実践+発信

60サイエンスカフェ札幌「おしくらさいぼう、押されてなくなれ!がん細胞と正常細胞の攻防〜」様子をレポートします

2011.12.1

 記念すべき第60回サイエンス・カフェ札幌は、北海道大学遺伝子病制御研究所分子腫瘍分野教授の藤田 恭之(ふじた やすゆき)さんをゲストにお招きし、『おしくらさいぼう、押されてなくなれ!〜がん細胞と正常細胞の攻防〜』というタイトルで、「がんの社会性」についてお話しいただきました。クリスマスツリーが飾られた会場には、藤田さんのお話を楽しみにたくさんの方が開場前から集まっていました。

 藤田さんは、終始にこやかな笑顔でしたが、冒頭に、臨床医からがん研究者に転身した際のエピソードを語っているときの表情は真剣そのもの。ご自身が担当していたがん患者の青年を助けられなかったつらい経験から、もっと多くの人を救いたいという思いを強くしたそうです。

 その後、いよいよ研究の話へ。まずは、今日のお話の基本となる、がんとはなにか?というところから丁寧に説明を始めました。次に、藤田さんの研究テーマである「がんの社会性」という本題をお話いただきました。これまでの実験系ではできなかったオリジナルの手法を生み出したことによって、実験室でのがんの発生をコントロールできるようになったことが大きな成果を生み出したきっかけだといいます。がん細胞と正常細胞とが接する境界で、いったい何が起こっているのか? ドラマチックな展開のお話が続きます。専門的で難しいお話もありましたが、会場では藤田さんのお話を聞きもらすまいと、一所懸命にメモを取りながら聞いている姿がたくさん見られました。
 小休止をはさんだ後、がんの治療法への応用についての話に移りました。つい2〜3週間前に撮影されたばかりという、まさしく最先端の動画を、まるでプロレスの実況中継さながらに解説する藤田さん。「ほら、ツンツンきた!がん細胞、下に逃げた!逃げたけど、ここで首絞めがきて…」ユーモアを交えて説明する藤田さんの口調に会場も引き込まれ、笑いがこぼれます。最後には、ご自身が長く海外で研究生活を送っていらしたことから、若者にはぜひ海外に出てチャレンジしてほしい!という熱いメッセージ。同意するように、会場では多くの方がうなずいていました。 
 休憩後には、たくさんの質問が書かれたコミュニケーションカードが集まりました。藤田さんとCoSTEP受講生で代表的な質問をいくつか選びだし、藤田さんに答えていただきました。なお、当日会場でお答えできなかったご質問について、カフェ終了後に藤田さんが1枚1枚、回答を書きこんでくださいました。以下に公開してありますので、ぜひご覧になってください。
 終了間際には、スペシャルゲストとして藤田さんの研究室の助教であり、ロンドンでも一緒に研究を行っていた梶田美穂子さんに、研究室のメンバーを代表して藤田さんについてお話しいただきました。今回のカフェでは、研究のおもしろさはもちろん、がんに挑む藤田さんの情熱と魅力についても会場の方に伝えたいというのが受講生の希望でしたが、梶田さんの真っ直ぐな言葉を通して、藤田さんの情熱と魅力が会場の方々の胸にも届いたことと思います。 
 今回は、CoSTEP主催のサイエンス・カフェ札幌が始まって以来、3本の指に入るほどたくさんの来場者にお越しいただきました。立ち見も多かった中、みなさんが熱心に書いてくださったおかげでアンケートやコミュニケーションカードを、たくさん回収することができました。当日、会場に足を運んでくださったみなさま、受講生のどんなリクエストにもイヤな顔をせず受けとめてくださった藤田さんと研究室のみなさま、どうもありがとうございました。
 (CoSTEP2011年度本科生・渡邊瑞穂)