9月29日(土)、第65回サイエンス・カフェ札幌が開催されました。今回のゲストは、小林国之さん(北海道大学大学院農学研究院助教)。フランスで大切にされてきた思想「テロワール」という言葉を紹介していただきながら、北海道農業の展望についてお話いただきました。
小林さんの専門は農業経済学。CoSTEPのサイエンス・カフェ札幌で扱うテーマとして、意外と珍しい内容です。そこで私たちはまず、北海道農業の現状を再確認するところからスタートさせ、企画メンバーの武田君と私(小四郎丸)は8月上旬、オホーツク海に面した紋別・興部町にお邪魔してきました。興部町は小林さんの研究フィールドであり「オホーツク・テロワール」という活動がスタートした現場でもあります。
「テロワール」を日本語に訳すと「風土」という言葉が一番近いといいます。天候、土壌、地域的条件を前提として、地理的な弱点を克服するのではなく、それを活かした農業。地酒や産地の名前が銘柄になっているワインなどからイメージできるかもしれませんね。その土地だから作れるものを、その土地で巡らせて消費し、農村のコミュニティを取り戻す。そこに、みんなで支え合う幸せな農業のカタチがあるのかもしれません。
そもそも北海道農業は大規模で安定した安価な食料を大量に都市部へ供給する、日本の食糧基地として発展してきました。しかし現在、農業の担い手不足などの影響で、これまでと同じ方法では農業は立ち行かなくなってきているといいます。そんな中見出されたのが、「テロワール」という考え方だといいます。
テロワールの解説だけではなく、武田君に、興部町の取り組みついて写真を交えながら紹介してもらいました。さらに「風土から生まれた味」を体験してもらおうとノースプレインファーム(興部町)のバタースカッチが参加者全員に配られました。みなさん、本物の味に感激した様子です。またコミュニケーションタイムには、小林さんへの沢山のご質問をいただきました。「農業のために大学が果たすべき役割とは?」といった質問には、毎年8月末に開催されている北大マルシェを例にあげながら、生産者と都会で暮らす消費者を橋渡しする学生たちの取り組みが紹介されました。
あっという間の90分でした。特に印象的だったのは、私たちの毎回の食事の選択が、農業のあり方に強く結びついていくのだなと感じたことです。出演してくださった小林さん、紋別・興部で私たちを迎えてくださった皆様、当日お手伝いいただきました皆様、そしてなによりご来場いただいた皆様のおかげでこのようなサイエンス・カフェを開催することができました。ありがとうございました!
(レポート:2012年度本科 小四郎丸拓馬)
2012年度本科カフェ実習2班:青木美樹/太田菜央/小四郎丸拓馬/武田尚太/永田修