実践+発信

報告:科学技術コミュニケーション人材協働プロジェクト2022

2023.4.28

CoSTEPクリエイト基金で頂いたご支援を元に実施している科学技術コミュニケーション人材協働プロジェクト。2022年度は、先端生命科学研究院研究戦略室との学内協力の一環として実施をしました。参加をした修了生の寺田一貴さんのレポートと、研究戦略室からのコメントを掲載し、ご報告いたします。

CoSTEPは今回の実践をふまえてプロジェクトを改善し、協働先とのマッチングをしたうえで今後も継続的に実施していきます。


協働先
  • 寺田一貴(北海道大学大学院 生命科学院 生命科学専攻 生命医薬科学コース 博士課程3年(当時))
  • 先端生命科学研究院研究戦略室
5月30日の打合せの様子
活動概要:オープンキャンパスでの高校生による研究者インタビュー動画の制作
  1. CoSTEPの学内協力業務の一環として研究戦略室と寺田さんとで内容等を打合せ
  2. オープンキャンパス「体験!研究者にインタビュー」の企画・実施にあたり、研究戦略室と(株)スペースタイム(本企画のコンサル)との打ち合わせに参加
  3. 動画の絵コンテの作成を全て担当し、スペースタイムの指導及び研究戦略室の要望にすべて対応
  4. インタビューする教員との事前打ち合わせ・ロケハンに対応
  5. オープンキャンパス当日(8月8日)に、スペースタイムと協力して研究者インタビューの撮影を担当
  6. メイキング動画用の高校生へのインタビュー・撮影を寺田さんが全て担当
  7. 研究者インタビュー動画2本(芳賀教授・上原准教授)、メイキング動画1本の編集を全て寺田さんが担当し、動画修正のリクエスト(画像・音声・字幕)に全て対応
成果物
インターンシップ当日、撮影をする寺田さん(右奥)

いちメディアとして情報を編集するという行為 〜 インターンシップで見えた新たな気づき 〜

寺田一貴

皆様こんにちは。CoSTEP17期選科A修了の寺田一貴と申します。もとより科学が好きでCoSTEPの受講に至った私は、講義や集中演習を経て、科学技術コミュニケーションの魅力とその奥深さに取り憑かれました。そしてCoSTEPから動画制作のお仕事に興味がないかとお声掛けを頂いたのは、去る2022年4月。CoSTEP内外での実践の過程で、自身の得意とする動画制作・編集で科学技術コミュニケーションに貢献したいと考えていた私にとってはまたとない機会で、喜んで引き受けることにしました。

インターンシップ先は、北大先端生命科学研究院の研究戦略室。同大学院では、毎年8月に高校生を対象にオープンキャンパスをおこなっています。私に任された仕事は、その中の新企画である、高校生が研究者にインタビューする「体験!研究者にインタビュー」の様子を撮影、動画化するというものでした。制作した動画は、「インタビュー動画」2本と、高校生がインタビュー内容をアウトプットする過程を見せる「メイキング編」1本の、計3本。それぞれの動画を、研究戦略室の加藤真樹さんと徂徠裕子さんとともに作り上げていく中で、個人として動画を作るときとは異なる、複数の難しいところも見えてきました。

まず、動画の尺の問題です。各々の目標尺は、見る人が見てくれることを考えて、長くても5分。しかし、素材となる映像は全体で10時間超。長い映像を短い動画にまとめる行為は、言ってみれば情報の削り落としです。その過程で、伝え方が恣意的になってはいけないのではないか、こちら側の思うように情報操作してしまっているのではないかと、内心葛藤しながら動画を編集していました。

また、チームとして動画を制作するというのも、これまで経験した動画制作とは大きく異なる点でした。大前提として、研究戦略室の作りたいコンテンツがあって、それに合うような動画にしていく。その作りたいコンテンツ、すなわち「伝えたい情報」は、私の伝えたい情報と重なる部分もあれば、異なる部分もありました。そうした伝えたい情報を単に文字通りに盛り込むだけでいいのか、あるいは、私なりの観点も含めて動画を制作するべきなのか、そのバランスを取るのが難しく感じました。

さらに、忘れてはならないのが、このプログラムが高校生主役のものだということ。すなわち、映像の撮り方から編集の仕方まで、高校生の目線を含めることを意識する必要がありました。

このような動画制作の過程で気付いたのは、情報の切り取り方は、伝わる情報の内容に大きく影響するということです。さらに言えば、情報をうまく切り取ることで、その切り取り方も含めて伝えたいことが伝えたいように伝わる。これこそが、今回のチームとして動画を編集する行為の目指すゴールなのではないかと感じました。

このゴールを達成するために私が行ったのは、(1) 撮影前の絵コンテの共有、(2) 高校生目線での撮影、(3) 動画制作と修正の繰り返し、の三つでした。これらを通して、チームの意図した動画に近づくようにしていきました。こうした点は、個人で動画制作を行う際にはあまり意識しないところです。しかし、チームとして動画を制作するにあたっては、難しく、しかし、重要な行為となり得ます。

私は、科学技術コミュニケーションは、一人で行うというよりも、大なり小なり、チームで行なっていくものであると考えています。だからこそ、今回のインターンシップは、私にとても大きな気づきを与えてくれたと同時に、これからの科学技術コミュニケーション活動において大きな糧になることでしょう。

末筆になりますが、本活動にも関わりのある、CoSTEPクリエイト基金にご寄付頂きました皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。科学技術コミュニケーションは複雑多様で一筋縄でいくようなものではないですが、だからこそ、一生を捧げる価値のあるものであると、改めて実感することができました。誠にありがとうございました。


研究戦略室からのコメント

今回、動画の企画から編集まで、かなりの部分をお任せしてしまいましたが、こちらの抽象的な依頼や指示に柔軟に的確に対応していただいて完成度の高い動画を作成していただきましたので、寺田さんの協力無しでは今回の企画は成しえなかったと思います。

やはりCoSTEP修了生のスキルは高く、今後もこのような取り組みを継続していただけると、部局側としても大変助かります。