実践+発信

「実践入門」/516日石村源生特任准教授の講義レポート

2012.5.18

5月16日,石村源生特任准教授による講義「実践入門」が行われました。CoSTEPが教育理念として掲げている『実践を通して学ぶ』が凝縮された内容です。

石村特任准教授はCoSTEPの第一期(2005〜2010)から科学技術コミュニケーション教育に参画し,その経験をふまえながらこれまでの間CoSTEPが実際に制作・発表してきた成果を多数紹介しながら,科学技術コミュニケーション実践とは何か,解説しました。

例えば「さっぽろサイエンス観光マップ(2005-2006)」。これは当時のウェブ最新技術を利用し,物理的なコストをかけずに科学技術コンテンツを市民に向けて発信しようと試みた取り組みです。札幌市という「街」に隠れているかもしれない「サイエンス」を見つけ出し,取材,ウェブ上で記事として紹介します。この先進的な取り組みはさらに発展し,北海道新聞の連載「散歩でサイエンス」でも紹介されました。

また2005年10月以来CoSTEPが定期的に開催している「サイエンス・カフェ札幌」。これまでに60人以上の研究者とその研究内容を紹介してきました。毎回子供から年配の方まで100名近い参加者が参加し,すっかり札幌という「まち」に根付いています。CoSTEPではこのカフェの企画から実施を「学び」と位置付けて,プログラム化,本科受講生の必修科目として体験してもらっています。コンセプトの設計,話題提供者(研究者)との折衝,運営計画,広報,当日の進行,評価まで,そのライフサイクルを順に体験してゆきます。まさに実践です。

テーマに合わせて工夫を施したり,新しいインタラクティブなコミュニケーションを仕掛けたりすることは,簡単なことではありませんが,体当たりで悩み,チームで議論を重ねます。開講式で,村松秀氏から紹介された「ぐるぐる思考」。このプロセスをしっかり経ることで,結果的に取りあげようとしている「科学」に対する理解が深まってゆくのです。

「学び方を学びながら学ぶ。」禅問答のようにも聞こえますが,科学技術コミュニケーションに限ったことではありません。職場や地域,家庭や学校など,どんな環境でも学びを実践し続けることはできる〜新しい気持ちでコミュニケーターとして前に踏み出すために背中を押してもらった,そんな授業でした。