7月31日は、京都大学大学院教育学研究科の楠見孝教授による講義「批判的思考力を身につける」が行われました。その中で、科学コミュニケーターにとってなぜ批判的思考力が必要なのか、批判的思考力の構成要素、更にはその育成について説明していただきました。
批判的思考とは
批判的思考とは、証拠に基づく論理的で偏りのない思考であり、必ずしも「相手を批判する思考」ではありません。情報を鵜呑みにしないで、自分の推論過程を意識的に吟味する反省的思考であるといえます。なぜ、批判的思考が大切かというと、私たちは日々たくさんの情報にさらされていますが、批判的思考を身につけることで、受けとった情報を推論、評価し、より良い判断を下すことに役立つからです。また、批判的思考を自分に向けることで、今まで自分が正しいと思っていた考えを修正し、異なる考えを持った人とも協同して問題解決できるようになるのです。
批判的思考の構成要素
批判的思考の構成要素には認知的側面と情意的側面があります。認知的側面は知識とスキルで、直面する問題の明確化や問題解決における推論など人々が普遍的に身につけていることから、科学的評価法の知識など専門家が固有に身につけていることまでを含みます。一方、情意的側面は態度を指しており、知識やスキルを身につけていても広い心で異質な考えも重んじる態度がなければ批判的思考は達成されないとのことでした。批判的思考を使うためには認知的側面と情意的側面の両方をバランスよく身につける必要があるようです。
批判的思考力の養成
批判的思考力を身につけるには、初等教育から高等教育のなかで批判的思考に支えられた科学の事実知識や方法論などを獲得し、証拠に基づき論理的に考えて内省する態度を養成することが重要であるとのことでした。また、学校教育だけでなく高い技術に出会える博物館、マスメディアや地域のコミュニティによるサイエンスカフェなどと連携して科学と接する機会を増やし、批判的思考を身につけた人材を育成していくべきであるとのご指摘がありました。
青井良平(2012年度CoSTEP選科生)