近藤正聡 (2023年度選科C/社会人)
1. 『国家公務員』と聞くと少しお堅いイメージですが・・・
モジュール6-1では、白石優生先生(農林水産省大臣官房広報評価課広報室)を講師にお迎えし、“農林水産省の「攻めの」広報戦略について”をテーマに講義をしてくださりました。農林水産省(Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries: MAFF)は、私たちの生活を支える『食』と『環境』を次の世代に繋いでいくために、食料の安定供給から水田や畑、森、林、海などの環境保全、農山漁村の発展に至るまで、幅広い分野をカバーしながら政策実行に取り組んでいます1。そのため、様々な行政機関の中でも、農林水産省は私たちの生活にとても身近なものと言えます。白石先生は、その農林水産省の広報室で国家公務員としてご活躍されています。行政機関において政策を実施する国家公務員というお仕事2ですが、なんとなくお堅いイメージを持ってしまいがちですよね。そうした中で、農林水産省の活動内容や、農林水産物の良さや農林水産業、農山漁村の魅力を発信する方法として、白石さんはSNS広報に挑戦されました。
2. 日本初の国家公務員YouTuberとしての挑戦
白石先生の軽妙なトークで始まった講義では、まず農林水産省公式のYouTubeチャンネルの紹介がなされました。そのチャンネル名は、“BUZZMAFFばずまふ(農林水産省)”です3。令和2年の1月から4年程運用している中で、17万人のチャンネル登録者を獲得しているということで、これは行政機関のSNS広報としては奇跡と言われているそうです。チャンネル登録者が10万人を超すと、YouTubeから銀の盾がもらえるのですが、BUZZMAFFが銀の盾を受け取る様子がYouTube動画「銀の盾 受賞式の様子」として公開されています。また、配信動画数は約1500本に達し、とても更新頻度が高いという特徴があります。このYouTubeチャンネルでは、農林水産省の職員自身が顔と名前を出し、組織(農林水産省)を背負って発言をするという強い覚悟を感じさせるもので、これまでの行政機関の広報活動にはない試みでした。
3. 農林水産省のYouTubeチャンネルの反響
このYouTubeチャンネルの反響は凄まじく、お花が売れない時期にYouTubeチャンネルで「花いっぱいプロジェクト」の紹介をしたところ、ネット上でバズり(短い期間で爆発的に話題が広がり、多くの人の耳目や注目を集めること)、100万回再生されました。その結果、お花の売り上げに貢献したとのことです。また、牛乳の消費が少なくなる寒い時期に、YouTubeチャンネルで「プラスワンプロジェクト」(もう一杯牛乳を飲みましょう!という趣旨のプロジェクト)を紹介したところ(例えば、「日本の牛乳を救う「プラスワンプロジェクト」」、
「冬でも、牛乳もう1杯、、、。 タガヤセキュウシュウ」、「また大臣に呼び出されました。 タガヤセキュウシュウ」)こちらの動画をバズったことをきっかけにをきっけに、牛乳の消費拡大につながったとのことです。白石先生によればYouTube動画の再生回数がとても多い事に加え、消費者の行動変容に繋げることができたことに驚いたとのことです。こうしたことで、農林水産省が国民との接点を拡大することにも繋がりました。
4. SNS広報の挑戦を振り返って感じたこと
SNS広報では、職員が顔や名前を出した状態で動画に登場し、その動画が炎上してしまうと、デジタルタトゥー(自分にとって不利益なデジタル情報がインターネット上に消すことができない状態で残ってしまうこと)となる恐れもあるため、多くの行政機関や企業が躊躇しているそうです。白石先生は、SNSに慣れ親しんだ若い世代の職員が覚悟をもってSNS広報に取り組んだことにより、その誠実な姿勢が動画を介して伝わり、炎上(火が燃え広がって消火ができないような様子で、好意的ではない情報がインターネット上で拡散すること)せずに動画を継続的に投稿できたのではないかと振り返りました。
注釈
1. 農林水産省 ~食と環境を未来に継承する~
https://www.jinji.go.jp/jinji_kanto/saiyou/guide/guide_2023/38norinsuisancho.pdf
2. 国家公務員の紹介, 人事院 国家公務員試験採用情報NAVI
https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai/syokai.html
3. YouTubeチャンネル“BUZZMAFFばずまふ(農林水産省)”
https://www.youtube.com/@BUZZMAFF