ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)教育を、地域と連携させるために必要なこと―それは、電子黒板や、タブレット型情報端末など、「ハード」が完備されることではなく、「ハード」を有効に活用するための人材、連携、体制作りといった、「ソフト」面なのだ、ということを考えさせる講義でした。
千歳科学技術大学の小松川浩先生は、デジタル教材の開発と評価だけではなく、北海道の多くの小中高等学校と連携して、情報技術を活用した学習環境を持続的に利用するための実践を行っています。
大学・地域・産業が連携したICT教育
学校で情報機器が導入されたとしても、活用のための支援体制が整っていなければ、それは現場にとって、大きな迷惑にしかなりません。
情報機器を活用した教育を持続的に行うために、小松川先生が実践しているのが「千歳モデル」です。「千歳モデル」は、大学・学校現場・教育委員会・IT系企業・NPOを連携させ、「教材作成」「授業支援」「情報環境整備」を行う体制のモデルです。大学では、学生達が教材作成に当たります。大学生たちのモチベーションを支えるのは、アルバイト代ではなく、情報スキルの向上、コミュニケーション能力の向上です。企業は、学生達と協力することで、将来の担い手の育成に関わります。教育現場は、作成された教育用コンテンツを共有し、利用しながら、さらに良い教材開発に向けてフィードバックをします。もちろん、教育委員会が舵取りをしなければ、教育現場と連携することができません。NPOなどとも協力することで、学校現場での情報教育のサイクルを回す体制が作られます。
ここで、重要な役割を果たすのが、これら異なる立場を「つなぐ」ためのICT支援員なのです。
ICT支援員の重要性
千歳科学技術大学の実践は、大学、学校現場、行政、企業すべてにメリットがあるよう工夫されています。連携することが相乗効果を生まなければ、持続的なサイクルは回りません。
そのサイクルを回す潤滑油として、それぞれの立場を調整する役割の人材が必要です。ICT支援員には、「技術でできることと、人でなければできないことを理解」した上で、現場のニーズを理解し、それぞれのアクターが過度の負担無く役割を果たす支援をすることが期待されています。
今後の展開に向けて
受講生からは、「北海道以外での実践活動はどうなっているのでしょうか」「ICT支援員が、職業として確立する見通しをどうお考えでしょうか」といった積極的な質問がなされました。
小松川先生のお話は、情報活用教育を事例としていましたが、様々な場所で、異なる立場を「つなぐ人」の存在が重要であることを考えさせられる授業でした。