2月8日、CoSTEPの2011年度、最後の講義が行われました。
(株)KITABA取締役副社長の神長敬先生にお越しいただき「市民参加のまちづくりを考える」と題して、札幌における市民参加についてお話いただきました。
市民参加の第一歩
札幌市南区の藤野地区に建設された藤野むくどり公園は、建設企画の段階から地域住民や障がいを持つ方々と意見交換をしながら建設された公園です。「障がいをもつ子でも走り回れるように」という方針のもと、意見交換を繰り返しながら、公園完成までの案をまとめていったのです。地域住民参加型の公園作りは、花壇づくりの実際の作業まで、住民主体で行われるなど、企画の初めから建設段階まで、地域の理解と協力によって行われました。完成した公園には車椅子のまま遊べる砂場や、背もたれつきのブランコといった遊具があり、住民間で議論された内容がしっかりと反映されています。神長さんは、むくどり公園の実践で、実際にその公園を使う人と共同することの重要性を感じたといいます。
17年前から続く市民参加
むくどり公園の建設には、地域の協力や理解がありました。さらに公園の完成後、近くの住民たちの手でむくどり公園をしっかりと管理していこうという取り組みが立ち上がります。公園のそばに「むくどりホーム※」が作られ、町内会の人々が週に1度集まり、障がいを持つ子供たちと遊ぶ活動が始まりました。地域の中で、障がいのある人を支える環境ができていったのです。公園が建設されてから17年たった現在、赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが親しめる地域の友達づくりの場としてむくどりホームの活動は継続されています。
地域との共存を目指す様々な形
神長さんは、むくどり公園とは異なったアプローチで、行政と地域住民とが関わっていった例として、石山緑地やモエレ沼公園の試みを取り上げました。この二つの公園は有名な彫刻家に頼んで設計され、建設の段階では地域住民がそこに介在することはありませんでした。しかし、建設の最中や完成後に、建設の動きを伝えていくことによって、地域住民の中から公園を有効活用するための積極的な活動が現れてきたのです。開園のセレモニーは地域が主催しました。その後、公園でのイベントを企画するNPO団体の設立などが続きました。行政が生み出したハードを地域住民がうまく活用していったのです。
科学技術的ではないコミュニケーションスキル15
むくどり公園やモエレ沼公園の事業の他に、神長さんは2010年に札幌市で行われた「路面電車の活用を考える市民会議」の運営などにも関わっています。交通機関の延伸という、複雑な思惑が絡み合う問題を解決するためには、行政と市民間で議論する際に、コミュニケーションがとても重要だと神長さんは指摘します。
講義の最後に示していた「科学技術的ではないコミュニケーションスキル15」も、今までの経験から生み出したものだそうです。「うなずき、共感する」「とにかく聞く」「簡潔に」「にこやかに」「意見の背景を聞く」「柔軟に対応する」など、当たり前のようでいて、なかなか実践できない項目です。これらは、人と人のコミュニケーションでも基本となっているような要素ではありますが、改めて意識してみることでコミュニケーションを円滑に進めることができる、そんな本当に基本的な考え方だと思いました。
CoSTEPでの1年間を終え、これから地域でコミュニケーターとして活動していく私たちにとっても、地域に根差した持続的な活動を行うことは大きな課題です。今回の講義で伝えて頂いた、神長さんが経験した様々な活動とその地域との関わり方は非常に参考になるものでした。神長さん、ありがとうございました。
三ツ村 崇志(2011年度CoSTEP本科生)