実践+発信

「映像表現を科学技術コミュニケーション生かす」68 早岡英介先生の講義レポート

2013.6.15

 早岡先生はCoSTEPへ赴任する以前、自然・アウトドア番組制作のディレクターをされていました。「ディレクター」とは何か、という自己紹介を兼ねたお話から、科学技術コミュニケーションと映像をテーマとしたこの講義は始まりました。

◆映像づくりと映像の力
プロの映像は様々な職種の分業で作られています。混同されがちなディレクターとプロデューサーですが、担う役割はまったく異なります。ディレクターはいわば「大工の棟梁」、プロデューサーは「建築家」です。また、この二役だけではなく、他にもカメラマン、音声、照明、編集などのスタッフが必要です。映像制作は大勢のプロがチームを組むことではじめてできる仕事なのです。
映像は多くの人のイメージを同時に一瞬で変えることも可能です。これは映像が持つ特性のためです。早岡先生がこの特性を伝えるために紹介した映像はどれも迫力があり、思わず引きこまれてしまいました。
◆メディアテクノロジーの大きな変化と映像
メディアは情報技術から大きなインパクトを受け、素早く変化していくという特徴を持っています。最近ではスマートフォンの登場によって、あらゆるメディア機器を一台の端末で扱うことができるようになりました。そして電子書籍をはじめとして、あらゆるメディアに映像を埋め込むことも可能です。このように情報技術はメディア、特に映像の利用と表現に大きなインパクトを与えています。しかし、このようなインパクトに惑わされずに映像を適切に利用していかなければなりません。
◆科学技術コミュニケーションにおける意義
近年、研究者は社会とコミュニケーションすることを求められています。しかし、研究者と一般市民との間には、求めているメディアの種類にギャップがあります。研究者の多くが出前授業やシンポジウムをコミュニケーションの場として想定しているのに対して、市民の90パーセント近くが、テレビ番組で科学技術に関する情報を得ているという調査結果があるのです。これからの科学技術コミュニケーションでは、テレビなどの映像メディアを用いた間接的なコミュニケーションにも取り組む必要がある、と早岡先生はお話ししました。
◆映像を用いた実践の可能性と心得
 映像を用いた科学技術コミュニケーションは研究者と市民の共通言語となる可能性を秘めています。しかし、映像には必ず制作者の意図や解釈が入っています。映像を用いる場合にはそのことを意識する必要があるのです。
中島悠貴(2013年度本科・北海道大学理学院修士1年)