実践+発信

選科A活動報告「かわいいエネルギー!? 〜視点で変わる捉え〜」

2023.9.12

チーム エネズミ
北川 桐香・熊谷 彩純・黒田 玄・竹川 智恵・中村 達郎・橋本 明日菜

ポスター担当:熊谷 彩純

イベントの背景

今年の選科Aオンラインサイエンスイベントのテーマである「ネットワーク」。私たちのグループは、科学技術コミュニケーションにおいて、課題に直面する人々それぞれに「立場」があることに着目しました。異なる立場同士の関わり(=ネットワーク)の密度の違いがあることや、そもそも異なる立場にいる人々をイメージできないことが、対話や課題解決の妨げとなるのではと考え、参加者に立場を意識させることを目的にイベントを企画しました。

イベントの中には、ある問題に対して「立場によって変化する意識」を感じてもらえるよう、異なるバックグラウンドを持つ人を示し、立場を転換する体験を組み込むこととしました。

「エネズミ」という設定

実際に、社会には様々な課題があります。北海道のヒグマの駆除に関すること、原子力発電に関すること、新型コロナウイルスに関すること…。実際の問題を取り扱うことは、よりリアルな意見が挙がる一方、どうしても深刻な内容になってしまいます。参加者が気軽に、楽しく考えてもらえるテーマとして生まれたのが、電気を生む「エネズミ」という架空の新生物です。

イベントの内容

イベントでは、3つの立場を設定し、MentimeterというWebサービスを使って参加者の意見を全体で共有しました。

1.導入

エネズミのいる世界をイメージしてもらうため「エネズミの導入説明会が開催された」という内容のニュース映像を作成しました。エネズミを紹介するだけでなく、インタビューも交え、導入にあたって様々な意見があることを意識させる仕立てにしました。ニュース映像には「計画停電情報」も表示して、この世界の電力供給がひっ迫していることをアピールしました。

2.Mentimeterを使った様々な立場の体験(3種)

はじめに「エネズミを受け入れる市民」の立場で考えてもらいました。進行役はその場で意見を拾いながらコメントしました。参加者も同じ画面を見ているため、様々な人の意見を目にすることができます。


市民としてエネズミを代替エネルギー源として受け入れるのか?

次に「とある市の市長」の立場から考えてもらいました。より具体的にイメージできるよう、メリット・デメリットを示しました。

市長の立場だったらどうだろう?

最後は「あなたにとって大事な人が安定した電力を必要とする治療を受けている人」であり、「エネズミによって廃業の危機にある発電会社で働く会社員」の立場で考えてもらいました。これは、1人の人間の中にも、複数の立場が存在することを意識してもらうための設定です。

3.まとめ

最後に具体例を示し、エネズミをめぐる問題から、実際の社会問題へアプローチしました。

【アンケートから】

イベント後、アンケートに対して35名の方から回答をいただき、イベントを「楽しめた(5段階評価5)」「どちらかといえば楽しめた(5段階評価4)」と回答したのは88.5%でした。

“エネズミ”のいる世界をイメージすることができましたか。

視点を変えることによって意見の背景を想像することができましたか。

他者のコメントによって多様な意見を知ることができましたか。

エネズミのいる世界”と現実世界の課題の共通点を意識することができましたか。

また、記述式にした2つの設問には、以下のようなコメントが寄せられました。

イベントを通じて、気づいた点・発見した点は何ですか。
  • テーマ(ネットワーク)と社会問題とのつながりが分かりやすく、自分事として考えなければならない問題について楽しく取り組めるように工夫されていた
  • 立場の違いによる考えの違いを体験できたし、同じ立場でも違う意見が出ることも体感できた点
最後に、コメント等をご自由にご記入ください。
  • エネズミの設定に曖昧な点があり、判断に迷う点があった
  • こういった物の見方はどういう参考文献で学べるのか、次の学びへの入り口が準備できていたら最高だった

アンケートの結果から、「参加者に異なる立場を意識させる」ことはおおむねできていたものの、エネズミのいる世界の状況や設定を伝えきれていなかったことがわかりました。また、参加者が次の学びに向かうためのステップが示せなかったという点で、改善の余地があると感じました。

おわりに

今回、Mentimeterを活用したイベントを考えたとき、「参加者によって想定した内容が大きく変わるのではないか」という懸念がありました。しかし、いざやってみると、考えもしなかったアイデアや見落としていた問題点が挙げられ、参加者がいるからこそ得られる気づきや楽しさがあることを実感しました。また、メンバー1人1人が互いの意見を尊重し、考えることを諦めなかったことが、イベントの完遂に繋がったのだと感じました。

最後になりますが、イベントに参加いただいた皆様、指導してくださった奥本先生とCoSTEPスタッフのみなさまに、この場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

後列左から:
黒田 玄(ファシリテーター)・奥本 素子先生・北川 桐香(ファシリテーター)・竹川 智恵(zoom/進行管理)
前列左から:
熊谷 彩純(ポスター作成)・橋本 明日菜(動画作成)・中村 達郎(zoom/アンケート作成)

本記事は、2023年7月17日(月/祝)に実施した2023年 選科Aオンラインサイエンスイベント「ネットワーク」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。24人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。報告書ができ次第、以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告もぜひご覧ください。

・選科A活動報告「拡散希望?だが断る!」
・選科A活動報告「本当に知りたい3つの言葉
・選科A活動報告「推しごとノート