生 講義レポート

2021.10.29

「オンラインで学び合う場のつくりかた〜対話と協同の場づくり〜 」(9/11) 杉森 公一 先生 講義レポート

山之内海映(2021年度 本科 / 学生)

はじめに

COVID-19の流行が始まって1年半が経過しました。生活の変化とともに学びの場も大きく変化し、授業や科学技術コミュニケーションに関わる活動もオンラインで行われることが多くなりました。数年前に比べると主催者も参加者も慣れてきたとはいえ、“オンラインでは一方通行になってしまう”や“コミュニケーションをとることが難しい”という声をよく耳にします。オンラインで学び合う場を作るためにはどうしたらよいのでしょうか。北陸大学高等教育推進センターのセンター長・教授である杉森公一先生にお話しいただきました。

学ぶ授業

そもそも、学び合う場とはどのような場なのでしょうか。“教師が何を伝えたか?”ではなく、“学生が何を身に付けたか?”という学習者主体となった授業が「学ぶ」授業です。今までの日本では一方的な講義形式の授業が中心でしたが、近年、アクティブラーニングという授業方法が注目されており、教員主体の授業から学習者主体の授業へと価値転換が行われようとしています。このような「学ぶ」授業を実現するためには、参加者が自分はここにいてもいいのだと感じられ、主体的に学習できる授業にすることが重要です。特にオンラインでは参加者同士の顔が見えないことも多く、1人だと感じることも多くなってしまいます。今回の講義では、オンラインでも「学び合う場」を実現するためのコツを教えていただきました。

オンラインの授業形態

オンラインといっても形態は様々であり、大きくは同期型、非同期型、ハイブリッド型に分けられます。同期型とは、学生と教員が同時に参加するリアルタイム方式、非同期型とはオンデマンド教材などに代表される受講者が各自のペースで参加する授業です。同期と非同期、対面とオンラインを併用したものをハイブリット型といい様々な組み合わせがあります。それぞれにメリットデメリットがあり、状況や目的に応じて使い分ける必要があります。これらの手法を用いて、全員が自分の居場所があると感じられるために「意味ある場づくり」そして「参加者が置いていかれないためのファシリテーション」を行うことが重要です。

意味ある場づくり

意味ある場づくりのためには学習環境の要素を考慮する必要があります。その中で、目標を共有しその実現のために自発的に集まった人々である共同体、いわば一緒に頑張る仲間がいる環境はオンラインでも実現可能です。例えば、個別学習とプロジェクト学習を組み合わせる授業形態です。仲間と一緒に1つのプロジェクトを作り上げていく協調学習や同じテーマを追求する仲間の一員になるという共同学習などで、教室の中に学びのコミュニティを作るとも言えます。このような授業を行う際のオンラインツールの活用方法として、オンライン・対面・オンデマンドを混ぜるという方法があります。ポイントは、講義形式の情報伝達をオンラインで行い、その後クラス内で学び合いの場を設置するとハイブリッド型の形式をとることです。こうすることで参加者は仲間と共に授業内で課題に取り組むことができるため、オンライン授業にありがちな課題の過剰供給も抑止することができます。私も大学院の授業で春タームだけで60本以上のレポート課題が出て、いつの間にか動画と課題をこなすだけになっていました。このような方式の授業であれば、もっと学ぶ姿勢になれそうだと感じました。

参加者が置いていかれないためのファシリテーション

参加者が「ここにいてもいいんだ」と感じられる授業にするためには、ファシリテーションの役割も大切です。ファシリテーターはあくまでわき役なのです。参加者自身が学びを深めたり、広げたり、自分で自身の学習を作っていったりすることを促進するための支援や場づくりを行うのがファシリテーターの役割です。学ぶことや方法が全て決められている線路型でも全てを参加者に任せる放牧型でもなく、ファシリテーターは方向のみを示すガードレール型であるべきなのです。

今回の先生の授業でも様々な工夫がなされており、実際に参加者として学ぶ授業を体感することができました。例えば、チェックインとチェックアウト。少人数のチームに分かれて授業の最初と最後に画面音声ONにして話す事で自分も参加しているということを実感できました。参加者からの質問やコメントを集める方法も、チャットに入力したものを一斉に送るよーいどん方式、ぽつぽつとチャットが送られていくのを待つポップコーン方式など、様々な方法があります。出題者は7秒しか待てないが、回答者は考えるまでに最低30秒かかるというという言葉が印象的でした。実際に普段はすぐに思いつかず、ほとんどコメントなどをすることはないのですが、先生が黙ってずっと待っていてくださると安心して考えて書くことができました。

このように、今回の講義では、「オンラインでの学び合う場のつくりかた」というテーマで授業者の手法を学びながら、同時に学習者として杉森先生の講義を受けるという学習と体験が混ざったような講義でした。先生の講義は待ってくれる、ペースを合わせてくれるという安心感をもって受けることができ、まさに「自分はここにいていいのだ」と感じることのできる講義でした。自分がファシリテーターの立場になった時にも参加者の気持ちになり、居心地の良い場づくりをしたいと思います。