CoSTEP 19期 ソーシャルデザイン実習班
8月5日(土)、北海道大学のフード&メディカルイノベーション国際拠点(FMI)において、北海道、道総研、北海道大学が主催する子ども向けイベント、「サイエンスパーク」が開かれ、CoSTEP19期 ソーシャルデザイン実習班は「あおしゃしんをつくろう」というタイトルのワークショップを企画しました。本稿ではその様子と実施の裏側を報告します。
ワークショップの会場は、FMIの「フューチャールーム」という円形のホールです。ここに小学1年生から6年生までの子ども達24名が集まり、4つのグループに分かれて座り、スタートを待ちました。
13時にワークショップスタート。実は、子どもたちがこの部屋に入ってきたときから、部屋の壁にはあるテーマの映像が流れています。
ワークショップの冒頭で、司会のスタッフが、子どもたちに質問をしました。
スタッフ「この映像、何かわかる?」
子どもたち「(口々に)太陽!」「太陽の映像!」
さすが子どもたち。そう、壁に映し出していたのは、今回のテーマである ”青写真” に関わるさまざまな太陽の映像です。
スタッフ「じゃあ、太陽の下にできるモノは何 ?」
子どもたち「影!」「影ができるー」
またもさすが、子どもたち。こうして今回は ”青写真” を考える上で、重要となる「太陽」について考えてもらうため、太陽を意識するワークからスタート。
太陽と、さらには影についてみんなでもっと考えてみるため、まずは「シルエットクイズ」にチャレンジ。円形ホールの壁に沿って、音楽に合わせてみんなでぐるぐると部屋を回り、音楽が止まったら、その時壁に映し出されているシルエットの真似をしてもらいます。シルエットの姿は、ソーシャルデザイン実習班のスタッフ一人一人が撮影モデルをつとめました。
星の形、ハートの形、大きなまるなど、これ一体どうやってやるの? というシルエットも混ざっているのがミソ。子どもたちはみんな、想像力を駆使しながら果敢にチャレンジして身体で表現してくれました。
シルエットクイズのあとは、いよいよ “青写真” の作り方を説明します。
「あおしゃしん」のつくりかた
- つくるイメージを決める。
- 紙にのせるものを選ぶ。
- 選んだものを感光紙の上におく。
- 太陽の下で10分待って感光させる。
- 水につけて紙を洗う。
- 乾燥させたら完成!
青写真の仕組み
紙に「クエン酸鉄アンモニウム」と「フェリシアン化カリウム」という、2つの薬品を混ぜたものを塗り、ここに日光(近紫外線)を当てて感光させると、薬品に含まれる鉄イオンが変化します。
その感光した紙を水でよく洗うと、日光が当たった部分だけに紺青と言われる顔料(色のもと)ができます。顔料は水に溶けないため紙に残り、それ以外の部分の薬品は流れていきます。
このように、感光した部分は青くなり、物を置くなどして影になっていた部分は白っぽくなるというコントラストができることで、像を紙に焼き付けることができるのです。
本来であれば明るい太陽の下で感光させる “青写真” 。しかし、この日は朝から生憎の曇り空・・・。明るい太陽の下で実験できなかったのは残念ですが、あらかじめ代わりに用意していた “特製UVライト” を使うことになりました。
スライドで説明を見たあとは、いよいよグループごとに制作開始。今回は「夏の思い出」をテーマとして、子どもたちが夏休みにしたことやこれからすることで、青写真で表現したいイメージを考えてもらいました。
「写真」といえば、普通なら過去の思い出を残すものですよね。今回はそれを反対に設定し、“青写真” をつかって思い出を再現してみるとどうなるか? という試み。子どもたち一人ひとりの主観や思い、表現の工夫が出てくるのではないかと考えました。
テーマ「夏の思い出」について話し合う
ウォーミングアップが終わって、各グループに戻った子どもたち。2人ずつついたスタッフとともに、まずは「この夏どんなことをした?」とか「夏休みにしたいことはある?」と投げかけながら、一緒に何を表現したいかを考えてみました。
”かき氷” ”花火” など夏を連想させるモノや、“〜島の海で見た景色” “〜へ旅行した時に出逢った猫” などストーリー性のあるアイデアも飛び出しました。
用意した道具
子供たちの中で青写真にしたいものが決まったら、次に、グループごとに使う道具を選びに行きます。フューチャールームの窓際にずらっと並んだたくさんのオブジェクトの中から5つまで好きなものを選び、自由に組み合わせを考えました。
光を当てます
選んだオブジェクトを感光紙の上に配置したら、さっそく感光開始です。太陽を模した “特製UVライト” でスタッフが順番に光を当てていきます。光を当てると、感光紙の色がだんだん緑がかった色に変化していく様子を、みんなで見ることができました。
紙を選んだ時の話
使用する紙は、事前にテストをして選びました。いろいろ検討してみた結果、子どもたちが扱いやすいよう、水につけても破れにくい紙質で、かつ感光後に鮮やかな青色になる「ケント紙」を使用することにしました。
感光紙を作製した時の話
光に当てるとすぐに感光してしまうので、紙に薬品を塗って感光紙をつくる作業は、日が落ちてから暗い部屋で行いました。廊下から漏れてくる僅かな光だけを頼りに刷毛で感光液を塗っていきました。青写真が使われていた時代に写真を作るのは大変な作業だっただろうなと、歴史に思いを馳せていました。
洗い場の様子
10分ほど感光させたら、感光紙を部屋の外に設営した洗い場まで運んで、順番に水で洗っていきました。感光紙を水に浸して、トングで揺らしながら洗うと、だんだんと緑色が抜け…鮮やかな青色へと変化していきました。オブジェクトを置いて影になっていた部分は、より白色になってはっきりと表れてきました。
みんなで青写真とオブジェクトを見比べる
洗い終わったら再びフューチャールームに戻り、完成した青写真と、オブジェクトを乗せた白紙とを並べて、両者を見比べてみました。狙い通りに影を作れた子どももいれば、想像とは違った写り方をした作品もありました。お互いの作品を見ながら、どんなイメージを作りたかったのか、思い通りに写すことができたかどうかなどを話し合ってみました。
最後にお土産としてもう一枚、未使用の感光紙と、今日作った青写真を飾るための台紙、説明のハンドアウトをわたして、およそ1時間半のワークショップは終了しました。昔の技術を使って、大事な瞬間を切り取り、青写真という形で残してみたのは、子どもたちにとってどんな体験となったのでしょうか。また、青写真を作るために必要な太陽の存在についても、今回のワークショップをきっかけに、日常で意識するようになってくれていたらと考えています。
完成作品の紹介
赤グループ作品(柳田担当班)
夏の思い出ということで、かき氷を描こうとして、ザルを氷に見立てて印画紙の上に並べていたのですが(左)、紫外線が強かったのか、それがはっきりとは写りませんでした。そこで、タイトルを「ごちそうさまでした」として、かき氷を食べた後を描いたことにしたそうです(右)。思い描いていたのとは違う結果になったとしても、タイトルを上手に工夫することで作品にしてくれました。
青グループ作品(久本担当班)
扇風機やアイスといった夏らしい題材の作品を作ってくれました。針金が風の様子を上手く表しています。風船を使った作品は固定が難しかったですが、風情のあるものになりました。洗濯バサミの作品は、感光までのあいだ、どのような構図にするか試行錯誤していました。
黄色グループ作品(吉田担当班)
(写真右下作品について)レースを使って綺麗な花火を描いてくれました。排水口のゴミ受けでも花火を描きたかったそうなのですが、思った通りにはいかず、作った本人は少し残念そうでした。
緑グループ作品(佐藤担当班)
(下段真ん中の作品について)「みやこじまのうみ」というタイトルをつけてくれた作品です。色々なオブジェクトを使って、海辺で見た岩や亀の甲羅を作ってくれました。中でも本人が特にこだわっていたのは、波です。感光中にイヤホンの位置を何度も動かしながら、影をうまくコントロールして、柔らかい波の様子を表現しようと頑張っていました。
アンケートについて
イベント終了後に書いてもらったアンケートでは、「イベントに参加して、気づいたことはありましたか?」という問いに、オブジェクトと影のでき方について書いてくれた子が多くいました。また「立体的なものはすこしぼやけることが分かった」「ネットによって、うつり方がかわっておもしろかった」といった回答ももらうことができました。
「イベントで印象に残ったことを教えてください。」という問いに対しては、青写真の仕組みに注目してくれた子が多かったです。具体的には「水につけたら急に(色が)かわってびっくりした」や「光か太陽で、うつる事ができる写真があることを知ってびっくりした」といった声が寄せられました。
本記事は、2023年度(19期)のソーシャルデザイン実習で実施したサイエンスイベント「あおしゃしんを作ろう」の報告記事です。このイベントは、サイエンスパークのワークショップの一つとして開催されました。また、このイベントは、翌日に「アノオンシツ」開催した「空想植物図鑑 –青写真でうつす未来のアーカイブ–」と関連しています。ぜひ、そちらの報告記事もご覧ください。