1月21日(土)に開催された第61回サイエンス・カフェ札幌の様子を報告します。
『くすり』をいかに目的の場所まで届けるか、というお話です。
ゲストは、北海道大学大学院 薬学研究院 准教授 秋田英万(あきた・ひでたか)さんです。
秋田さんは、遺伝子を「くすり」として患部に送り、病を根本から治療できないか、という研究をしています。
しかしそのためには、くすりを細胞のそのまた中にある核という器官に届ける必要があります。
肉眼では見えないナノサイズ(1mmの100万分の1)という本当に小さなスケールで、細胞という宇宙を行く "船"の仕組みはいったい…?
この日の開場予定は開演の30分前。にもかかわらずさらにその前から徐々に参加者が集まって下さり、開場は5分前倒しに。「くすり」という気になる言葉の入ったタイトルだったこともあり、立ち見の方もいる中でカフェスタートとなりました。
いったいどんな内容なのか、静かに期待が高まります。
まずは一般の薬が効く仕組みから。効くためには患部に届くことが必要、という大事な部分です。
最前列で聞いてくれている高校生に秋田さんが尋ねてみる場面もあり、和やかなムード。
くすり=遺伝子,船=遺伝子を運ぶ船 ⇒これがナノサイズと、タイトルの秘密が明らかになったところでいよいよ秋田さんの研究へ。
目的地である核への道のりを阻む障害、そしてそれを突破する船の構造が紹介されたところで「サイエンスシアター」の始まりが高らかに告げられます。
何だろうと思う間にテキパキと大道具(!)が運び込まれるステージ。
そう、くすりの船が核へと進んでいく様子が実演されるというプログラムです。
2枚の特殊なコートを着たくすりの船(の役のスタッフ)が3つの困難を突破していきます。
第一の壁(細胞膜)→進みにくい領域(細胞質)→第二の壁(核膜)
見事、くすりを届けると拍手が起こりました。
手際良く大道具が片付けられた後はスクリーンで詳しい解説。
くすりの船が細胞の外から核の中まで進む様子が何枚ものイラストを交えてパラパラ漫画のように表されることも。
秋田さんの研究のお話が一通り語られ、休憩に入ります。
いつもならばコーヒーを買ったり、質問カードを書いたりと思い思いの参加者たち。
しかし今回は視線がスクリーンに集まっています。
秋田さんの研究室をインタビューした映像(↓)が放映されているという仕掛けです。
後半は質問タイムからスタート。
なんと50以上の質問を頂きました。(当日答えきれなかったものは後日HPで紹介します)
参加者の皆さんは秋田さんの答えに興味深々。
そしてお話は薬学という学問分野の魅力に移ります。
人の命を救う学問であるだけでなく、物理学・化学・生物学・薬剤学・薬理学の融合というのが薬学の魅力。より生の声を伝えたいと研究室の学生さんにも登場して頂きました。学生の目線からの薬学や研究について答えてくれます。
90分のカフェもいよいよクライマックスへ。
研究のこれからとして、がん治療への応用を熱く、かつ穏やかに語る秋田さん。
少し難しい内容でしたが細胞がキャラクターのように描かれ、会場の視線をキープします。
ユーモアを交えながら自然体に話してくれました。
まさに、「気軽に科学の話をしよう」というサイエンスカフェそのものでした。
参加して下さった方々、寒い中ありがとうございました!!
秋田さん・スタッフの皆さん、お疲れさまでした。
(CoSTEP2011年度本科生・岸本紘乃)