実践+発信

相手を思い、相手を知る

2024.3.21

傳田 澄美子/選科C(インフォグラフィック制作)
企業研究職


受講のきっかけ

私は企業の研究員として、研究内容がより多くの人に理解され役に立つようにするには、伝え方とコミュニケーションが大切だと感じていました。研究者による科学技術情報は、製品開発・マーケティング担当者、販売員・店員を経て消費者へと形を変えて伝えられていきます。そこで伝言ゲームのように情報が思わぬ方向に変化しないよう、正しく伝えるためにはインフォグラフィックが有効ではないかと考え、選科Cを受講しました。

初めてのインフォグラフィック制作 ― 打ちのめされた3日間

伝えたい内容を1枚のインフォグラフィックに表現するには、まずは言語化することから。誰に、何のために伝えたいのかを明確にし、内容を500字以内でターゲットにわかるような言葉で書いてから図に取りかかります。私は言語化で苦労した後、Canvaでは欲しいイラスト素材が見つからず、手書きすることになりました。ところが、対象物を細部まで観察・理解していなかったためうまく書けず、本当に打ちのめされました。わかりやすくするために情報をそぎ落とすことが必要ですが、本質を知っていないとできないのです。デザインのルールや配置のマジックを教わりながらCanvaと格闘し、最終日の発表会では、全員の熱意のこもったプレゼンに感動し、様々な研究分野を知ることができました。学び・悩みについて1日の終わりに書いたポストイットを貼っていった「選科Seaを泳ぐ魚」の壁紙を見ると、3日間の記憶がよみがえります。一緒に頑張った選科Cの仲間とは、修了記念に新たなインフォグラフィックを作成して小冊子を作り、さらに親交を深めることができました。

(選科Seaを泳ぐ魚)
(選科Cでのひとコマ)

充実した講義

27回の講義は6つのモジュールからなり、科学技術コミュニケーション概論、表現とコミュニケーションの手法、活動のためのデザイン、科学技術の多面的課題、多様な立場の理解、社会における実践、という順に学んでいきます。気候変動対策や都市ギツネ、新薬開発、性別固定観念など科学における倫理的・法的・社会的課題を知り、課題を解決するための対話の方法などについて研究や実践をされている先生方から直接学び、農水省ばずまふの白石優生さんや「観察と発見の生物学」の三澤遥さんの話を聞くことができたのは貴重な経験でした。モジュールごとに提出するレポートでは、科学技術コミュニケーションを自分事として捉え、今後の活動の目的・企画・実践について言語化していくことになりました。CoSTEPに応募した際の質問(科学技術コミュニケーションに関わる問題とその解決へ向けて今後自分がどんな役割を果たしたいか)が、最後のモジュール6の課題で再び問われ、1年間の学びで変化した自分に気づきました。

もっと学べる

私は映像制作・札幌国際芸術祭鑑賞演習などにも参加し、開講式・修了式と合わせて合計6回北海道に足を運びましたが、旅費を払ってでも参加する価値があるものばかりでした。先生方との懇親会や苫小牧演習林での宿泊とキャンプファイヤーなどアットホームな雰囲気の中、本科の受講生を知る機会にもなり、自分の子供と同じ年代の学生さんとも年齢を気にせず活動できました。

(映像制作共通実習でのひとコマ)
(札幌国際芸術祭(SIAF)鑑賞共通実習でのひとコマ)

科学が好きで研究職を続けてきましたが、消費者・患者・市民がそれぞれの立場で科学の知識を「理解」し価値判断できるように手助けをする科学技術コミュニケーターが必要であることを知った以上、これを実践しないわけにはいきません。CoSTEPを1年間受講し、多様なバックグランドや経験を持つ受講生や先生方を知り、視野が広がりました。誰かのために、よりよい未来をめざして、自分らしい科学技術コミュニケーションを追求していきます。


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