実践+発信

59サイエンスカフェ札幌「キセキ光る光る分子のミラクルパズル〜」当日の様子をレポートします。

2011.10.14

「キセキが光る〜光る分子のミラクルパズル〜」、これが今回のサイエンスカフェのタイトルです。北海道大学工学院の伊藤肇さんをゲストに迎え、有機化学の不思議な世界をみなさんに紹介しました。1ミリの10億分の1の大きさの「分子」を自由自在に組み合わせることができる有機化学の世界は、本当にパズルのような楽しさがあります! 伊藤さんのチームが2007年に発見した物質は、「こする」というちょっとした刺激で、分子の並び方が変わってしまうという、不思議な性質を持っています。

しかし、見えない世界をサイエンスカフェでどうやって説明するのか、私たちカフェのメンバーは難しい課題をつきつけられました。目標は、「来場者のみなさんのものの見方を変える」こと。普段ほとんど意識することはありませんが、私たちの周りの物質は分子でできています。カフェが終わる頃には、身の回りに溢れている分子について、来場者の方ひとりひとりが違う見方ができるようになってほしい、そんな思いを抱いてカフェに臨みました。

 

いよいよカフェ当日です。紀伊国屋インナーガーデンには、開場前からお客さんが集まりました。メンバーが高校に出向いてお知らせに行った効果もあり、ちらほら高校生の姿も目立ちます。降っていた雨も、開場の頃には上がり、虹も見えてきました。

 

カフェがスタートしました。ゲストの伊藤さんの登場です。動画やアニメーションを駆使し、「発光性メカノクロミズム」という変わった分子の性質について説明します。会場には立ち見の方も出るほどたくさんのお客さんが入り、皆さん集中して伊藤先生のお話に耳を傾けます。

 

会場のお客さんからも次々と伊藤さんに質問や感想が飛び出します。

分子という難しいテーマにもかかわらず、来場者のみなさんは興味津々の様子。今回は質問の時間をカフェの中に細かく取ることで、対話がはずむ工夫をしました。ユーモアを交えた伊藤さんの説明に、開場の雰囲気も徐々になごやかになっていきます。

しかし、今回の難題は、「こすって光る」ということがそんなにすごいことなのか、お客さんには実感がわかないというところ。そのすごさがわかるためには、分子とは何か、分子の構造を変えるということはどういうことか、普通はこする程度の力が分子に伝わることがないということ、さまざまな知識が必要になります。しかし、一方的な説明に終わることなく、かといって誤解を与えることがないよう、プログラム設計が重要となります。

 

休憩時間のあいだも、来場者の方は伊藤さんに積極的に質問していました。

 

さて、いよいよ後半のスタートです。

休憩時間に集まったたくさんの質問カードから、伊藤さんに質問を直接ぶつけ、会場のみなさんの「はてな」を解消します。伊藤さんも驚くほど高度な質問も飛び出しましたが、伊藤さんは丁寧に質問に答えていきます。

今回のテーマは分子というちょっと難しいものでしたが、当日は会場との一体感を感じることができるイベントとなりました。

また、私たちスタッフ側も伊藤先生との時間のなかで多くのことを学ぶことができました。

(CoSTEP2011年度本科生・藤田あさこ)